小児患者の保護者の方は、病気の症状について上手く代弁できているか不安なことが多くあるかと思います。
今回は、小児患者を子に持つ保護者の皆様に向けて「患者と医師の関係」についてお話します。
是非、医師とコミュニケーションを取る際のご参考にしていただければ幸いです。
東海大学医学部付属八王子病院 医学部医学科総合診療学系小児科学 特任教授 山口 公一東海大学医学部付属八王子病院
医学部医学科総合診療学系小児科学 特任教授
山口 公一
子どもが病気にかかった場合、初めてかかる診療科は、基本的には小児科がいいと思います。子どもの診療に慣れているのは小児科です。子どもの不具合を見つけやすいためです。かかりつけの病院で相談しやすいところがあれば、耳鼻科でも皮膚科でも大丈夫です。病院選びで大切なことは、担当医が症状や状況など話をきちんと聞いてくれるか(問診が十分にされるか)どうかです。小児科でも耳鼻科でも皮膚科でも、必要なときには他の科を紹介してくれますから、それに従っていただければ心配ありません。
今はインターネットを含めてさまざまな情報が簡単に手に入りますが、すべてが正しく役に立つとは限りません。調べたことをうのみにせず、得られた情報やそれで疑問に思ったことなどを担当医に伝え、確認することも大切です。
病院選びのポイントは、医師とのコミュニケーションの取りやすさです。医師に質問しやすいかどうか、質問にきちんと答えてくれるか、分からないことは分からないとはっきり言ってくれるかが重要です。よい医師は、わからない場合でも適切な対処方法を患者と相談した上で提示したり、適切な科に紹介してくれます。口コミや評判はもちろん大事だと思いますが、有名なところが必ずしも良いとは限りません。自身にとって相性の良い先生を選ぶと良いでしょう。特に慢性疾患の場合は、長く付き合うことになるかもしれませんので、相性が大切だと思います。
子どものことで気になっていること、困っていること、心配なことはいろいろあると思います。病院にかかるときは、それらを遠慮なく担当医に伝えましょう。事前にメモ等にまとめておくと伝えやすいと思います。担当医の機嫌を損ねるかもしれないとか、忙しそうだからとか遠慮することはありません。当たり前のことですが、子どもは自分で自分の状態を伝えることができません。保護者が伝えてくれなければ小児科医は十分な医療ができません。それを補ってくれるのが保護者です。
保護者が遠慮していると診断や治療がうまくいかなくなります。子どものためにも、遠慮せず質問をぶつけてみてとことんまで付き合ってみてください。「何かご質問は?」と聞かれたらチャンスです。検査や薬のことはもちろん、日常での些細な出来事や気がかりなことなど、関係ないと思うことでも案外重要なこともありますので、何でも疑問に思っていることは質問しましょう。これは保護者としての権利であり義務です。聞かないで後悔することはあっても聞いて後悔することなんてありません。
普段は遠慮がちな方も病院では自分のためではなく、子どものことを第一に考えて遠慮せずに行動しましょう。
対応に疑問を感じたら医師や病院を変えましょう。医師の対応に不快な思いをしたり、納得できる説明をしてくれないなど、医師とのコミュニケーションがうまくいかない場合は、遠慮なく医師や病院を変えましょう。セカンドオピニオンを含めて、できればきちんと紹介状を書いてもらいましょう。これは患者の立派な権利であり、医療側の義務です。検査などを受けている場合は、子どもの負担を減らす意味でも重要です。看護師や受付の人などにそれとなく相談してみるのも良いかもしれません。場合によっては貴重な情報が得られるかもしれません。我慢することはありません。せっかく時間とお金をかけて病院に行くのですから少しでも満足して帰りましょう。
子どものぜん息、アレルギー等について、医師の説明がわからなかったとき、医師に聞きづらいことがあるとき、診察後に疑問が生じたとき、あるいは医師とのコミュニケーションが十分に取れなかったときがありましたら、環境再生保全機構が運用している無料のぜん息・COPD電話相談室(0120-598-014)を活用するのも一つの手です。医師とのコミュニケーションがうまくいかない一つの例として、医師と患者の間に病気に対する理解の差があり、医師の指示の意図が患者に伝わっていない場合があります。電話相談室は、その差を埋めるために活用することができます。また、病気や治療についてだけでなく、医師とのコミュニケーションについても相談を受け付けています。医師や病院を変えようか悩んでいる方も、変える前にぜひ一度ご相談してみてはいかがでしょうか。