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ERCA 独立行政法人 環境再生保全機構

コラム

2020年4月に「東京都受動喫煙防止条例」及び「健康増進法」一部改正が施行されました。喫煙は、ぜ
ん息とCOPDの方へも悪影響を及ぼします。そこで今回は「たばこ」をテーマにお話しします。

「東京都受動喫煙防止条例」と「健康増進法」一部改正の施行により、具体的にどんな事が決められた?

2018年6月に「東京都受動喫煙防止条例 (都条例)」、7月に「健康増進法 (増進法)」一部改正が成立し、双方2020年4月に施行され、飲食店を含む多くの施設は、原則屋内禁煙となりました。都条例は、増進法より厳しく禁煙環境を設定しています。

施設の種類は、教育、医療や行政関連施設と公共交通機関が属する第一種施設と、ホテルや飲食施設など、多数の方が利用する第二種施設に分類されています。第一種施設では敷地内禁煙とされていますが、屋外喫煙場所の設置は、増進法は可としているものの、都条例では、保育所から高等学校までは不可と、より厳しく設定されています。第二種施設は、原則屋内禁煙で、飲食ができない喫煙専用室でのみ喫煙可となっています。しかし、増進法では小規模飲食店では標識の掲示により喫煙可、都条例でも従業員を使用していない場合は喫煙を選択できます。試算では、東京都の84%の飲食店が禁煙の規制を受けるとされています。加熱式たばこは、経過措置として、専用喫煙室内で飲食しながら喫煙可とされています。増進法では50万円以下、都条例でも5万円以下の過料を科すことができます。

帝京大学 医学部 内科学講座 呼吸器・アレルギー学 教授 長瀬 洋之帝京大学 医学部 内科学講座
呼吸器・アレルギー学 教授 長瀬 洋之

たばことぜん息・COPDとの関係について

たばこは、ぜん息・COPDなどの呼吸器疾患に明確に悪影響を及ぼします。

COPDは、たばこが最大の発症原因であり、喫煙者の15〜20%はCOPDを発症します。喫煙は、気道や肺胞に炎症を起こし、徐々に破壊していきます。喫煙による気道の炎症によって痰の分泌が増え、咳が誘発されます。また、酸素と炭酸ガスの交換を行っている肺胞が破壊されると肺気腫((注記)肺が部分的にこわれて、まだらに抜けてしまう状態)を生じ、ガス交換が悪くなるため、酸素を十分にとりこむことができなくなります。また、肺胞の壁は、気道を外から引っ張って空気の通り道を作っており、肺胞の壁が破壊されると、気道も潰れて狭くなり、息を吐き出しにくくなります。

ぜん息にも悪影響を及ぼします。喫煙者は、非喫煙者と比較して約4倍のぜん息発症率があります。妊娠中の母親の喫煙や、子どもの受動喫煙は、小児ぜん息の発症を増加させるため、親や周囲の禁煙が重要となります。また、ぜん息患者における喫煙は、気道のアレルギー性炎症を悪化させ、症状の悪化や発作が誘発され、呼吸機能の低下スピードが加速します。ぜん息の最も重要な治療薬である吸入ステロイド薬の作用は、半分程度に低下しますが、禁煙すると比較的速やかに効果が回復するため、禁煙のメリットは早く実感できる可能性があります。

電子たばこについて

新型たばこには、液体を加熱して吸引する電子たばこと、たばこ葉を加熱して吸引する加熱式たばこがありますが、我が国では、iQOS(アイコス)などの加熱式たばこが普及しています。iQOSやglo(グロー)などの加熱式たばこは、たばこ葉に直接火をつけるのではなく、240〜350°Cに加熱して、ニコチンを含んだエアロゾル(たばこ葉から発生する蒸気)を発生させます。プルームテックでは、粉末状のたばこ葉を含むカプセルに、加熱して発生させたエアロゾルを通過させて、ニコチンなどを吸引させます。いずれもたばこ葉が使用され、紙巻きたばこの10〜80%程度のニコチンを含みます。血中のニコチン濃度も紙巻きたばこと同じように上昇するため、ニコチン依存症を起こしうる点が重要です。

加熱式たばこの有害物質濃度は紙巻きたばこより低いですが、粒子状物質は紙巻きたばこよりも多く含みます。健康への悪影響は、紙巻きたばこより少ないという報告もありますが、血管への影響の程度は同等とする報告もあります。健康被害は喫煙量に正比例するわけではなく、少量でもリスクが高まることも報告されており、加熱式たばこの有害成分が少なかったとしても、健康被害が同様に低いとは限りません。加熱式たばこは、禁煙を阻害し、若年者を喫煙習慣に誘導することも問題です。

禁煙を始めましょう

①禁煙外来
×ばつ年数」が200以上で、禁煙の意思がある方です。35歳未満では喫煙歴によらず禁煙治療が可能です。

禁煙の意思が高い場合は、認知行動療法を行うことがあります。喫煙時の思考、行動、感情を自ら見つめ直し、行動の問題点と喫煙の悪循環に自ら気づき、改善の方法を設定する方法です。喫煙意思が高まっていない場合は、動機付け面接が行われます。医療者は、考えの間違いを指摘せず、聞き返しを行いながら共感性を示し、喫煙者自らによる問題点への気づきと、行動変容を引き出す手法です。

喫煙者は、性格や意志の問題ではなく、ニコチン依存症という疾患に罹患している状態にあります。ニコチンは脳内のニコチン受容体に結合すると、ドーパミンという快楽物質を分泌させ、ドーパミン濃度が低下してくると、喫煙衝動が高まるという状態がニコチン依存症です。薬物療法としては、ニコチンパッチでニコチンを補充し、喫煙衝動をおさえるニコチン補充療法と、ニコチン受容体の阻害薬であるバレニクリン内服の、2つがあります。バレニクリンは、ニコチンの作用をブロックし、喫煙時の満足感を減らすとともに、少量のドーパミンを分泌させ、喫煙衝動を抑制します。保険診療の期間は3ヶ月間で、5回の受診が可能です。また、遠隔診療も模索されています。

②自分で出来る禁煙の方法
自分でできる工夫として、灰皿やライターを処分するなどの環境整備を行い、喫煙衝動を感じた時のためにガムやミントのタブレットなどの代替物を用意します。また、仕事の合間、食後や起床時などに行動の習慣として喫煙している場合があります。散歩する、歯を磨く、手を洗うなど、他の行動習慣に置きかえる工夫も行うようにしましょう。

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