ぜん息などの情報館

質問票を用いた呼吸器疾患に関する調査及び大気汚染健康影響調査

この2つの調査は昭和61(1986)年にその報告書が公表されたもので、公害健康被害補償法の第一種地域の今後のあり方を検討した昭和61年の「大気汚染と健康被害との関係の評価等に関する専門委員会報告」の中で環境庁aならびに環境庁bとして引用されていることから、環境庁a調査、環境庁b調査とも呼ばれるようになりました。両調査は、大気汚染の健康影響調査としては対象者数が最も大きな疫学調査で、ATS質問票を用いて行われました。

環境庁a調査

この調査は昭和56(1981)年〜58(1983)年度までの3年間、ぜん息の33地区46小学校の児童とその父母等成人家族を対象として実施された。
なお、成人調査は昭和57年(1982)度と58年(1983)度に一部の地区のみで実施されている。 質問票調査の回答者数は児童7万4,073人、成人4万8,107人であり、一部の児童について呼吸機能検査と血清中IgE測定を実施している。
この調査の特徴は対象地区の人口密度をもとに都市形態別に3分類(U:5000人/km2以上、S:1000〜5000人/km2、R:1000人/km2以下)して呼吸器症状と大気汚染との関連性について検討したことである。

児童の喘息様症状(現在)は、U>S>Rの順であった。
また、アレルギー体質、既往症、乳幼児期の栄養、家族構成、室内汚染などの関連因子の有無別にみても都市形態による有症率の違いが同様にみられていた。
大気汚染濃度との関連性をみると、おおむね有意の相関が認められたと報告されている。

成人の持続性せき・たん及び喘息様症状(現在)の有症率はUで高く、Rで低い傾向にあったが、年度・性別に検討すると統計的に有意な場合は少なかったことが示されている。
また、持続性せき・たん有症率は二酸化硫黄(SO2)及び浮遊粉塵と有意な相関を示す場合が多かったが、二酸化窒素(NO2)との間では有意な相関を示す場合が少なかったと報告されている。
また喘息様症状(現在)の有症率と大気汚染濃度との間には有意な相関はみられなかったとしている。

環境庁b調査

この調査は昭和55年(1980)度〜59年(1984)度までの5年間にわたり、全国の51地域、計150小学校で実施された。
質問票調査については各小学校の児童と同居している父母、祖父母であり、呼吸機能検査については一部地域(26地域)の4〜6年生を対象に行われた。
質問票調査の回答者数は、児童は12万3,526人、成人は20万4,865人であった。

児童の主な組合せ症状の有症率と大気汚染との関係をみると、男子では持続性ゼロゼロ・たん症状と二酸化窒素(NO2)及び二酸化硫黄(SO2)、喘息様症状(現在)とNO2で有意な相関がみられていた。
女子では持続性ゼロゼロ・たん症状とNO2及びSO2、喘息様症状(現在)とNO2及びSO2で有意な相関がみられていた。
さらにアレルギー素因、家族の喫煙、家屋構造、暖房の種類など要因別に大気汚染との関連性が検討され、持続性ゼロゼロ・たん症状や喘息様症状(現在)とNO2及びSO2との間で有意な相関がみられていたものもあった。
また、NO2濃度区分別にみると濃度区分が高くなるにつれて有症率が高くなる傾向が示された。

成人での主な組合せ症状の有症率と大気汚染との関係をみると、男子では喘息様症状(現在)と浮遊粉塵、女子では持続性せき・たんとNO2及びSO2、喘息様症状(現在)とSO2で有意な相関がみられたと報告している。

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