この調査は、昭和39(1964)年度から昭和44(1969)年度まで、厚生省が大阪府、三重県及び千葉県に委託して行われた調査で、その概要は次のとおりです。
大阪と四日市の2地域で汚染地区(大阪:3,421、四日市:4、365)と非汚染地区(大阪:3,520、四日市:4,549)の40歳以上の男女を対象として実施された。
調査は、まず簡略型の呼吸器症状質問票を配布し、その質問票の回答でせき・たんの症状がある者に対して検診を実施した。
検診はBMRC方式に準拠した問診、肺機能検査及び胸部X線検査等であった。
また、大気汚染の状況については、降下煤塵、PbO2法による二酸化硫黄及びデジタル粉塵計を用いた粉塵の測定が行われた。
この結果、年齢と喫煙で標準化した慢性気管支炎有症率は男子で大阪・汚染地区6.8%、大阪・非汚染地区で5.2%、四日市・汚染地区で15.1%、四日市・非汚染地区で5.5%であり、女子では大阪・汚染地区で3.8%、大阪・非汚染地区で1.0%、四日市・汚染地区で11.3%、四日市・非汚染地区で 2.8%だったと報告されている。
また、呼吸機能検査に基づく閉塞性障害者の割合は、大阪では汚染地区で高率であったが、四日市では汚染地区と非汚染地区間で差は認められなかったとしている。
大阪、三重、千葉の計9小学校、延べ2万3,048人の学童を対象として、呼吸機能検査と自覚症状調査が行われた。
非汚染地区に通学する児童の呼吸機能測定結果に基づいて努力性肺活量の予測式を算出し、この予測式に基づく予測値と実測値との差と大気汚染濃度の関連性について検討された。
この結果、大気汚染濃度が高くなるにつれて予測値と実測値の差が大きくなり、実測値が予測値に比べて低い値を示す割合が増加したと報告されている。
また、自覚症状については、「目が痛い」、「のどが痛い」「頭が痛い」、「せきが出る」、「たんが出る」等呼吸器系、粘膜系の刺激症状が汚染地区と非汚染地区の学校間で差が著しいことが示されていた。
この調査は、その規模・内容からみて、大気汚染と健康影響に関するわが国で最初の本格的な疫学調査ということができる。この成果は昭和44(1969)年に定めれれた環境基準(旧基準)の設定の際の重要な根拠となったものである。