国が大気汚染と健康影響に関する疫学調査を実施した際に用いられた2つの調査票について、その概要を紹介します。
BMRC質問票は、1960年に英国医学研究協議会(BMRC)が発表した呼吸器症状質問票が原型となっており、昭和40年代以降、BMRC方式の呼吸器有症率調査として多くの研究に用いられた。
また、昭和48年(1973年)に制定された公害健康被害補償法の第一種地域指定の基礎調査の一つとして、BMRC方式による持続性せき・たんの有症率の調査が採用される等標準的手法となった。
BMRC質問票は、主として成人を対象とした慢性気管支炎の頻度を調べるために開発されたものであり、小児を対象としたものではなく、またぜん息に関わる症状に関する質問は含まれていなかった。さらに、居住環境や室内空気汚染に関する質問は含まれていなかった。
このような問題点を踏まえ、1978年に米国で開発されたのがATS-DLD-78標準質問票である。
この質問票は、米国胸部疾患協会(American Thoracic Society)と米国国立心臓・肺・血液研究所の肺疾患部門(National Heart,Lung,Blood Institute、Division of Lung Disease)がそれぞれ作成した質問票を参考として作成されたものである。
日本では、環境庁を中心としてこの質問票の日本語版作成作業が行われ、パイロット調査結果を踏まえて改良されたものが環境庁版ATS呼吸器症状質問票である。