既被認定者の補償として、どういう給付が行われていますか。
第一種地域の指定解除前に認定を受けた既被認定者(指定解除前に認定の申請を行い、指定解除後に認定を受けた者を含む。)及びその遺族などに対し、都道府県知事等が支給する補償給付は、次の7種です。
(1)療養の給付及び療養費
補償給付の中心となるのは、既被認定者の指定疾病について医師等が行う診療、治療に関するものです。既被認定者は、公害医療機関(原則として、健康保険法、国民健康保険法、生活保護法による指定医療機関)の窓口で公害医療手帳を提示すれば医師の診療、治療を受けることができます。これを療養の給付(医療の現物給付)といいます。診療等を行った医療機関は、診療に要した費用を診療報酬として都道府県知事等に請求し、支払を受けます。
天災等により公害医療機関に行くことができず、公害医療機関以外の医療機関で診療を受けた場合のようにやむを得ない特別の事情があるときは、既被認定者が一旦医療機関の窓口で支払った費用を都道府県知事等に請求し、支払を受けることができます。これを療養費といいます。
療養の給付および療養費の仕組み
(2)障害補償費
既被認定者が指定疾病にかかったことにより一定の障害がある場合に、その障害による損害を填補するものとして障害補償費が支給されます。これも民事責任を踏まえた給付ですが、多種多様な既被認定者の個別の事情をしんしゃくして給付額を定めることは事実上困難であるため、障害の程度や性別、年齢階層別に給付額を定型化して支給されています。
障害補償費等の給付水準を示す障害補償標準給付基礎月額は、全労働者の性別、年齢階層別の平均賃金の80%を基準として、毎年度、環境大臣が中央環境審議会の意見を聴いて定めることになっています。
障害の程度は、日常生活の困難度と労働能力の喪失の程度に応じて4つの等級に区分されており、それぞれの等級に該当する者に対して障害補償標準給付基礎月額にそれぞれの等級ごとに示されている給付率を乗じた額が支給されます。
なお、障害の程度が特級の者に対しては、介護を要する状態にあるということで、介護加算があります。
(3)遺族補償費
遺族補償費は、既被認定者が指定疾病に起因して死亡した場合に、その者によって生計を維持していた者で次の範囲の遺族に対して、次の順位で支給されるものです。ただし、18歳未満の子・孫・兄弟姉妹については、その者の18歳の誕生日の属する年度末まで支給されます。
遺族補償費の給付水準を示す遺族補償標準給付基礎月額は、労働者の性別、年齢階層別平均賃金の70%を基準として、毎年度環境大臣が中央環境審議会の意見を聴いて定めることになっています。
なお、遺族補償費の支給は、既被認定者の死亡により破壊された遺族の生活が回復し、安定した生活ができるようになるまでの期間を目途とし、通常民事において損害賠償として支払われる一時金の額との均衡を失しないものとなるような妥当な期間として、10年間の支給期間としています。
(4)遺族補償一時金
遺族補償費を受けることができる遺族がいない場合などに、一定範囲の遺族に対して一時金として遺族補償一時金が支給されます。
遺族補償一時金の額は、遺族補償標準給付基礎月額の36か月分とされています。
(5)児童補償手当
児童(15歳未満)は、労働能力の喪失等による損害がないなどの理由から障害補償費の支給の対象にはなりませんが、指定疾病にかかった児童は、成長が遅れる、学業が遅れる等の支障を来たし、発作等による肉体的精神的苦痛があることなどの理由から、児童の日常生活の困難度に応じて、養育者に対して、児童補償手当が支給されることになっています。
なお、2003年度からは、支給対象者が想定されないため、同手当の額は定められていません。
(6)療養手当
療養手当は、既被認定者の入院に要する諸雑費、通院に要する交通費等に充てるため、その病状の程度が一定の状態にある場合に、その病状の程度に応じて一定額を支給するものです。
(7)葬祭料
葬祭料は、既被認定者が指定疾病に起因して死亡した場合に、その葬祭を行う者に対して支給されるものです。
葬祭料の額は、通常葬祭に要する費用として定められています。
(参考資料)
I 公害健康被害補償制度の仕組み