公害健康被害補償・予防の手引

問5 公害健康被害補償制度の基本的な考え方

公害健康被害補償制度は、種々の割り切りにより被害者の補償を行なっていますが、その基本的な考え方はどういうところにあるのですか。

公害健康被害補償制度の基本的な考え方は、本来、原因者と被害者の間の損害賠償により解決が図られるべき公害による健康被害の紛争を、個別の因果関係の立証が困難であるとか、原因者が不特定多数であるとかの公害被害の特殊性に鑑み、基本的には民事責任をふまえつつ、公害健康被害者を迅速かつ公正に保護するところにあります。
しかし、基本的には民事責任を踏まえていることから、指定疾病とその原因物質の間には一般的な因果関係があること、また、汚染原因者が補償給付に要する費用を負担すること、が制度の前提となります。

しかし、本制度は行政上の救済制度としての性格を持つことから、民事の領域における被害者救済と異なり、第一種地域に係るものとしては、

  1. 大気汚染と疾病との疫学的な因果関係を前提とし、個別の因果関係は問わないこととし、指定地域に存する汚染の曝露を受け、一定の症状があれば、公害病患者として「認定」することとしています(個別の患者に係わる因果関係の割り切り)。
  2. 補償給付に要する費用を負担する者は、原因物質を排出した大気汚染防止法上の一定の施設を設置していた者に限定されること(原因者の範囲に係る割り切り)。
  3. 補償給付の内容が定型化されていること。
  4. 救済の対象は健康被害に限定されていること。

が、特徴として上げられます。

通常、公害健康被害補償制度が割り切りを重ねた制度といわれているのは、上記の第1、第2の考え方をさしていわれているものです。

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