アスベスト(石綿)とは?

アスベスト(石綿)はどのような場所に使用されていたか

石綿は生活のいたるところで使用されてきました。石綿の用途は3000種といわれるほど多いのですが、大きくは石綿工業製品と建材製品に分けられ、その約8割は建材製品です。

石綿を使った建材製品は1955年ごろから使われ始め、ビルの高層化や鉄骨構造化に伴い、鉄骨造建築物などの軽量耐火被覆材として、1960年代の高度成長期に多く使用されました。また石綿は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性など多様な機能を有していることから、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。その使用形態は以下のようなものがあります。


1. 吹付け石綿

石綿とセメントを一定割合で水を加えて混合し、吹き付け施工したものをいいます。使用期間は1956年ごろから1975年ごろまでです。 吹付け石綿としては、クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)以外に、トレモライト石綿も使用されていました。

写真:吹き付けアスベストの施工例

石綿含有率は、鉄骨耐火被覆用では約60 重量%、吸音・結露防止用では約70 重量%でした。

1987年以降、吹付け石綿対策の一つとして、"封じ込め"が行われたことがあり、まだ目に見えないところで封じ込められた吹付け石綿が残存している場合があります。


2. 吹付けロックウール

1975 年に吹付けアスベストが原則禁止となって以降は、吹付けロックウールに切り替わっていましたが、1990 年ごろまでは石綿を混ぜて使用していました( 石綿含有率は5 重量%以下)。パーライトやセピオライトを原料に使用していた場合にもクリソタイルやトレモライト石綿を含有する場合があります。吹付けバーミキュライトの場合にも、角閃石族石綿に属す、ウィンチャイト、リヒテライト、トレモライト石綿を不純物として含有するアメリカモンタナ州リビー産(商品名ゾノライト)のものが使われていたことがありました。その後の吹付けロックウールには石綿は使用されていません。


3. 石綿含有保温材

石綿含有保温材は、クリソタイルを使用したものとアモサイトを使用したものがありますが、後者を使用したものが圧倒的に多く製造されました。石綿とその他の天然鉱物等を原料にして成形した珪藻土保温材、パーライト保温材、石綿けい酸カルシウム保温材、バーミキュライト保温材や水練り保温材があります。

これらは化学プラント、ボイラーの本体や配管の保温に使われてきました。


4. その他の石綿含有建築材料

石綿含有建築材料は、前述の鉄骨等の耐火被覆材や吸音・結露防止材以外にも、内装材(天井、壁、床材)、外装材、屋根材、煙突材などに使用されてきました。

石綿含有耐火被覆板、石綿含有断熱材、石綿含有整形板があり、スレート波板、スレートボード、けい酸カルシウム板(第一種、第二種)、スラグ石膏板、パルプセメント板、押出成形セメント板、窯業系サイディング、住宅用屋根化粧スレート、ロックウール吸音天井板などの名称で呼ばれています。多くはクリソタイルを使用しており、石綿含有率は製造年代で異なりますが、25 重量%以下です。一般に製造年代が古いほど石綿含有率は高いといえます。

日本では1955年頃から1989年まで、塩化ビニール石綿床タイルが製造、使用されていました。

写真:石綿ストレート波板 石綿スレートを使用した建物の外壁

5. 石綿含有摩擦材

主にクリソタイルまたは石綿布を樹脂で固めたもので、自動車や産業用(クレーン、エレベータ等)のブレーキライニング、ブレーキパッド、クラッチフェーシング、クラッチライニングがあります。2004 年10月1日以降輸入・製造・使用は禁止されています。

6. その他の石綿製品

石綿はセメントとの親和性が良く、また補強にもなることから建材以外にも石綿セメント製品が様々な用途に使われてきました。パイプ(円筒)状のものは、煙突、排気管、電纜管などの低圧管と上下水道用の高圧管があり、煙突にはアモサイトが、水道用高圧管にはクロシドライトが使われていました。

また、タンクやパイプラインなどを接続する際の継ぎ目からの液体漏れを防止するためのシール材としてパッキング(一対のシール部分が互いに連動する箇所に使用される)や、ガスケット(配管などのフランジ部分に固定され、動くことがない場所に使用される)などのジョイントシートは、ゴムと石綿を主原料とし、石綿含有量は主に65%以上でした。ほとんどはクリソタイルが使用されていましたが、1974年以前の耐酸性シール材には、クロシドライトも使用されていました。2006年9月1日から一部の限定された用途の石綿ジョイントシートのみ製造・使用等が許可されていましたが、2012 年 3 月から完全に製造・使用は禁止されました。

石綿紙は、ソーダ用電気隔膜、電気絶縁材、ビニール床タイルの裏打ち材(1987年に使用中止) などに使用されてきました。

歯科技工で使用される石綿リボン(クリソタイル)の大手による販売は1992年までに中止されています。石綿を含有する建築仕上塗材(含有量5%以下)は1970〜99年、下地調整塗材は1970〜2005年まで使われていました。肉眼では白い粉に見える"テーリング"、"カレドリア(calidria)"は短繊維クリソタイルです。

写真:アスベスト布、アスベストリボン、アスベスト糸 写真:アスベストパッキング各種 石綿セメント製パイプ等
石綿製品の用途
製品の種類 主な用途
建材 押出成形セメント板 建築物の非耐力外壁および間仕切壁
住宅屋根用化粧スレート 住宅用屋根
繊維強化セメント板(平板、波板)) 建築物の外装及び内装、屋根及び外壁
窯業系サイディング 建築物の外装
石綿セメント円筒 煙突
非建材 断熱材用接着剤 高温下で使用される工業用断熱材同士の隙間を埋める接着剤、ビニール床タイルやシートに使用された接着剤
耐熱、電気絶縁板 配電盤等
ジョイントシート 配管または機器のガスケット
シール材 機器等の接続部分からの流体の漏洩防止用の詰物
その他の石綿製品 工業製品材料(石綿布等)、ブレーキ(摩擦材)

よくあるご質問

  1. Q1 建物・家屋、職場の建物(事務所、店舗、倉庫等)に石綿が使用されているが、どうしたらよいでしょうか?
このページの先頭へ

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /