緩和ケアのイラスト
胸膜中皮腫は、胸水だけあるいは腫瘍がそれほど進展していない時期(腫瘍が片側の胸腔内にとどまっているもの:ステージI期)には、息切れやせきが主な症状です。腫瘍が胸壁に浸潤(ステージII期)してくると胸・背中の痛みが出現するようになり、さらに進行すると全身倦怠感や体重減少などが出現します。発熱することもあります。最近は緩和ケアが普及・発展して、きちんとした治療を受ければ症状は改善され、生活の質(Quality of Life※(注記))も保つことができます。胸や背中の痛みがあれば治療の最初の段階から緩和ケアを受けることが大切です。
※(注記) QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は「生活の質」、「生命の質」などと訳され、患者さんの身体的な苦痛を取り除くだけでなく、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度という意味があります。
胸や背中の痛みは胸膜中皮腫が胸壁や胸の神経へ広がるために生じます。持続的に痛み、次第に増強していくのが特徴ですが、モルヒネなど医療用麻薬を含めた鎮痛薬で抑えることができます。最近は貼付鎮痛薬も普及しています。放射線治療が有効なこともあります。鎮痛薬の内服が困難な場合、貼付製剤や持続皮下注射を用いることがあります。
息切れやせきはしばしば胸水がたまることから生じます。腫瘍が胸腔に広がり、肺が十分に拡張しなくなって生じることもあります。胸水がたまって息切れが出る場合には、胸水がたまらないように胸膜癒着術を行うことがあります。呼吸困難やせきの症状が進むとステロイド薬や医療用麻薬、抗不安薬などを用います。低酸素血症※(注記)をきたす場合には酸素吸入療法を行います。
※(注記) 動脈血中の酸素が不足した状態で、放置すれば呼吸不全、心不全を起こす可能性があります。
酸素吸入のイラスト
酸素吸入療法は吸気の酸素濃度を高め、体内に十分な酸素を供給する治療法です。在宅では酸素濃縮器や携帯型酸素ボンベから、鼻力ニューレなどで酸素を吸います(在宅酸素療法)。
発熱で不快なのは高熱そのものよりも、体温の上がり下がりによる悪寒や発汗です。解熱剤で体温の上昇を抑えるなどの処置がとられます。一般的に発熱時はクーリング、悪寒時は保温が好まれますが、患者さんの気持ちの良いほうを選ぶと良いでしょう。水分の補給も大切です。
全身倦怠感は病気そのものや手術・化学療法の肉体的負担の影響、不安、貧血、食欲不振などさまざまな要因が積み重なって生じます。気分転換をうまく図ることをはじめ、ヨガなどのリラクゼーション、点滴による栄養補給、生活リズムの改善、抗うつ薬やステロイド薬を用いることがあります。
以前に比べると緩和ケアの知識や技術は普及しています。それまでの担当医がそのまま行うことももちろんありますが、在宅診療に通じた地元のホームドクターにお願いするのもひとつの方法です。症状のコントロールが難しい場合は緩和ケアの専門医に相談することも考えられます。
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