ALPS処理水の海洋放出から1年。安全性の確認とモニタリングの状況は?

国際原子力機関(IAEA)による処理水タンクの調査の写真と、モニタリング結果を公開している「処理水ポータルサイト」(東京電力ホールディングス)・「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと」(経済産業省)のHP画面の写真です。

東日本大震災にともなって発生した、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故。福島の復興と福島第一原発の廃炉に向けた取り組みが進む中で、「ALPS処理水」については、2023年8月から海洋放出がおこなわれています。今回は、放出開始から1年が経過した今、あらためてALPS処理水の安全性の確認とモニタリングの状況についてふり返りながら、海域のモニタリング結果の見かたについてご紹介します。

これまでのモニタリング結果から、ALPS処理水の放出は「安全である」と確認

ALPS処理水とは、「トリチウム」と呼ばれるもの以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のことです。「トリチウム」についても、安全基準を十分に満たすよう、海洋へ放出する前に海水で大幅に希釈しています。

このように、ALPS処理水の海洋放出は、安全基準を満たしていることを確認した上で実施されるため、環境や人体への影響は考えられません。国際原子力機関(IAEA)も、ALPS処理水の海洋放出は、「国際安全基準に合致」し、「人および環境に対する放射線影響は無視できるほどである」と、包括報告書で結論づけています。

岸田総理とグロッシーIAEA事務局長の写真です

岸田総理へ「包括報告書」を手渡すグロッシーIAEA事務局長(2023年7月4日)
(出典)首相官邸HP

IAEAによるチェックについては、放出前だけでなく、放出中、放出後まで長年にわたって実施されます。たとえば、2023年(令和5年)8月の海洋放出後、ALPS 処理水の取りあつかいに関する安全性を確認するために、IAEAはレビューミッションを2回実施し、その結果を公表しています。レビューミッションをおこなった「IAEAタスクフォース」は、原子力分野の専門機関であるIAEAの職員および国際専門家で構成されるチームです。

タスクフォースのメンバーは、日本政府関係者や東京電力との間で技術的事項を議論し、あわせて福島第一原発を実際に訪問して、放出設備などを確認しました。その結果としてまとめられたのが、2024年(令和6年)1月と7月に公表された報告書です。

報告書には「関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」ことが明記され、海洋放出が安全におこなわれていることが確認されました。また、IAEAの職員は福島第一原発に常駐し、オンサイトでの独立した分析を今も実施しています。

視察の様子の写真です

2023年10月に実施された、国際原子力機関(IAEA)タスクフォースによる希釈・放出設備の視察の様子
(出典)東京電力ホールディングス

加えて、放出後は海域のモニタリングが継続的におこなわれています。海洋放出は、2024年8月までに8回実施されましたが、これまでのモニタリング結果から、トリチウム濃度はじゅうぶん低い水準であり、人や環境への影響はなく、安全であることが確認されています。

気になったら見てみよう!私たちも確認できる、海のモニタリング結果

このようなモニタリング結果は常に公開されており、私たちもいつでも確認することができます。

たとえば、東京電力ホールディングスが開設している「処理水ポータルサイト」の「測定・確認用設備の状況」「希釈・放水設備の状況」「海域モニタリングの結果」では、日々数値が更新されています。

「処理水ポータルサイト」の画面の写真です

「海域モニタリングの結果」では、各モニタリングポイントをクリックすると、トリチウム、セシウム137、セシウム134それぞれについてモニタリングの値を見ることができます。

「処理水ポータルサイト」で紹介されている「海域モニタリングの結果」の例
「処理水ポータルサイト」の「海域モニタリングの結果」ページの画面写真です。MAP上のポイントをクリックすると、そのポイントにおけるモニタリング値と、WHOの基準に比べてどうかといったことを確認することができます。

「処理水ポータルサイト」では、マップ上の各モニタリングポイントをクリックすると、それぞれの数値を見ることができる(2024年10月3日公開時点)

大きい画像で見る

グラフのうち、一番上の赤いラインは、世界保健機関(WHO)が定めた飲料水におけるトリチウムの基準濃度を示しています。検出されたトリチウムの値(下にある緑の丸)は、それを下回っていることがわかります。なお、白い丸はトリチウムが「ND(Not Detected)」、つまり測定値が検出限界値(検出の下限値)未満であったことを示しています。

詳しく知りたい
処理水ポータルサイト

また、東京電力は、福島県・環境省・水産庁・原子力規制委員会といった各機関が公表した海域モニタリングの結果を、地図上から閲覧することができるWebサイト(包括的海域モニタリング閲覧システム:ORBS)も開設しています。

さらに、経済産業省が開設している特設サイト「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと」の「ALPS処理水に係るモニタリング」では、ALPS処理水に関わるモニタリングについて、結果が一目でわかるマーク形式で表示するページを公開しています。

ALPS処理水の海洋放出にあたっては、安全を徹底するための取り組みがおこなわれているのはもちろん、このように、情報が広く公開されています。そういえば、福島第一原発周辺の海の状況は今どうなっているのかな?とふと疑問に思った方は、ぜひWebサイトで確認してみてはいかがでしょうか。

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