税率決定までの流れ
関税とは、輸入貨物に課せられる税です。税率は貨物の種類によって、また、当該貨物の原産地によって異なります。税率が決まるまでの流れについては、以下の通りです。
1.各品目がどこに分類されるかを決定する。
物品の所属は「関税率表の解釈に関する通則」に従って決定されます。
関税率表の解釈に関する通則の1(通則1)では、物品の所属は、項の規定及びこれに関連する部又は類の注の規定に従って分類することが定められています。
この通則1では、その冒頭で、「部、類及び節の表題は、単に参照上の便宜のために設けたものである。」とされており、これらの表題は、物品の所属を決定するうえで法的な性格を持たないことが明記されています。このため、ある物品の分類を行うに当たっては、まず、その物品に合致する品名(項の規定)があるかないかを確認する必要があります。併せて、その項に関係する部又は類の注の規定があるかないかについても確認します。これが物品の所属を決定する際の原則です。これによって、所属が決定できない場合(未完成の物品や2以上の項に該当するとみられる物品など)は、通則2から5までをこの順で適用し、物品の所属(項)を決定することになります。
項のうちいずれの号に物品が属するかは、通則6に定められており、項を決定するのと同様に、号の規定及びこれに関係する号の注の規定に従い、これにより決定できない場合には、通則2から5までを準用して決定します。
(*)「部」、「類」等についての説明は、Q&A3番を参照して下さい。
2.原産地ごとに適用される税率を決定する。
冒頭に記したように、関税の税率は、貨物の種類とその貨物の原産地とで決定されます。 1で貨物の種類(所属)の決定方法について説明しましたので、ここでは原産地ごとに適用される税率について説明します。具体的には以下のとおりです。
輸入貨物の原産地が、
A.後発開発途上国(LDC)である。
●くろまる一般特恵対象品目又はLDC特恵対象品目
→
無税を適用
●くろまるその他の品目
→
B、D又はEのプロセスへ
B.経済連携協定(EPA)締約国である。(※(注記)後発開発途上国(LDC)でもある場合は、Aのプロセスを要確認。)
(1)経済連携協定(EPA)税率が設定されている品目
●くろまる一般特恵対象品目(一般特恵対象国以外又は後発開発途上国(LDC)の場合、又は国別・品目別特恵適用除外措置の対象の場合は、その他の品目へ)
・一般特恵税率≧EPA税率である品目
→
EPA税率を適用
・上記以外の品目
→
一般特恵税率を適用(ただし、シーリング管理対象品目については、シーリング枠内の輸入に限る。)
●くろまるその他の品目
協定税率が設定されている品目
暫定税率が設定されている品目
暫定税率>協定税率である品目
協定税率>EPA税率である品目 → EPA税率を適用
協定税率≦EPA税率である品目 → 協定税率を適用
暫定税率≦協定税率である品目
暫定税率>EPA税率である品目 → EPA税率を適用
暫定税率≦EPA税率である品目 → 暫定税率を適用
その他の品目
基本税率>協定税率である品目
協定税率>EPA税率である品目 → EPA税率を適用
協定税率≦EPA税率である品目 → 協定税率を適用
基本税率≦協定税率である品目
基本税率>EPA税率である品目 → EPA税率を適用
基本税率≦EPA税率である品目 → 基本税率を適用
その他の品目
暫定税率が設定されている品目
暫定税率>EPA税率である品目 → EPA税率を適用
暫定税率≦EPA税率である品目 → 暫定税率を適用
その他の品目
基本税率>EPA税率である品目 → EPA税率を適用
基本税率≦EPA税率である品目 → 基本税率を適用
なお、いずれかのEPAの関税率欄に「●くろまる」が記載されている品目に対しては、当該EPAについて複数の税率が設定されています。詳細は旧品目表に基づくEPA税率が適用される品目のNACCS用品目コード一覧表をご確認ください。
(2)EPA税率が設定されていない品目
→
C又はDのプロセスへ
C.一般特恵対象国である。
●くろまる一般特恵対象品目(国別・品別特恵適用除外措置の対象の場合は、その他の品目へ)
→
一般特恵税率を適用(ただし、シーリング管理対象品目については、シーリング枠内の輸入に限る。)
●くろまるその他の品目
→
D又はEのプロセスへ
D.WTO加盟国、便益関税受益国及び二国間協定により最恵国待遇を認めている国である。
協定税率が設定されている品目
暫定税率が設定されている品目
暫定税率>協定税率である品目
→
協定税率を適用
暫定税率≦協定税率である品目
→
暫定税率を適用
その他の品目
基本税率>協定税率である品目
→
協定税率を適用
基本税率≦協定税率である品目
→
基本税率を適用
その他の品目
暫定税率が設定されている品目
→
暫定税率を適用
その他の品目
→
基本税率を適用
E.その他(AからD以外)の国である。(A又はCにおいて『Eのプロセスへ』とされた品目を含む)
●くろまる暫定税率が設定されている品目
→
暫定税率を適用
●くろまる暫定税率が設定されていない品目
→
基本税率を適用
(*)各税率についての説明はQ&A1番を参照して下さい。
Q&A
A1.関税の税率は、基本税率、暫定税率、特恵税率(一般特恵税率)、特別特恵税率(LDC特恵税率)、WTO協定税率(協定税率)、経済連携協定税率(EPA税率)に分かれ、それぞれ法律または協定において規定されています。
それぞれの税率についての説明は以下の通りです。
A2.経済連携協定では、品目ごとに関税削減・撤廃スケジュールが定められています。
発効済の協定
- 日・シンガポール協定(協定及び改正議定書の発効日:2002年11月30日及び2007年9月2日)
- 日・メキシコ協定(協定及び改正議定書の発効日:2005年4月1日及び2012年4月1日)
- 日・マレーシア協定(協定の発効日:2006年7月13日)
- 日・チリ協定(協定の発効日:2007年9月3日)
- 日・タイ協定(協定の発効日:2007年11月1日)
- 日・インドネシア協定(協定の発効日:2008年7月1日)
- 日・ブルネイ協定(協定の発効日:2008年7月31日)
- 日・ASEAN協定(協定の発効日:2008年12月1日)
- 日・フィリピン協定(協定の発効日:2008年12月11日)
- 日・スイス協定(協定の発効日:2009年9月1日)
- 日・ベトナム協定(協定の発効日:2009年10月1日)
- 日・インド協定(協定の発効日:2011年8月1日)
- 日・ペルー協定(協定の発効日:2012年3月1日)
各EPAの関税削減・撤廃スケジュールの詳細につきましては、ステージング表(HS2007)をご参照下さい。
A3.
(*)HS条約とは、「International Convention on the Harmonized Commodity Description and Coding System(商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約)」のことです。
A4.基本税率の左についている◎にじゅうまる印は、特定の用途に使用されることを要件として軽減税率(用途別軽減税率)が適用される品目のうち、関税定率法第20条の2第1項及び関税定率法施行令第58条に基づく手続が必要なものであることを示しています。暫定税率の左についている◎にじゅうまる印は、軽減税率(用途別軽減税率) が適用される品目のうち、関税暫定措置法第9条と関税暫定措置法施行令第35条に基づく手続が必要な品目であることを示し、※(注記)印は、関税のほか、日本国政府の代行機関が調整金を徴収することを示しています。
また、品名欄の*印については、関税暫定措置法で設定されている所属区分であることを示しています。
次に、単位については以下の通りです。
A5.入国者が携帯又は別送する貨物と少額の輸入貨物(課税価格の合計が20万円以下)については、この表の税率ではなくそれぞれ関税定率法第3条の2または第3条の3に規定する簡易税率が適用されます(ただし、入国者または輸入者がこれらの貨物の全部について簡易税率を適用しない旨を申し出た場合を除きます。)。