更新日 2025年09月18日
ちた家の1ケ月の家計簿
知多市の決算を、年収480万円(月収40万円)の家庭の家計に例えています。
財政指標からみた知多市の家計
知多市の財政状況を分析する上で重要な項目をご紹介します。
令和6年度 普通会計 決算統計から
項目 | 知多市 | 家庭にたとえると・・・ | もっと詳しく |
---|---|---|---|
財政力指数 (単年度)(注1) | 0.92 | 今のお給料でやっていけるかしら? | 財政力指数 |
基金残高比率 | 40.9% | 貯金はどれくらいあるかしら? | 基金残高比率 |
地方債残高比率 | 75.7% | この先、返済する借金(ローン)は どれくらいあるのかしら? | 地方債残高比率 |
実質公債費比率(注2) | 3.3% | 家族全員の借金を合計すると、毎月のローン返済が心配だわ。 | 実質公債費比率 |
将来負担比率(注2) |
20.0% |
ローンは収入の何年分ぐらいあるのかしら? | 将来負担比率 |
自主財源比率 | 58.1% | 自分の給料で、どこまで生活費を賄うことができるかしら? | 自主財源比率 |
経常収支比率 | 91.3% | 旅行に行くお小遣いがあるかしら? | 経常収支比率 |
(注1) 財政力指数(単年度)は、令和7年度の数値
(注2) 実質公債費比率、将来負担比率は、いずれも令和6年度健全化判断比率の数値
財政力指数
算出方法 基準財政収入額÷基準財政需要額
知多市:0.92県内市平均:1.04
※(注記)令和7年度地方交付税算定時の単年度数値
※(注記)「県内市平均」は愛知県内の名古屋市を除く平均
結果が1を上回った場合は収入する力が大きく、1を下回った場合は収入する力が計算上の需要に満たないことになります。1を下回った地方自治体は国から「普通交付税」という財源支援が行われます。
全国には約1,700の市町村がありますが、財政力指数が1を上回り「普通交付税」の交付を受けない不交付団体は84市町村(調整率を乗じられた結果、不交付となった団体を含みます。)です。
知多市は、平成22年度に「交付団体」となりました。愛知県内で交付を受けていない市町村は、20市町村です。
知多5市で財政力が高い順番に並べると、県内37市中 東海市(7番目)、大府市(8番目)、半田市(14番目)、知多市(20番目)、常滑市(21番目)となります。
解説
単年度の財政力指数は、昭和49年度以降については昭和59年度の1.58をピークとして下降に転じているものの、近年の数値変動は少ない状況となっていました。令和7年度は高齢者保健福祉費の増などにより基準財政需要額は増加したものの、市民税の増などにより基準財政収入額が増加しました。分子の増加が分母の増加を上回ったため、財政力指数は前年度から0.03ポイント増加し0.92となりました。
基金残高比率
算出方法 基金残高÷財政規模
知多市:40.9%(令和6年度決算)
基金とは家庭での貯金にあたるもので、大規模事業に備えるものや、利息を使って事業を行うもの、非常時に備えるものなどがあります。
備えが多いほど将来の計画も立てやすく財政運営も楽なものになりますが、必要以上の貯金は資金を寝かせてしまうことになります。逆に、極端に少ない場合は非常時に対処できなくなります。
解説
朝倉駅前ホテル誘致事業に伴う土地売払収入を公共施設等整備基金へ積み立てたことなどにより、基金残高は増額となりましたが、財政規模の増加が基金残高の増加を上回ったことにより、基金残高比率は前年度から0.3ポイント減少となりました。今後も、経費節減の取組の推進などにより適正な水準での財政運営を行うことで、財政調整基金からの取崩しを抑制するとともに、今後見込まれる公共施設の長寿命化のための経費の増に備え、計画的に基金の積立てを行います。
地方債残高比率
算出方法 地方債残高÷財政規模
知多市:75.7%(令和6年度決算)
地方債とは家庭での借金(ローン)にあたるものです。
地方債残高比率はローンの返済で将来にわたって、支払いが決まっている金額が年収に占める大きさの割合をいうものです。
ローンは今後の収入の先取りとなるため、その規模が大きくなると、将来収入に見合った新しい事業展開が行いにくくなります。
長期展望と計画性を持ってローンを組み、地方債残高比率を低く抑えることにより「ゆとり」が生まれ、良好な財政運営を行うことができます。
解説
令和6年度は、財政規模が増加したことに加えて、地方債の借入額が償還額を下回ったことにより地方債残高が減少したため、地方債残高比率は前年度から1.9ポイント減少しました。今後の見通しとしては、新庁舎建設や老朽化した公共施設の大規模改修などに係る地方債の発行を予定していることから、地方債残高は増加していくことが予測されます。将来の市税の減収が見込まれる中、持続可能な財政運営を行うため、基金残高を一定規模確保し、地方債残高の増加を抑制することができる財政構造への転換が急務となっています。
実質公債費比率
算出方法 家庭全体の毎年の返済額÷財政規模
知多市:3.3%(令和6年度健全化判断比率)
大規模な事業を行ったときに発行した地方債(ローン)について、病院事業や下水道事業なども含め、市全体の実質的なローン返済の負担の重さを表します。家庭で言えば、住宅ローンの返済に加え、教育ローンや車のローン、クレジットカードで買い物をした支払いなども含めた家庭全体の負担の重さを意味します。
地方債は大規模事業に対する財政負担を将来に分散させるという意味の他に、施設の建設費用などは、建設時点の利用者だけでなく、将来的に利用者となる人たちにも負担を求めるという考え方があります。
度を過ぎた借り入れを行うと、将来の返済が重荷となるため、計画的かつ慎重な借り入れを行う必要があります。
解説
前年度から0.4ポイント増加しました。増の主な理由としては、交付税に算入される公債費の額が減少したことにより、公債費相当額から差し引かれる額が減少したため、公債費相当額が上昇したことなどが挙げられます。今後の見通しとしては、下水道事業債が償還のピークを過ぎ、償還額の減少が見込まれますが、新庁舎建設や老朽化した公共施設の大規模改修に係る地方債の発行を予定していることから、中長期的には、上昇していくことが見込まれます。
将来負担比率
算出方法 家庭全体のローン残高や保証人としての債務の合計額÷財政規模
知多市:20.0%
(令和6年度健全化判断比率)
大規模な事業を行ったときに発行した地方債(ローン)に、全職員が退職すると想定したときに支払う退職手当や保証人として支払う可能性のある債務などを加えた現在高が、収入の規模に対して占める割合を表します。家庭でいえば、ローンの返済と、保証人としての債務の合計額が収入の何年分に相当するかを示します。
中長期的な視点で、財政の健全性を確保する指標として位置づけられ、一般会計だけでなく、公営企業、一部事務組合や広域連合、土地開発公社などを含めて一般会計等が負担するものを負債と捉えます。
解説
前年度から0.7ポイント増加しました。増の主な要因は、西知多医療厚生組合が西知多クリーンセンター建設に係る地方債を発行したことなどによるものです。今後の見込みとしては、下水道事業の地方債償還額の減はあるものの、新庁舎建設や老朽化した公共施設の大規模改修に係る地方債の発行を予定していることから、中長期的には増加していくものと考えられます。
自主財源比率
算出方法 自力の収入÷歳入総額
知多市:58.1%(令和6年度決算)
地方自治体が自力で収入できる財源の中心は市税です。その他、使用料、手数料、財産収入などがあります。つまり、自分で稼ぐ給料です。
自主財源の反対語は「依存財源」です。国庫補助金などがそれにあたります。依存財源は家庭に例えると親からの仕送りにあたり、使い道に条件がつけられます。つまり、国や県からの補助金などは使途が定められているものが多く、細かい規制、事務量増大などの弊害も少なくありません。
国や県に依存しない主体性のある施策を行う上で自主財源が多いということは大切なことです。市民に身近な行政を目指す「地方分権」を語る上でこの数字は重要な意味を持ちます。
解説
国や県の補助事業や地方債の発行による事業などが多い年は低下しますので、ミクロな目で分析して神経質になることはありませんが、長期的に低い数値だと自立度は低いといえます。
令和6年度は前年度から5.6ポイント減少しました。これは、学校施設の整備などに係る地方債の借入額が増加したほか、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金など、国からの補助金収入が増加したことで、歳入全体に占める依存財源の割合が増加し、自主財源の割合が減少したことによるものです。
経常収支比率
算出方法 経常的な経費÷経常的な財源
知多市:91.3%(令和6年度決算)
経常収支比率は財政の硬直度を示す基準です。家計では衣食住など生活する上でなくてはならない出費が、収入に対しどれくらいの割合を持つかを示す指標といえます。この割合が低いということは政策の自由度が高い状態を意味します。この数値を低く保つためには経常的な経費を節減する努力が不可欠です。
解説
令和6年度は、給与改定や退職手当の増などによる人件費の増や、自立支援給付費などの増による扶助費の増などの影響で、経常的な経費は前年度に比べ増加となりましたが、地方特例交付金や普通交付税の増などによる経常一般財源等の増加が、経常的な経費の増加を上回ったことにより、経常収支比率は前年度に比べ 2.7ポイント減少しました。今後の見通しとしては、市税のうち固定資産税は、区画整理による家屋の増や、新たな工場の稼働などが予定されており増収が期待されますが、個人市民税では、少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少に伴い増収が見込めないため、税収は横ばいで推移していくことが予測されます。一方、経常的な経費については、高齢化の進行などに伴う扶助費の増加、老朽化した公共施設の改修や新庁舎整備などの大規模事業に係る公債費の増加などが見込まれ、現状のままでは経常収支比率の上昇は避けがたいものとなっています。このような状況を解消するため、引き続き歳入確保・歳出削減のための取組を確実に実行していくことが必要不可欠です。
ご覧いただいたように、知多市の普通会計における財政状況は、財政の硬直化が進む(自由に使えるお金が減ってくること)など先行きの厳しさがはっきりと表れています。
これまでも健全財政を念頭に置いた財政運営を行ってきましたが、将来にわたり持続可能で自立した財政構造とするためには、様々な方策や改革が必要となります。
行財政の健全化に向けた取組
知多市は、昭和60年度から継続的に行政改革に取り組んできました。平成8年度から12年度までの行政改革大綱において、事務事業の整理合理化や民間委託の推進等に取り組みました。平成13年度から17年度までの構造改革推進計画では、従来の係制度を廃止したフレックス・チーム制の導入、行政評価システムによる効率的な行財政運営に取り組みました。平成17年度には「集中改革プラン」を策定し、事務・事業の再編・整理、廃止・統合、民間委託等の推進、定員管理の適正化などの各視点から改革すべき項目を掲げて取り組んできました。
平成18年度から22年度に「地域経営」「行政経営」の新しい視点を盛り込んだ新たな構造改革計画として「チャレンジちた経営プラン」を策定し、経営改革を推進してきました。
しかし、市税の大幅な減収などを要因として、平成22年度には昭和49年度以来の普通交付税の交付団体となりました。
そのような中、平成23年度からは第5次総合計画により市政運営を始め、平成24年度に策定した「知多市行財政改革プラン 2013」に沿って、平成25年度からの3か年で、事務事業の見直しや人件費の削減などに取り組み、一定の効果を上げることができました。
平成27年度には、今後予測される市税収入の減少、高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増加、公共施設の老朽化対策経費の増加に対応するため「知多市行財政改革プラン2016」を策定しました。「市全体の経営資源の活用」、「民間・地域とのつながり強化」、「効率的な行財政運営」を3つの視点として掲げ、平成28年度から令和2年度までの5年間、プランに沿って事務事業の更なる見直し、資産の計画的なマネジメントや、知多市と東海市で進めているごみ処理事業の統合を始めとする広域連携の推進などの取組を進めました。
令和2年度には、コロナ禍に適応する新しい日常を取り入れ、市民生活に不可欠なサービスの提供を持続可能にするために、「知多市緊急財政改善プラン」を策定しました。令和3年度から5年度までの3年間で歳入の確保、歳出の削減の両面から改革を進め、歳入面では「市有財産の有効活用」「受益者負担の適正化」など、歳出面では「新規事業及び拡大事業の抑制」、「公債費の抑制」、「民営化・委託化の推進」「扶助費の支給基準等の見直し」「事務事業の見直し」「市組織体制の見直し及び人件費の抑制」などの取組を行いました。
しかし、こうした取組を進めているにもかかわらず、知多市では、赤字市債である臨時財政対策債の発行と、基金の取崩しをしなければ、歳出予算を組むことが出来ず、慢性的な財源不足は解消できていない状況です。
歳入の要である市税のうち、固定資産税は区画整理による新築の家屋の増や、新たな工事の稼働などが予定されており増収が期待されますが、市税の約3割を占める個人市民税では、少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少に伴い増収が見込めないため、税収は横ばいで推移していくことが予測されます。
一方、歳出においては、今後も高齢化の進行などにより、扶助費を始めとする社会保障関係費の増加が見込まれます。また、市内の公共施設の多くは建設から30年以上が経過し、大規模修繕や設備更新が必要な時期に差し掛かっており、これらの施設の老朽化対策のための財源の確保も行っていかなければなりません。
令和6年度決算では経常収支比率が91.3%となっており、これは、他市と比較しても固定支出の負担が大きく、自由に政策に使える資金の余裕が無い状態にあることを示しています。市税収入の増加が見込めない中で、投資的事業など将来の発展のための投資を行っていくためには、人件費や扶助費、公債費など毎年経常的に支出する経費の削減を行わなければなりません。
この先行き不透明な状況を打開し、急速なデジタル化や物価高騰、災害など予測できない事態の発生といった急激な社会環境の変化に柔軟に対応できる体制をつくるため、令和5年度に「ちた行革プラン2024」を策定しました。「市民サービス向上」、「業務効率化」、「持続可能な財政運営」、「職員力・組織力強化」を4つの視点として掲げ、令和6年度から10年度までの5年間、「スマート自治体への転換」や、「民間活力の有効活用」、「健全で持続可能な財政基盤の確立」などの取組を進めて参ります。
まちづくりと財政は表裏一体です。大切な税金の使い道は市民の皆さんとともに決めていくものですので、もっとたくさんのことを皆さんにお伝えしなければと思っています。
財政は決して難しいものではありません。みなさんの家計の仕組みと同じです。「出前講座」のメニューに登録してありますので、お気軽に声を掛けてください。