名古屋グランパス・黒川通訳が語った選手の"素顔"...ランゲラックは『グッドダディ』でユンカーは『サッカー少年』 試合前にはこんなルーティンも
2024年9月3日 06時00分
◇連載「鯱の舞台裏」
その激闘、あの勝利には仕掛け人がおり、このチームを支える人たちがいる。名古屋グランパスのスタッフや職員らを紹介する「鯱の舞台裏」。第1回は、GKランゲラック、FWユンカーら、英語通訳を担当してきた黒川隆史さんに聞いた。
守護神GKランゲラックが試合前、黒川通訳に頼むことがある。それは、1人でははめづらいキーパーグローブをはめてもらうこと。「通訳は、最後の最後まで、ロッカーを出るまでずっといるので。最後はハイタッチみたいなことをするので、グッドラック、みたいに言って送り出す」。ランゲラック最後のルーティンとなっている。
主将も務める今季は、開幕の3連敗をはじめ、苦しい時期があった。しかし、そんなときも、ランゲラックは落ち込むことがなかったという。「そこはね、本当にないんですよね。そこがすごいところじゃないですかね。もちろんエキサイトする時はあるけど、変に落ち込む時っていうのは、あんまりない」と、ロッカーに帰れば、平常心に戻る背番号「1」の姿を見てきた。
しばしば、外国語の学習には、母国語の重要性が挙げられる。サッカーの通訳において、母国語とはまさに、サッカーそのもの。大学卒業後、就職した専門商社を退職し、スペインで指導者資格を取得した、異色の経歴を持つ黒川通訳。「サッカーが分かっていれば、サッカーの通訳としては成り立つ」と重要性を強調する。
通訳で大切にするのは、「相手の言いたいことを伝えること」。「例えば『カレーを食べたい』と言ったら、カレーを食べたいんだけど、その1番下には、やっぱりおなかが減っているところがあるわけじゃないですか。そのコアなメッセージを伝えられないと、通訳にならない」と考える。また、試合後は、直接的な、あるいは汚い言葉が混じりがち。意図をくみつつも、柔らかい言葉に替えて、選手を守ることもある。
選手とのコミュニケーションの基本は、サッカー談義だ。FWユンカーとは「やっぱりキャスパー(ユンカー)はサッカー好きだし、戦術的な理解度が高いし、ヨーロッパでやっていたので。サッカー観は、結構キャスパーと合う」と明かす。試合結果、戦術はもちろん、サッカー界の流れ、移籍話まで―。「僕も何かニュースを見たら、『これがあったね』とかも言うし、キャスパーも『あいつに何十億は高いだろう』とか」。ユンカーの性格を例えるならば、「サッカー少年」のようだ。
対して、ランゲラックは「グッドダディ」だ。「オフは、いつも家族と一緒にいるし、飲み歩いたりするわけでもないし」。人柄も「そのまんまで、本当にナイスガイ。普段から、わがままも言わない。僕の英語力がそんなに高くないことは分かっていても『それでも大丈夫だよ』と、いつも言ってくれていた。本当にありがたかった」と感謝した。
今夏、エクアドル人MFカラバリが加入。私生活のサポートも含め、スペイン語が堪能な黒川通訳が担当することになった。「日本が全くの初めてなので、とにかく、この日本で生活できるように、適応をいかにサポートするか。持ってるものは、いいものがあるので、それがうまくピッチの中で発揮できるように」。新たな重責を担う。
▼黒川隆史(くろかわ・たかし) 1984年7月27日生まれ、神奈川県鎌倉市出身の40歳。横浜国立大卒後、専門商社を経て、スペインで5年3カ月指導経験を積み、スペインサッカー協会コーチングライセンスレベル3(S級相当)を取得。2018年〜20年に藤枝でテクニカルコーチ、20年〜22年に町田で通訳兼分析コーチ。23年から名古屋で通訳。
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