■しかくサラリーマン川柳
■しかく
「年金の 出る頃妻は 家を出る離婚劇」
「妻準備いい日旅立ち 退職日」
「愛してる あなたがもらう 年金を」
これらの川柳は第19回第一生命サラリーマン川柳コンクールへの出品作の一部である。
団塊の世代の中でも最も人数の多い1947年生まれが定年を迎えるのが2007年。この2007年は、いわゆる年金分割制度も始まる年でもある。年金分割制度が開始されれば、夫の定年を機に妻から離婚を申し出される「熟年離婚」も増えるのではないかと予想され、定年退職とは別の「もうひとつの2007年問題」といわれている。
確かに、同居期間20年以上の離婚件数が4万5536件と最も多かった平成14年に比べると、平成16年では、4万1958件と7%程度減少しており、年金分割導入をひそかに待っている妻たちが見え隠れしている。
2005年、渡哲也が主演したテレビ朝日の木曜ドラマ「熟年離婚」は、最終回の関東地区視聴率が21.4%に上り、平均視聴率も19.2%と、木曜ドラマ枠では過去最高だった。大阪朝日放送では30%もマークしたという。日刊スポーツ2005年12月10日号によると、「高視聴率の要因は、渡や妻役の松坂慶子らの好演と、視聴者ターゲットを中高年に絞ったこと。熟年世代で社会現象になっている、夫の定年を機に妻が離婚を申し出る「熟年離婚」を取り上げ、視聴者層はF3といわれる50歳以上の女性がもっとも多く、50歳以上の男性が続いた。制作側の読み通りの展開となった」と報じている。
確かに、1975年と2004年を比べると、同居期間20年以上の離婚は6倍。1995年と比べても1・3倍に増加している。
■しかく年金分割
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注目されている年金分割の対象は、厚生年金や共済年金の加入者とその配偶者で、国民年金だけに加入している場合は対象外となる。
厚生年金の報酬比例部分を最大2分の1までわけられる。但し、夫婦の合意が必要で、合意ができなければ、家裁で分割割合を決めることになる。
2008年4月から自動分割も導入されるが、自動的に分割されるのは、2008年4月分以降の第三号被保険者の期間分だけであり、それ以前は夫婦の協議が必要となる。したがって、自動分割部分については熟年者の場合はあまり意味がないといえる。
家庭裁判所が年金分割の割合について原則2分の1という基準を示せば、夫婦間協議においてもスムーズに合意に達することができるのではないか。
最近では、家裁が養育費等の算定表を基準化してから、養育費に関する協議も以前よりはまとまりやすくなっている傾向があり、年金分割においても家裁がどのような基準を定立するのか注目される。
■しかく新成田離婚
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日本人の平均寿命は、男78.64歳、女85.59歳(厚生労働省平成17年8月5日修正「平成16年簡易生命表」より)。子育てを終わり、仕事を引退してからの人生もたっぷりある。医学面では熟年離婚後、女性には身体的・精神的な影響は少ないが、男性の寿命は10年早まるというデータもあるとか。
「鬼嫁も 居るだけいいよと 励まされ」
とのサラリーマン川柳もある。
ここは、妻とのコミュニケーションをもう一度考え直す必要があるのではないか。しかし、「奥さん孝行のため旅行にでも」という考えは危険が伴うらしい。
昔、成田離婚といえば、新婚旅行帰りの離婚を言っていたが、「新成田離婚」という造語があるそうだ。夫の退職記念にクルーズや海外旅行に出かけるものの、旅の終わりには離婚に直面するというのだ。
「昔成田で 今熟年(シニア)」
というサラリーマン川柳もある。
コミュニケーションが不足していたのに、数日間、海外で濃密な時間を過ごすことで、夫婦の溝を確認するだけでなく、対立が深まるというのだ。
2006年1月16日の東奥日報が、作家の西田小夜子さんのコメントを披露している。「飛行機で行く海外旅行より危ないのは、数日間同じ船内で生活する船旅とか。普段習っているダンスなどで気晴らしできる妻を船室に閉じこもりがちの夫がねたみ、けんかになるケースも少なくない」という。西田さんは「海外旅行の前に日帰りバス旅行から始めては」と助言している。
旅行などの小細工ではなく、家事を分担するなど日ごろから理解を示すことが夫に求められているのかもしれない
■しかく最後に
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年金分割といっても結局微々たるもの。それで双方離婚して生活できるか難しい。弁護士として熟年離婚を扱うことも多くなると予想されるが、今から気が重たいものだ。