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平成26年3月31日
日系定住外国人施策推進会議
1.はじめに
日本人の子孫として我が国と特別な関係にあることに着目してその受入れが認められ、我が国に在留する、ブラジル人、ペルー人を中心とする日系人及びその家族(以下、これらの人々を「日系定住外国人」という。)については、当時の経済情勢などもあり、昭和63年以降、入国が急増し、一定の地域において多数居住することとなった。この間、平成2年には、「出入国管理及び難民認定法」が改正施行され、これらの人々は現在、同法に定める「定住者」等の身分又は地位に基づく在留資格で在留しており、活動に基づく在留資格により入国した者と異なり活動内容に制限はなく、自由に就労できる。
日系定住外国人は、多くが主として派遣・請負等の雇用形態で、製造業などに就業しながら、地域経済を支え、活力をもたらす存在として、我が国の経済社会に貢献してきたところである。しかしながら、平成20年秋以降の世界的な経済危機により離職を余儀なくされ、日本語能力が不十分であることなどから再就職が難しく、生活困難な状況に置かれる者が増加した。これに伴い、経済的困窮からブラジル人学校等に通えなくなった不就学の日系定住外国人の子供が増加するといった現象もみられた。
こうした状況を受け、政府は平成21年1月に「定住外国人支援に関する当面の対策」、同年4月に「定住外国人支援に関する対策の推進について」をとりまとめた。その後、22年8月に「日系定住外国人施策に関する基本指針(以下「基本指針」という。」)、23年3月に「日系定住外国人施策に関する行動計画(以下「行動計画」という。)」を策定し、各種の施策を推進してきたところである。
日系定住外国人については、日系ブラジル人を中心に、減少傾向にあるものの、我が国に在留するブラジル人及びペルー人のうち永住者として在留する者の割合は増加傾向にあり、永住化の志向がより高まっているといえる。こうした中、日系定住外国人が集住する地域においては、彼らを単なる支援が必要な者から、地域の一員として捉えようとする動きが多く見られるようになってきている。
今般、行動計画を見直すに当たり、基本指針に記載されている内容も、日系定住外国人に関する状況の変化や課題を踏まえる必要があることから、基本指針、行動計画の双方を一本化した「日系定住外国人施策の推進について」とすることとする。なお、このとりまとめは、平成26年4月から開始し、必要に応じ、開始後3年を目途に見直すこととする。
2.日系定住外国人施策に関する行動計画の進捗状況と課題
(1)行動計画に掲げられた主な施策の成果
行動計画に掲げられた施策の実施により、次のような取組の進展がみられた。
- 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的な内容・方法を取りまとめたカリキュラム案等の5点セットを完成させるとともに、その内容を分かりやすく解説したハンドブックを作成し、日本語教育機関・団体に周知・広報を行い、活用の促進を図った。
- 政府内外の日本語教育関係機関等が持つ日本語教育に関する各種コンテンツについて、インターネットを通じて横断的に利用できるシステムである「NEWS」(日本語教育コンテンツ共有システム)の構築を行った。
- 学校における外国人児童生徒への教育の充実を図るため、外国人児童生徒教育に関わる体系的・総合的なガイドラインである「外国人児童生徒受入れの手引き」、日本語能力を把握するための評価マニュアルである「JSL対話型アセスメントDLA」、教員研修のための「外国人児童生徒教育研修マニュアル」の開発・配付や、情報検索サイト「かすたねっと」の開設等を行った。
- 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導について、学校における教育課程として位置付けられるよう、学校教育法施行規則の一部を改正し、平成26年度より、日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施を可能とした。
- 外国人学校の経営の安定及び外国人の子供の適切な就学等を図る観点から、平成24年に外国人学校の各種学校・準学校法人化の実態と課題等に関する調査研究を行い、各都道府県に対し、その結果を周知するとともに、地域の実情に応じ、当該認可等の弾力的な取扱いについて検討を依頼する通知を発出した(平成24年3月、平成25年11月)。
- ハローワークにおける通訳の配置を行うほか、「日系人就労準備研修」を、これまで約2万人が受講し、就労に必要な日本語や労働法令などの知識・ノウハウの習得を図った。
- 「定住外国人施策ポータルサイト」において、日本語に加え、英語、ポルトガル語、スペイン語においても、日系定住外国人施策に関する情報の一元化を行った。
また、行動計画に掲げられた施策により、次のような成果が挙がっている。
- 不就学や自宅待機となっている定住外国人の子供に対して、日本語等の指導や学習習慣の確保を図り、公立学校等への円滑な就学を支援する「定住外国人の子供の就学支援事業」(虹の架け橋教室)の実施を通じて、平成24年度までに約2、600人が公立学校やブラジル人学校等への就学を果たした。
- 平成25年1月に実施した「日系定住外国人に関する特別世論調査」では、日系定住外国人を地域社会で受け入れることについて、「受け入れたい」又は「どちらかといえば受け入れたい」と回答した割合が80.9%となるなど、日系定住外国人の社会への受入れの必要性・意義についての理解の進展がみられた。
(2)日系定住外国人に関する情勢の変化
前行動計画の計画期間である平成23年度からの3年度間で、日系定住外国人に関する情勢の変化として、次のような点が挙げられる。
- ブラジル国籍者数が、ピーク時の平成19年と比較し、25年6月ではおよそ6割となるなど、ブラジル人を中心に日系定住外国人の減少傾向が進む一方で、永住者として在留する者の割合が高くなるなど、出稼ぎのための短期的な在留から、長期間定住する傾向が強まっている。
- 平成23年3月に発生した東日本大震災の発生後、災害発生時には、行政でも即座に対応できない場合があることが認識された結果、防災・減災への取組の必要性がより身近に感じられるようになり、日系定住外国人を含め、地域住民自らが行う対応が重要であるとの認識が広まっている。
(3)日系定住外国人施策に関する課題
前基本指針において指摘された日本語能力、子供の教育等の課題については、次のような課題が指摘されている。
- 日系定住外国人の中には、簡単な日本語しか話すことができない者や、読み書きが困難な者が多く、日本語能力が不十分な者が多いといった状況は継続している。また、不安定な雇用状況や経済的事情により、移動が頻繁で地域社会に生活基盤を築きにくく、日本語学習を継続することが困難な場合がある。
- 不就学の子供への対応については、定住外国人の子供の就学支援事業等により、一定の成果が挙がっているものの、引き続き課題となっている。
また、上記に加えて、日系定住外国人に関する情勢の変化に応じ、次のような新たな課題が指摘されている。
- 永住化の傾向が高まるにつれ、学校で学んだり、就労する際に必要となる日本語能力がより求められるようになっている。
- 次第に日系定住外国人の中にも高齢者が増加しており、今後は、増加傾向にある高齢者をいかに支えていくかが、新たな課題となり得る。
- 災害の発生時など、行政等も、多言語化が即座にできない場合における対応や、日系定住外国人自身が支援に回れるようなあり方を考える必要がある。
3.日系定住外国人施策に関する基本指針
(1)日系定住外国人が置かれている状況
日系定住外国人が現在置かれている状況については、次のようなことがみられる。
- 平成20年末における外国人登録者数について、ブラジル人は31万2,582人、ペルー人は5万9,723人となっていたところ、同年以降減少傾向にあり、25年6月末時点の在留外国人は、ブラジル人では、18万5,644人(20年末時の59.4%)、ペルー人が4万8,979人(20年末時の82.0%)となっている。これは、平成20年秋以降の経済危機後の厳しい経済状況やブラジル等における経済成長もあり、日本での生活を断念した者が相当数帰国したものと推測される。一方で、ブラジル人のうち永住者として在留している者の割合が、20年末では35%であったが、25年6月末では61%となるなど、国内のブラジル人の半数以上が、永住者として在留するようになっている。
- 日本語能力が十分でない日系定住外国人ほど、不安定な雇用形態での就労となる傾向がある。
- 永住許可を受ける日系定住外国人が増えるにつれ、高等学校を含め、公立学校に就学する子供も多数いるが、日本語能力が十分でなく、学校での学習に支障が生じる状況は依然としてみられる。
- 東日本大震災以後、日系定住外国人の中にも防災意識が高まりつつあるものの、防災訓練等に参画している事例が少ないなど、災害に対する理解は、まだ十分に進んでいないという状況がみられる。
(2)日系定住外国人施策の基本的な考え方
国としては、教育、雇用などの面で各種の対策を講じてきたところであるが、日系定住外国人が置かれた状況を踏まえると、日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れていくための方策を、引き続き、実施していく必要がある。
また、日系定住外国人の多くが日本に定住をしていくことを考えれば、日本社会の一員として受け入れ、社会から排除されないようにするための施策を、国の責任として、今後とも講じていくことが求められている。
このため、前基本指針において「日系定住外国人施策の基本的な考え方」において示されている「日本語能力が不十分である者が多い日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れ、社会から排除されないようにする」ことを、継続して、日系定住外国人施策の基本的な考え方とする。
また、日本社会の一員として受入れを進めるに当たっては、国籍などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、日本社会の構成員として共に生きていくという視点が大切である。
このための施策を国の責任として講じていくこととし、地方自治体と連携しながら、これまでの関連施策の成果も活用しつつ、必要な施策を推進することとする。
この場合、NPOなどの支援団体とも連携を図ることが重要である。
なお、日本に居住する他の外国人も、同様の課題を抱えている場合があると考えられ、日系定住外国人に対して講ずる施策については、可能な限りこれらの他の外国人に対しても施策の対象とすることが望ましい。
さらに、新しい視点として、永住者として在留する者が増加傾向にある中、日系定住外国人を、単なる支援が必要な者ではなく、地域社会を構成する一員として捉えることも大切である。特に災害発生時など、日系定住外国人が支援に回れるようなあり方を考える必要がある。
日系定住外国人が置かれている状況や、こうした施策の基本的な考え方を踏まえると、次の6つの分野について、対応を考えていくことが必要である。
- 日本語で生活できるために
- 子供を大切に育てていくために
- 安定して働くために
- 安全・安心に暮らしていくために
- 地域社会の一員となるために
- お互いの文化を尊重するために
(3)日系定住外国人施策の具体的な方向性
- 日本語で生活できるために
- 日系定住外国人にとって、日本語能力が不十分であることにより、日本での生活のあらゆる場面で支障が生じ、永住化の傾向が強まる中、日本語教育の必要性は、ますます強まっていくものと考えられるため、日本での生活に必要な日本語を習得する体制を、引き続き整備する必要がある。
- また、今後は、学校での学習や就業の基礎となる日本語等、日系定住外国人が求めるレベルや内容が多様化することが想定されるため、こうしたニーズに対応した日本語教育の機会の提供も求められるものと考えられる。
- 子供を大切に育てていくために
- 子供の就学機会を保障し、日本で生活していくために必要となる日本語や知識・技能を習得させることが必要である。
- 特に、日本の公立学校に就学する日系定住外国人の子供が多数いることから、引き続き、日本語能力が十分でない児童生徒への配慮など、公立学校における受入れから卒業後の進路までの一貫した指導・支援体制の構築が強く求められている。
- 安定して働くために
- 安定して働くためには、就労に際して求められるレベルの日本語習得や職業能力の向上が重要である。
- また、日本語能力が不十分である者に対しては、多言語での就職相談や、彼らの日本語能力に配慮した職業訓練を行う必要がある。
- 安全・安心に暮らしていくために
- 東日本大震災を経て、日系定住外国人を含め、外国人に対する防災対策の重要性が強く指摘されているが、対策を考えるに当たっては、日系定住外国人は、日本語能力や防災知識の不十分さなど、日本人とは異なる課題を抱えていることに留意する必要がある。
- 一方で、日系定住外国人を単に支援が必要な者という捉え方から、普段の災害への備えなどは、日系定住外国人を同じ地域社会の一員として考えることも重要な視点として捉えるべきである。
- また、高齢者が次第に増加している現状を踏まえ、医療、年金、母子保健といった社会保障がしっかりと受けられるよう、制度の理解を含め情報提供を行うことが必要である。
- 地域社会の一員となるために
- 日系定住外国人が地域の一員となるためには、日系定住外国人の中にも、地域や行政と日系定住外国人たちをつなぐリーダーとなり得る人材が育成されることが有効であると考えられる。
- さらに、地域社会の一員となるにあたって課題と考えられる事項については、自治体とも連携しながら、施策の立案に資するための調査を行うことも必要と考えられる。
- お互いの文化を尊重するために
- 地域によって、日系定住外国人が住んでいる状況は異なるが、いずれにおいても、国籍などが異なる人たちであっても、お互いの文化を尊重しながら、共に生きていくことが重要であり、施策の推進に当たってはこの点に留意する。
- 日系定住外国人は、日本とブラジル等の出身国との懸け橋になり得る人材であり、日系定住外国人との関わりは、日本人にとっても、グローバル化に対応できる人材の育成を図る上で、有益な経験となるものである。
4.分野ごとの具体的施策
(1)日本語で生活できるために必要な施策
- 日本語教育の総合的な推進体制の整備等
- ア 日本語教育関係機関・団体及び関係省庁が参集した日本語教育推進会議を開催し、引き続き日本語教育全般に係る情報交換を行う。(文部科学省)
- イ 我が国に居住する外国人にとって、日本語能力等が十分でないこと等から、外国人が安心・安全に生活できないという問題を解決し、外国人が円滑に日本社会の一員として生活を送ることができるよう、引き続き、「「生活者としての外国人」のための日本語教育事業」を実施し、日本語教育の実施、人材養成、教材作成、体制整備及びコーディネーターに対する研修を行う。(文部科学省)
- ウ 日本語教育に関する体制整備を行うため、自治体等の担当者を対象とした研修や意見交換を実施する。(文部科学省)
- エ 政府内外の日本語教育関係機関等が持つ日本語教育に関する各種コンテンツについて、インターネットを通じて横断的に利用できるシステムである「NEWS」(日本語教育コンテンツ共有システム)を運用するとともにコンテンツの充実を図る。(文部科学省)
- オ 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的な内容・方法を取りまとめたカリキュラム案等の5点セットについて、日本語教育機関・団体に対して周知・広報し、活用の促進を図るとともに、必要な改善について検討する。(文部科学省)
- カ 文化審議会国語分科会日本語教育小委員会において、日本語教育におけるボランティア及び関係機関間の連携協力の在り方等、日本語教育の推進に必要な事項について検討を行う。(文部科学省)
- 各種手続の機会を捉えた日本語習得の促進
- ア 日本語学習の必要性、日本語学習や日常生活に関する情報、入門的な日本語の知識等についてまとめた「日本語学習・生活ハンドブック」のポルトガル語版、スペイン語版等を作成し、文化庁ホームページに掲載しているところであり、今後も引き続き情報提供に努める。(文部科学省)
- イ 平成21年度に開催した「外国人の受入れと社会統合のための国際ワークショップ」において、入国前の外国人に対する情報提供のコンテンツ(日本語学習、医療・保険、教育など)について多言語で作成した成果物を、外務省及び在外公館のホームページに引き続き掲載するとともに、在外公館の領事窓口に配備しており、今後も引き続き情報提供に努める。(外務省)
- ウ <1>や<2>イの施策の進捗状況を踏まえつつ、各種手続の機会を捉え、日本語習得状況について確認し、必要に応じ日本語教育を受けることを促すなど、日本語習得の促進を図るための方策について引き続き検討する。(内閣府、各省庁)
(2)子供を大切に育てていくために必要な施策
- 子供の教育に対する支援
- ア 外国人児童生徒等の受入れから卒業後の進路までの一貫した指導・支援体制の構築を図るため、各自治体による、公立学校への受入促進・日本語指導の充実・支援体制の整備に係る取組に対して支援を行う「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」(補助事業)を実施する。(文部科学省)
- イ 外国人児童生徒に対して日本語指導を行う教員についての加配定数を引き続き措置するとともに、その配置の改善について検討を行う。(文部科学省)
- ウ 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の円滑な導入・実施を図るため、状況調査や実践事例の把握、情報提供に努める。(文部科学省)
- エ 外国人児童生徒等の教育に関わる教員や管理職及び指導主事等を対象として、日本語指導法等を主な内容とした実践的な研修を引き続き実施する。(文部科学省)
- オ 高等学校への進学を希望する生徒の受入れについての環境整備を支援するため、受入体制が整備されている高等学校の事例の把握やその情報提供に努める。(文部科学省)
- カ 外国人の子供等が中学校卒業程度認定試験を受験しやすくなるように、全ての漢字に振り仮名を振った問題冊子による受験を可能とし、日本語能力試験N2以上の合格者について国語の科目免除を認める等の措置を引き続き講じる。(文部科学省)
- キ 日系定住外国人の子供が教育を受ける機会を確保するため、在留期間更新等の際に、文部科学省において作成している就学に関するリーフレットを配布すること等によりその就学を促進する。(法務省、文部科学省)
- ク 定住外国人の子供の公立学校等への円滑な就学を支援するため、「定住外国人の子供の就学支援事業」(虹の架け橋教室)について、平成26年度も引き続き実施する。また、教育委員会や自治体と連携した地域の体制整備や、子供の国籍の多様化、外国人集住地域以外の地域における対応等の課題への適切な対応を図る観点から、本事業の最終年度に当たり、平成27年度以降の支援の在り方について検討を行う。(文部科学省)
- ブラジル人学校等の各種学校・準学校法人化の促進等の支援、ブラジル本国政府などへの要請等
- ア 平成21年度に作成した「準学校法人設立・各種学校認可の手続きのマニュアル」(日本語版とポルトガル語版)の周知を引き続き図るとともに、外国人学校の各種学校設置認可等を促進するため、都道府県に対し、地域の実情に応じ、当該認可等の弾力的な取扱いについて引き続き促す。(文部科学省)
- イ 日伯領事当局間協議や、ブラジル教育省との会議等が開催される機会を捉え、日本に在住するブラジル人の子供への支援(教科書の無料送付等)をブラジル政府に要請する。(外務省、文部科学省)
(3)安定して働くために必要な施策
- 仕事に必要な日本語の習得などを図る職業教育、職業訓練等
- ア 外国人求職者のニーズに対応し、日系定住外国人が集住する地域において、安定就労への意欲及びその必要性の高い日系定住外国人求職者を対象に、日本語コミュニケーション能力の向上、我が国の労働法令、雇用慣行、労働・社会保障制度等に関する知識の習得を図る日系人就労準備研修を、引き続き実施する。(厚生労働省)
- イ 日系定住外国人が集住する地域において、訓練等の受講に当たって一定の日本語能力を有する日系定住外国人求職者を対象に、その日本語能力等に配慮した職業訓練を、地域のニーズ等を踏まえつつ引き続き実施する。(厚生労働省)
- 多言語での就職相談
- ア 日系定住外国人が集住する地域を管轄するハローワークにおける通訳・相談員の配置、市町村とも連携したワンストップサービスコーナーの運営及び日系定住外国人専門の相談・援助センターの運営による、多言語での就職相談を、引き続き実施する。(厚生労働省)
- 事業主に対する指導・相談援助、産業界との意見交換等
- ア 雇用対策法に基づく外国人雇用状況の届出等に基づいて、ハローワークの職員等が事業所を訪問する等により、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に基づく雇用管理改善指導を行うとともに、より専門的な相談援助が必要と認められる事業所へは、外国人雇用管理アドバイザーによる相談援助を引き続き行う。(厚生労働省)
- イ 日系定住外国人を含む外国人労働者に関する諸問題について、関係省庁の協力を得ながら、産業界との意見交換や適切な指導を実施する。(経済産業省)
- ウ 企業や経済団体などが日系定住外国人支援に果たすことのできる役割について、先進事例を紹介するなど、関係省庁における実務者等の会合を通じ、どのような方策が可能かについて引き続き検討する。(内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)
- 就労の適正化のための取組
- ア 雇用対策法に基づく外国人雇用状況の届出等に基づいて、ハローワークの職員等が事業所を訪問する等により、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に基づく雇用管理改善指導を行うとともに、より専門的な相談援助が必要と認められる事業所へは、外国人雇用管理アドバイザーによる相談援助を引き続き行う。(再掲)(厚生労働省)
(4)安全・安心に暮らしていくために必要な施策
- 防災・減災のための対策
- ア 消防庁ホームページの外国人向け災害対応に関する普及啓発ホームページ等各種広報媒体により引き続き周知を行う。(総務省)
- イ 地方自治体に対し、災害時のより円滑な外国人住民対応に向けて、日系定住外国人向けの防災対策の推進に関する必要な助言及び対策事例についての情報提供を引き続き行う。(総務省)
- ウ 大規模災害発生時に、外国人が必要とする情報提供を行うことができるよう、引き続き、災害時情報共有用のFacebookの充実を図る。(外務省)
- エ 自治体等に対して、「やさしい日本語」を活用した災害発生時の情報提供方法について習得するためのコンテンツの整備等を行う。(内閣府)
- オ 自治体に対し、地域防災計画において位置付けるなど、「やさしい日本語」の積極的な活用を推奨する。(内閣府)
- カ 災害関連制度・施策の多言語化を積極的に図る。(内閣府)
- キ 過去の災害等における外国人対応について、定住外国人施策ポータルサイトの活用等により共有を図る。(内閣府)
- ク 日系定住外国人が支援側として参画する防災訓練の取組など、先進事例の紹介を通して、日系定住外国人も災害時に支援に回ることの重要性の周知を図る。(内閣府)
- 防犯対策
- ア 各都道府県警察において、日系定住外国人に対して、犯罪被害者となることを防止すること等を目的とした防犯教室、非行防止教室を開催し、その際に防犯相談ハンドブック等を配布するなど、関係機関等と連携しつつ、防犯対策等の充実を引き続き図る。(警察庁)
- イ 日系定住外国人を中心に結成され、通学路における子供の保護・誘導等の活動を行っている自主防犯団体に対し、活動のための物品の無償貸付を行うとともに、各都道府県警察において、同団体等に対する地域安全情報の提供、合同パトロールの実施等の支援を引き続き行う。(警察庁)
- 交通安全対策
- ア 各都道府県警察において、引き続き、日系定住外国人に対して、交通ルールに関する知識の普及を目的とした交通安全教室を開催するとともに、各種言語に対応した外国人向けの教材の充実を図る。(警察庁)
- 公的賃貸住宅の活用、民間賃貸住宅への入居支援
- ア 公営住宅等に関し、在留資格を持つ外国人について、日本人と同様の入居を認めるよう、引き続き取組を推進する。(国土交通省)
- イ 離職退去者の居住安定確保に向け、若年単身者等本来の入居対象者以外の者に利用させる場合の手続きの簡素化を通じ、地方自治体が供給する公営住宅等の空き家の活用を引き続き図る。(国土交通省)
- ウ 外国人を対象とした民間賃貸住宅への入居円滑化に関するガイドラインや部屋探しに関するガイドブックについて、国土交通省ホームページでの公表等を通じ、一層の普及促進を図る。(国土交通省)
- エ 地方自治体や関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会の活動に対する支援や家賃債務保証の実施により、外国人世帯の民間賃貸住宅への入居を円滑化し、居住の安定を確保する。(国土交通省)
- 社会保険、国民健康保険の加入促進等
- ア 外国人を雇用する事業所に対する社会保険への加入促進のための指導を引き続き行うとともに、外国人の在留資格の変更、在留期間更新等の際に社会保険制度未加入が判明した外国人について、社会保険制度への加入が円滑に進むよう、社会保険制度の加入を促すリーフレットを法務省の地方入国管理官署で引き続き配布し、社会保険の適用を促進する。(厚生労働省)
- 外国人患者受入環境の整備
- ア 国内医療機関において、外国人患者を受け入れる上で支障となる問題として、外国人患者と医療機関スタッフとの間の言語に関連するコミュニケーションの難しさがある。この問題に対応し、外国人が安心・安全に日本の医療サービスを受けられるよう、医療通訳等が配置されたモデル拠点(病院)の整備を図る。(厚生労働省)
- 外国人住民に係る住民基本台帳制度の円滑な運用
- ア 平成24年7月に施行された外国人住民に係る住民基本台帳制度について、引き続き自治体と協力しながら円滑に運用するとともに、社会保障・税番号制度の着実な施行に努める。(総務省)
(5)地域社会の一員となるために必要な施策
- 相談できる体制の整備、リーダーとなる人材やNPOの育成の促進等
- ア 自治体と協力しながら、地域社会の一員となるための課題と考えられる事項について、日系定住外国人の今後の居住意向を確認するための調査等、定期的に日系定住外国人に関する調査を行う。(内閣府)
- イ 移住者・日系人支援の一環として実施している日系定住外国人を対象とした電話等による生活相談業務を継続する。(外務省)
- ウ 日系定住外国人におけるリーダーの育成を支援するため、自治体やNPO等に対し先進事例の紹介等を、積極的に行う(内閣府、各省庁)
- エ 「定住外国人施策ポータルサイト」の活用等により、集住地域を有する地方自治体のまちづくりの成果やNPO、企業等の活動実績の紹介等を通じ、地方自治体、NPO、企業等による取組を奨励し、日系定住外国人の日本社会への受入れを積極的に行う環境を整備する。(内閣府、各省庁)
- オ 自治会などを活用した、地域の日系定住外国人全体を地域社会の一員とするための取組の周知を、積極的に図る。(内閣府、各省庁)
- カ 法務省の「外国人在留総合インフォメーションセンター」及び「外国人総合支援ワンストップセンター」の運営、厚生労働省のハローワークにおける通訳・相談員の配置、市町村とも連携したワンストップサービスコーナーの運営及び日系定住外国人専門の相談・援助センターの運営等により、外国語で相談できる体制を引き続き整備する。(一部再掲)(法務省、厚生労働省、各省庁)
- 情報の多言語化等
- ア 内閣府の「定住外国人施策ポータルサイト」において、実際に相談活動や支援活動を行っているNPO等のニーズを踏まえ、国の統一的な制度等について、引き続き、多言語での情報提供を行うとともに、日系定住外国人の支援を行うNPO等の活動に資する情報についても充実を図る。(内閣府)
- イ 日本の教育制度や就学の手続き等をまとめた就学ガイドブックのポルトガル語版、スペイン語版等を作成し、全都道府県・市町村教育委員会、在外公館等に配布しているほか、文部科学省ホームページにも掲載しているところであり、今後も引き続き情報提供に努める。(文部科学省)
- ウ 国民年金制度の勧奨リーフレットのポルトガル語版、スペイン語版等を作成し、日本年金機構のホームページに掲載するほか、全国の年金事務所において配布し、加入勧奨を図っているところであり、今後も引き続き情報提供に努める。(厚生労働省)
- エ 妊婦健康診査の受診勧奨リーフレットのポルトガル語版、スペイン語版等を作成し、厚生労働省のホームページに掲載しているところであり、今後も引き続き情報提供に努める。(厚生労働省)
- オ 各都道府県警察において、外国語による運転免許学科試験及び講習予備検査の実施に関する取組を推進する。(警察庁)
- カ 平成21年度に開催した「外国人の受入れと社会統合のための国際ワークショップ」において、入国前の外国人に対する情報提供のコンテンツ(日本語学習、医療・保険、教育など)について多言語で作成した成果物を外務省及び在外公館のホームページに引き続き掲載するとともに、在外公館の領事窓口に配備しており、今後も引き続き情報提供に努める。(再掲)(外務省)
- キ 日本語学習の必要性、日本語学習や日常生活に関する情報、入門的な日本語の知識等についてまとめた「日本語学習・生活ハンドブック」のポルトガル語版、スペイン語版等を作成し、文化庁ホームページに掲載しているところであり、今後も引き続き情報提供に努める。(再掲)(文部科学省)
- ク 国税庁において、外国人のための所得税申告の手引き等の英語版を引き続き作成するほか、日系定住外国人からのニーズが多い一部の国税局においては、一部の様式についてポルトガル語版・スペイン語版も引き続き作成し、外国人納税者へ申告書を発送する際に同封又は税務署窓口において交付するほか、当該国税局のホームページにも掲載する。(国税庁)
- ケ 中長期的に、あらゆる行政文書を翻訳することができるやさしい日本語の開発の可否について検討を行う。(内閣府)
(6)お互いの文化を尊重するために必要な施策
- 地方自治体における自主的な多文化共生の取組の促進
- ア 地方自治体における多文化共生の取組を促進するため、平成18年3月に策定した「地域における多文化共生推進プラン」について、各種会議等を通じて周知する等必要な施策の普及を引き続き図る。(総務省)
- イ 地方自治体における多文化共生の取組を促進するため、地方自治体の先進的な取組事例等参考となる情報を提供する。(総務省)
- 日系定住外国人の社会への受入れの必要性・意義についての周知等
- ア 「定住外国人施策ポータルサイト」の活用等により、集住地域を有する地方自治体のまちづくりの成果やNPO、企業等の活動実績の紹介等を通じ、地方自治体、NPO、企業等による取組を奨励し、日系定住外国人の日本社会への受入れを積極的に行う環境を整備するとともに、日系定住外国人の日本社会への受入れの必要性・意義について国民一人ひとりがその理解をより一層深めるための取組を進める。(一部再掲)(内閣府、各省庁)
5.推進体制
- (1) 本とりまとめに盛り込まれた事項の推進状況については、日系定住外国人施策推進会議幹事会等によって、適宜フォローアップを行う。
- (2) 施策の推進に当たっては、地方自治体、NPOなどの支援団体等との連携を積極的に図り、地方自治体等の知恵を活かしながら施策を実施することとする。