21世紀を迎えるに当たり、本格的な少子・高齢社会が到来する中で国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するためには、効率的かつ効果的に社会資本を整備し、質の高い公共サービスを提供することが、国、地方公共団体及び特殊法人その他の公共法人の公共施設等の管理者等に課せられた重要な政策課題であるが、この実現のために、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用し、財政資金の効率的な使用を図りつつ、官民の適切な役割及び責任の分担の下に、公共施設等の整備等(公共施設等の建設、維持管理若しくは運営又はこれらに関する企画をいい、国民に対するサービスの提供を含む。以下同じ。)に関する事業の実施を民間事業者に行わせることが適切なものについてはできる限り民間事業者にゆだねることが求められている。
民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業(以下「PFI事業」という。)は、公共性のある事業(公共性原則)を、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して(民間経営資源活用原則)、民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施するものであり(効率性原則)、特定事業の選定及び民間事業者の選定においては公平性が担保され(公平性原則)、特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されねばならない(透明性原則)。さらに、PFI事業の実施に当たっては、各段階での評価決定についての客観性が求められ(客観主義)、公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすることが必須であり(契約主義)、事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されなければならない(独立主義)。公共施設等の管理者等は、公共サービスの提供を目的に事業を行おうとする場合、当該事業を民間事業者に行わせることが財政の効率化、公共サービスの水準の向上等に資すると考えられる事業については、できる限りその実施をPFI事業として民間事業者にゆだねることが望まれる。
このPFI事業の着実な実施は、次のような成果をもたらすものと期待される。
第一は、国民に対して低廉かつ良質な公共サービスが提供されることである。この目的を達成することは、もとより公的部門の重要な課題である。しかし、近年国及び地方公共団体の財政は極めて厳しい状況にあり、着実に財政構造改革を進めていく必要があるところ、民間事業者の経営上のノウハウの蓄積及び技術的能力の向上を背景に、公共施設等の整備等にその経験と能力の活用を図ることが求められている。このような状況の下で、PFI事業による公共サービスの提供が実現すると、それぞれのリスクの適切な分担により、事業全体のリスク管理が効率的に行われること、加えて、建設(設計を含む。)、維持管理及び運営の全部又は一部が一体的に扱われること等により、事業期間全体を通じての事業コストの削減、ひいては全事業期間における財政負担の縮減が期待できる。また同時に、質の高い社会資本の整備及び公共サービスの提供を可能にするものである。このPFI事業を円滑に実施することにより、他の公共施設等の整備等に関する事業においても、民間の創意工夫等が活用されることを通じて、その効果が広範に波及することが期待される。
第二は、公共サービスの提供における行政の関わり方が改革されることである。PFI事業は、民間事業者にゆだねることが適切なものについて、民間事業者の自主性、創意工夫を尊重しつつ、公共施設等の整備等に関する事業をできる限り民間事業者にゆだねて実施するものである。このことによって、財政資金の効率的利用が図られ、また、官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップが形成されていくものと期待される。
第三は、民間の事業機会を創出することを通じて経済の活性化に資することである。PFI事業は、従来主として国、地方公共団体等の公的部門が行ってきた公共施設等の整備等の事業を民間事業者にゆだねることから、民間に対して新たな事業機会をもたらす効果があることに加えて、他の収益事業と組み合わせて実施することによっても、新たな事業機会を生み出すことになる。また、PFI事業のための資金調達方法として、プロジェクト・ファイナンス等新たな手法を取り入れることにより、金融環境が整備されるとともに、新しいファイナンス・マーケットの創設につながることが予想される。これらの結果、新規産業を創出し、経済構造改革を推進する効果が期待される。
以上のような認識の下に、民間事業者の自主性と創意工夫を尊重したPFI事業の促進を図ることは、喫緊の政策課題といえる。国及び地方公共団体においては、公共施設等の管理者等が特定事業の実施を円滑に進められるように、以下に示すところにより、所要の財政上及び金融上の支援、関連する既存法令との整合性の明確化、規制の緩和等の措置を講ずる必要がある。
本基本方針は、公共施設等の管理者等が、共通の方針に基づいてPFI事業を実施することを通じて、効率的かつ効果的な社会資本の整備が促進されることを期し、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号。以下「法」という。)
第4条第1項の規定に基づき、特定事業の実施に関する基本的な方針として定めるものである。なお、本基本方針は、国等(
法第2条第3項第1号及び第3号に掲げる者をいう。以下同じ。)が公共施設等の管理者等として行うPFI事業について主として定めるものであり、同時に、地方公共団体においても、法の趣旨にのっとり、本基本方針の定めるところを参考として、PFI事業の円滑な実施の促進に努めるものとする。