第1回 国民生活研究会 議事概要

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第1回国民生活研究会 議事概要


1.日 時 平成10年10月2日(金)14:00〜16:00

2.場 所 経済企画庁官房708会議室(第4合同庁舎7階)

3.出席者

(委員)八代尚宏座長、赤池学、落合恵美子、河野真理子、須賀由紀子、寺崎康博、福武總一郎の各委員

(事務局)中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、大西計画課長、佐々木計画官、塚原計画官、福島経済構造調整推進室長 他

4.議 題 国民生活研究会の進め方について

5.審議内容

開会後、委員紹介、座長挨拶の後、中名生総合計画局長より、「将来の国民生活のヴィジョンは当面の経済運営にも重要な関わりを持つ。以前は高齢化が進むと貯蓄率が下がると言われていたが、老後の不安のためか消費が落ちている。景気回復のためにも、先の国民生活の姿をクリアに描いていくことが重要。本研究会でそうしたテーマに応えるべく自由闊達な議論をお願いしたい」との挨拶があった。

続いて福島経済構造調整推進室長より研究会の趣旨等について説明。八代座長より、「高齢化社会の姿を明らかにするという目的のために、今の高齢者の姿をそのまま前提にすることはできない。これからの中高年夫婦では共働きが増加し、教育水準が上昇するなど、現在の中高年夫婦の典型的な姿とは異なる可能性が大きい。そのために、世代ごとの動きを捉えるコホート分析を行う意義があり、こうした分析などを基に議論することにより、今とは異なった将来の高齢化社会の姿を描けるのではないか」との発言があった。

次に塚原計画官、佐々木計画官、福島経済構造調整推進室長より、経済審議会経済社会展望部会等における労働・社会保障関係の分析結果について説明。

最後に福島経済構造調整推進室長より、我が国の世帯に関する各種指標の現状、将来の家計予測の考え方について説明。

以上で事務局からの説明を終わり、研究会のテーマの立て方、検討の仕方等につての討議に入った。

委員からの主な意見は以下のとおり。

〇 2010年、2020年の家計の姿を分析するのに、単に傾向延長的に将来の賃金プロファイルなどの計算をするというのでは意味がない。世代間の所得格差が拡大し、また年功的賃金プロファイルが修正され、それに対して人々はこのような就業面の対応を行うのではないかというように、分析のためのいくつかの仮説を置く必要がある。特に人々の就業行動の変化が最も大きなファクターであり、それを一定にした見方は長期の分析では意味がない。高齢者の就業や共稼ぎなどは今後これまでにない高まりを見せる。

〇 将来における「健全な」家計の姿といったとき、何を以て「健全」というのか。出生率についても同じだが、ある望ましいパターンに向けるというよりも、想定されるケースごとにどのような問題が生じるのか、どのような対策が必要なのかを考えていくことが必要。その際、最大の問題点は貯蓄率が長期的にどう変化していくかではないか。

〇 今後発生してくるであろう様々な社会的コストを考えたとき、それを家族がどこまで吸収できるか。もう一度核家族の在り方を見直し、例えば三世代世帯においてどのような対応が可能かなどを改めて議論してはどうか。

〇 介護や居住形態の変化に対応した住宅政策、地域間の差などについても考えるべき。「100年住宅」のようなものを考えたとき、新しい「家族経営」の発想が必要になってくる。なお、以上のことを自治体やNPOへ権限が委譲されていく文脈のもとで議論する必要がある。

〇 価値観が多様化する中で、同じ30代、40代でもどういう働き方をしたいかは様々になっており、1つのモデルではなく、色々なケースごとの姿がビジュアルに描ければよい。将来を最も不安に思っている30代、40代の人達がなかなか言いたいことを言わない。これらの人達に向けて、今後どのようなライフコースが考えられるかを示すことができれば意義がある。

〇 個々の問題について考える前に、基本的な考え方について議論する必要がある。計画や制度は色々あっても、それを動かすための仕組みが議論されていない。そのため限られた公的メニューの範囲でしか選択できず、福祉サービスに民間が入れる余地は非常に少ない。全ての分野において徹底的に規制緩和を呼びかけるなど、他省庁が言えないことを言うのが経企庁の仕事。アメリカでは百年経っても建物の値段は変わらないのに、日本では償却期間を24年と決めてしまっているなど、ムダ金を使って後に何も残らない施策がまかり通っている。

〇 経済企画庁のレポートには大きなコトバが多く使われているが、それと現実の制度の結びつきが乏しい。例えば、福祉の規制緩和を言うためには社会福祉事業法の問題まで、フルタイムとパートタイムの完全平等を言うには労基法・派遣法の問題まで具体的に降りて言及する必要がある。「家族経営」にしても補助金や税制をどうするのかという具体的なワードをレポートに入れる必要がある。

〇 「典型的な世帯」だけでなく、「例外的な世帯」についても示してほしい。例えば生涯独身の人、子供を持たない人などが将来どうなるかが報告書から分かるようになるとよい。「ライフサイクル」という発想ではみなが同じになってしまうので、「ライフコース」という様々な選択肢を前提とした発想が必要。これに関連して統計の取り扱いにも注意を払うべき。

〇 NPOについてはボランティアを強調しすぎて介護の現場が低賃金化することを危惧している。ボランティアの奨励については様々な意見を付すべき。

〇 外国の事例について見ることも参考になる。例えばアメリカのエリート層は共働きで、しかもすごくよく働くのにしっかりと子供がいる。どのようにしてこうした姿が支えられているのかなどについても考えてみることが有効。

〇 アメリカでは自分で裁量的に働くというスタイルが確立しているのではないか。統計の扱いについては、特に高齢者に注意を要する。日本ではこれまで高齢者とその子供世代等との同居率が高かったのが、今後は単独世帯の貧しい高齢者が増加すると考えられる。これは、現在統計に十分現れていない。統計に現れているのは比較的高所得で自立している高齢者。したがって、現在の統計に単純に依拠するのでなく、高齢者を世帯でなく個人として捉える分析の工夫を加える必要がある。

〇 親との同居、独立、結婚、子供との同居、子供の独立というように、年齢とともに世帯構造及び行動様式は変わっていくので、コホート分析においてこれをどう取り扱うか。日本の場合、都市部を中心に20代の人達が親と同居する例が多いが、これらの人々は統計では隠れてしまっているなどの問題もある。

〇 いろいろなライフスタイルを持った人がいるのに、例えば「30代」と一くくりにしていいのか疑問。レジャー白書を見ても、8割の人が生活全般に充実感を感じている中で、「よりよい生活」とは何なのかが問題。人生80年のうち、労働時間はわずか1割に対し自由時間は3割。レジャーや余暇の面からも考える必要がある。働き方を通じての自己実現だけでなく、個人の「人間づくり」にどう投資すべきかという視点からも考えるべき。少子化にどう対応すべきかの提言もできればよい。

〇 現在政府が少子化を問題として立てているのは、経済活力の面からなのか、世代間の負担格差の面からなのか。

〇 社会保障や経済活力の問題もあるが、そもそも子供を持ちたい人が大部分なのに持てないという現状にひずみ、社会的制約が現れており、これを取り払っていく必要があるというのが政府の認識ではないか。女性の就業を巡る制約を打破し、働きたいときに働け、産みたいときには産めるような社会になれば、出生率は回復すると期待されている。

〇 少子化社会はある程度必然のものであり、子どもを無理に増やそうとするよりも、少子化社会にいかにソフトランディングするかを課題にすべき。女性の働き方のみを問題にするのでなく、むしろ男性の働き方に選択肢が少ないのを変えていく必要がある。男性が育児休暇をとり家庭生活を楽しむような環境を作るべきではないか。

〇 勤続年数や年齢、性別にこだわる男性側の意識改革、両性を問わず再就職に当たって時間や場所に固執する意識の改革、ゼネラリスト偏重から専門性の尊重を進めていくことが必要。

〇 人々が時間や場所や内容を選択しつつ、人生の中で様々な就業形態を変えながら高齢になっても働き続ける世の中となっていく中で、生涯のキャリア形成の場として社会人教育等の体制整備を進めていくことが必要。

委員からの発言が一巡したところで定刻を迎え、閉会に当たって八代座長より次回以降の日程を事務局で早急に調整するよう指示があった。

6.今後のスケジュール

次回第2回国民生活研究会は、10月中旬に開催予定(日時未定)。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局経済構造調整推進室

(担当)福島、押田

TEL 03−3581—0783(直通)

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