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東京農業大学名誉教授
昭和19年4月8日、京都府生まれ
昭和44年、東京農業大学農学部卒業
昭和50年、東京農業大学農学部講師
昭和57年、東京農業大学農学部助教授
昭和61年、農学博士(東京農業大学)
昭和62年、東京農業大学農学部教授
平成 7年、東京農業大学農学部長 (平成10年まで)
平成10年、東京農業大学地域環境科学部長(平成11年まで)
平成11年、日本造園学会会長(平成13年まで)
東京農業大学長(平成17年まで)
平成14年、東南アジア国際農学会会長(平成16年まで)
平成15年、日本都市計画学会会長(平成16年まで)
平成17年、日本学術会議会員・環境学委員会委員長(平成23年まで)
平成18年、自治体学会代表運営委員(平成25年まで)
日本野学教育学会会長(平成24年まで)
平成22年、東京農業大学名誉教授
平成23年、一般社団法人農あるくらし研究会会長
平成25年、福井県里山里海湖研究所所長
現在に至る
昭和59年、国立公園協会田村賞
平成元年、日本造園学会賞
平成16年、土木学会景観デザイン賞最優秀賞
ウクライナ国立科学アカデニー"Golden Fortune"表彰
平成18年、日本農学賞・読売農学賞
平成19年、紫綬褒章
日本公園緑地協会北村賞
大日本農会紅白綬有功章
平成24年、日本生活学会今和次郎賞
日本造園学会特別賞
<日本庭園と農の融合による『みどりのまちづくり』の計画・政策・実践>
日本が世界に誇る文化的資産として日本庭園がある。進士氏は、半世紀にわたり日本庭園の思想・様式・空間構造について学術研究を積み上げてきた。この研究を基礎として、進士氏は、日本庭園は日常生活とは無縁な特殊な空間ではなく、暮らしの場において人間と自然の共生と協働により創り出された「生活環境のなかの農の風景」に本質的意義があるとの認識から、都市における「農の復権」を基礎とする「みどりのまちづくり」の計画方法論の構築を行い、政策展開、実践を行ってきた。
1980年代頃まで、日本庭園に関する研究は、哲学や美学、歴史等に着目した人文科学的なアプローチが主流を占めていたが、進士氏は庭園環境のデータ分析を踏まえ、その特質を実証科学的な視点から解明した。すなわち、緑被率、モジュール分析、曲率分析等の指標を導入し、日本庭園の特質を明らかにするとともに、視点場からの景観構造の分析を踏まえ、縮景・借景などの景観構造を明らかにした。これらの研究は、学術論文発表のみにとどまらず、出版や放送活動をとおし、多くの人びとが日本文化の結晶としての庭園を理解する上で大きな役割を果たしてきた。
進士氏の功績は、学術研究はもとより、国土全域にわたる新たな「みどりのまちづくり」の計画方法論の構築、政策、立案、実践活動を行ってきたことにある。1960年代以降、日本は高度経済成長の道をたどり、産業、交通、通信手段の発達により、農村は都市化され自然は駆逐されていった。同氏の研究は、人間はすべての生きとし生けるものと同じく生き物であり、生態系の秩序の中に、都市といえども共生の道筋を見出していかなければならないとの観点から、「農」を真正面から都市の社会的共通資本として位置づけた点に特色がある。このような方法論は、世界および日本の都市計画においては稀有である。また、進士氏の理論は、そこに暮らす人びとのライフスタイルとリンクさせ、生活そのものの転換と都市環境デザインを結びつけたことにある。菜園付き住宅、屋上緑化、自治体の公園整備、里地・里山・里海の保全活用など、一連の社会実装を伴う業績は、このライフスタイル革命と密接に結びついている。氏の理論が、多くの市民の共感を得て広がっていく背景には、日本庭園研究を基盤とした造園原論に基づく確たる手法と環境の世紀に向けたライフスタイル提案との融合がある。
また、進士氏は日本で展開した方法論を、世界各地の文化的景観を守り育てる普遍的方法論に昇華させ貢献してきた。国際造園家会議IFLA (International Federation of Landscape Architects)では、日本庭園と緑のまちづくりに関する多数の発表を行っている。また、世界農学高等教育コンソーシアムGCHERA (Global Confederation of Higher Education and Research for Agriculture)では、日本代表、副会長としてアジア、南米など世界各国の農業振興による地域再生に貢献してきた。ウクライナ国立農業大学、ラモリーナ国立農業大学(ペルー)、中国農業大学、西北農林科技大学などの名誉博士、客員教授としても貢献した。また、日本庭園の正しい理解のために、マレーシア(ビンツル)、米国(ポートランド)、中国(北京、西安、上海、昆明)などで講演や技術指導にあたってきた。
進士氏の功績において最も特筆すべきは、『みどり』に対する国民の理解増進への貢献である。これまで空白であった都市における「景観の保全・育成」に市民協働による運動を立ち上げ、政策と連動させ国民的運動をつくりだしてきたことは、氏の極めて重要な貢献であり、このような草の根の活動が「景観法」の制定につながった。また、都市内農業についても、積極的な啓発および実践活動を行ってきており、近年の全国各地にみられる市民農園や里山ボランティアの増大は、この間半世紀に及ぶ氏の活動がその大きな底流を形作ってきたものである。
以上、進士氏の功績は日本庭園の特質に関する学術研究を昇華させ、環境の時代にふさわしい「緑と農のまちづくり論」の創造を行い、地球環境の持続的維持に向けた基盤となる方法論を提示したことにある。