アルコールとうつ・自殺〜「死のトライアングル」
年末年始は忘年会や新年会といった酒席が立て込み、夜の繁華街にも酔客の陽気な声が多くなる時期です。しかし誰もが陽気になるわけではありません。年末年始は、借金などの悩みを抱えた人にとっては、かかえている問題を意識せざるを得ない、つらい時期でもあるのです。
確かにアルコールの酔いは一時的に苦痛をやわらげてくれます。しかし、その効果は長続きしないのです。それどころか、飲んで高揚した気分を味わった後には、気分が前よりも落ち込み、自暴自棄的な気分になることさえあります。なによりも、大酒はうつ状態と不眠を悪化させます。このため、悩みをかかえている人が、素面(しらふ)でも解決のつかないことを飲みながら考えるのは危険なことなのです。
自殺予防総合対策センターで行っている研究からは、中高年男性の自殺の背景には、しばしばアルコール問題があることがわかっています。自殺した中高年男性の多くは、借金や離別などの現実的な問題をかかえ、うつ状態の苦しみをアルコールでしのぐなかで、最終的に自殺という結末を迎えていました。私たちは、アルコールとうつ、自殺という3つの要因は、働きざかりの男性にとって「死のトライアングル」といってよい関係にあると考えています。
実は自殺だけではありません。アルコールは様々な内科疾患はもちろんのこと、飲酒運転、暴力、虐待とも密接に関連しています。お酒は私たちの生活に豊かさと潤いを与えてくれる一方で、不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となるのです。
こうした現実を踏まえ、わが国では平成26年6月に
アルコール健康障害対策基本法が施行されました。この法律が施行されてから最初の年末年始を迎えるいま、アルコール健康障害対策基本法を意識したお酒とのつきあい方を心がけてみたいものです。