(平成25年12月20日)東京電力株式会社が発注する架空送電工事の工事業者及び地中送電ケーブル工事の工事業者に対する排除措置命令,課徴金納付命令等について
平成25年12月20日
公正取引委員会
公正取引委員会は,東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が発注する架空送電工事(注1)の工事業者及び地中送電ケーブル工事(注2)の工事業者に対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,後記第1のとおり,同法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたとして,本日,同法第7条第2項の規定に基づく排除措置命令及び同法第7条の2第1項の規定に基づく課徴金納付命令を行った(違反行為については別添排除措置命令書参照)。
また,東京電力に対し,同社の発注方法及び同社の一部の社員の行為が上記違反行為を誘発し,助長していたことから,本日,後記第2のとおり,申入れを行った。
(注1)「架空送電工事」とは,架空の送電設備の建設工事(架空の送電設備に係る附帯設備の工事を含み,当該建設工事以外の工事が併せて発注されるものを含む。)をいう。
(注2)「地中送電ケーブル工事」とは,66,000ボルトの電気の伝送に使用される地中の送電設備の電線の新設,引替え及び除却の工事をいう。
第1 排除措置命令及び課徴金納付命令について
1 違反事業者数,命令対象事業者数及び課徴金額
(違反事業者名,各事業者の課徴金額等については各別表のとおり。)
(注3)「東京電力本店等発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,本店又は支店において,7名(別表1の番号1ないし4,6及び8記載の6社並びに別表1の番号5及び7記載の2社に別表1記載の8社以外の1社を加えた3社で構成されるTEC経常共同企業体の7名をいう。)のみを対象に,予報(注8)(価格低減率(注9)の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積(注10)の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除き,KDDI株式会社と共同で発注する工事を含む。)をいう。
(注4)「東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,茨城支店,埼玉支店,千葉支店又は東京支店において,別表2記載の11社のみを対象に,予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除く。)をいう。
(注5)「東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,多摩支店,神奈川支店,山梨支店又は沼津支店において,別表3記載の8社のみを対象に,予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除き,KDDI株式会社と共同で発注する工事を含む。)をいう。
(注6)「東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事」とは,東京電力が,栃木支店,群馬支店又は猪苗代電力所において,別表4記載の10社のみを対象に,予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。),競争見積又はリバースオークション(注11)の方法により発注する架空送電工事(東京電力において当該工事の実施について引き当てられた予算額が100万円以下の工事を除き,KDDI株式会社と共同で発注する工事を含む。)をいう。
(注7)「東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事」とは,東京電力が予報(価格低減率の提示による競争によって予報先を選定するものに限る。)又は競争見積の方法により発注する地中送電ケーブル工事をいう。
(注8)「予報」とは,東京電力が,契約に先立ち特定の事業者に対して,工事概要等を示し,将来,当該工事を発注する予定である旨の意思をあらかじめ通知することをいう。
(注9)「価格低減率」とは,東京電力が定める査定価格から減額が可能な程度を百分率で示すものをいう。
(注10)「競争見積」とは,東京電力が,複数の事業者を選定して実施する見積り合わせをいう。
(注11)「リバースオークション」とは,東京電力が,複数の事業者を選定して,定められた時間内に競り下げ方式により価格を提示させる「リバースオークション方式」と称する競争入札をいう。
2 違反行為の概要
東京電力は,かねてから,架空送電工事及び地中送電ケーブル工事を発注するに当たり,予報の方法によりこれらの工事を発注する場合にあっては,競争によらずに予報先を選定するなどしていたところ,東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故による賠償金の支払等のため,経営合理化を実施し,徹底したコスト削減を実現することが求められたことから,遅くとも平成24年1月までに,予報の方法にあっては,工事の施工を希望する工事業者に価格低減率を提示させ,競争により,最も高い価格低減率を提示した者を予報先に選定することとするなど,これらの工事の発注方法を変更することとした。
上記のとおり,東京電力が架空送電工事及び地中送電ケーブル工事の発注方法を変更したことを契機として,次の(1)ないし(5)の違反行為が行われていたことが認められた。
(1) 東京電力本店等発注の特定架空送電工事
違反事業者8社は,遅くとも平成24年1月31日以降,共同して,東京電力本店等発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力本店等発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(2) 東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事
違反事業者11社は,遅くとも平成24年2月2日以降(注12),共同して,東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力東ブロック発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(3) 東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事
違反事業者8社は,遅くとも平成24年2月1日以降,共同して,東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力西ブロック発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(4) 東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事
違反事業者10社は,遅くとも平成24年2月6日以降(注12),共同して,東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力北ブロック発注の特定架空送電工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(5) 東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事
違反事業者6社は,遅くとも平成24年2月3日以降(注12),共同して,東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京電力発注の特定地中送電ケーブル工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注12)一部の違反事業者にあっては,別表2,4及び5の注記のとおり,同日後に違反行為に参加している。
3 排除措置命令の概要
前記2の違反行為ごとに,次のとおり排除措置命令を行った(注13)。
(1) 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会等において決議しなければならない。
ア 前記2の行為を取りやめていることを確認すること
イ 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,東京電力が発注する架空送電工事又は地中送電ケーブル工事について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと
(2) 名宛人は,それぞれ,前記(1)に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人及び東京電力に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
(3) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,東京電力が発注する架空送電工事又は地中送電ケーブル工事について,受注予定者を決定してはならない。
(注13)前記2(1)及び(5)に係る名宛人に対しては,上記(1)ないし(3)に加え,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じることについて命じた。
[1] 自社の工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底(別表1の番号3ないし7記載の5社及び別表5の番号2ないし5記載の4社にあっては独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の従業員に対する周知徹底)
[2] 東京電力が発注する架空送電工事又は地中送電ケーブル工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての,当該工事の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
4 課徴金納付命令の概要
(1) 課徴金納付命令の対象事業者は,平成26年3月24日までに,それぞれ別表1ないし別表5の「課徴金額」欄記載の額(総額7億4662万円)を支払わなければならない。
(2) 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがある事業者については,独占禁止法第7条の2第7項第1号の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している。
(3) 株式会社TLC(注14)は,前記2(1)の違反行為において,受注予定者以外の事業者が提示する価格低減率を指定するなどしており,前記2(1)の違反行為を容易にすべき重要なものを行っていたことが認められたため,独占禁止法第7条の2第8項第3号に該当する者であり,同項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している。
(4) 株式会社関電工(注14)は
ア 調査開始日から遡り10年以内に課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがあり,独占禁止法第7条の2第7項第1号に該当する者であること
イ 前記2(5)の違反行為をすることを企て,かつ,他の事業者に対し当該違反行為をすることを唆すことにより,当該違反行為をさせたことが認められたため,独占禁止法第7条の2第8項第1号に該当する者であること
から,独占禁止法第7条の2第9項の規定に基づき,10割加算した算定率を適用している。
(注14)株式会社TLC及び株式会社関電工は,東京電力のグル―プ会社である。
第2 東京電力に対する申入れについて
1 本件審査の過程において認められた事実
(1) 東京電力は,架空送電工事及び地中送電ケーブル工事を発注するに当たり,特定の者だけを工事の参加募集の対象としていた。また,東京電力が,これらの工事の発注に当たり,見積り合わせの参加者を一堂に集めた現場説明会を開催する場合には,当該説明会終了後に引き続いて,当該参加者間において受注予定者を決定する話合いが行われることがあった。
なお,受注予定者を決定する話合いに参加していた者の中には,東京電力の退職者が7名いた。
(2) 東京電力の架空送電工事及び地中送電ケーブル工事の発注業務等の一部の担当者は,前記第1の2の違反行為を認識していたにもかかわらず,これを看過した上,工事業者に対し,当該違反行為が発覚することがないように注意喚起を行っていた。また,架空送電工事の見積り合わせの実施に当たり,特定の工事業者に対して事前に発注の意向を伝えていた。
2 申入れの概要
前記1の事実は,前記第1の2の違反行為を誘発し,助長していたものと認められることから,公正取引委員会は,東京電力に対し,[1]発注制度の競争性を改善してその効果を検証するとともに,前記1(2)と同様の行為が再び行われることがないよう適切な措置を講じること,[2]東京電力のグループ会社である株式会社TLC及び株式会社関電工において,前記第1の4(3)及び(4)の事実が認められたことを踏まえ,これら2社を含めた東京電力のグループ会社において,今後,独占禁止法に違反する行為が行われないよう適切な措置を講じることを申し入れた。
関連ファイル
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問い合わせ先 公正取引委員会事務総局審査局第五審査
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