こんにちは。ハカセです。
硫黄島で暮らしてると、日々面白いことがたっくさんあるのですが、慣れないとなかなかブログ書けないもんですね...笑。というわけで、久しぶりに頑張って書きます。
5月の下旬、知人のみなさまにわざわざ東京から来ていただき、トライアルのツアーをやりました。
「ツアー」と書いてますが、中身は全然一般的なツアーではなく、合宿のようであり、スタディツアーのようであり、遊びのようであり、リトリートのようであり、、なんというか、すごく深くて広くて面白い、自分としては生きてきた全部を出してお伝えしたような、そんな時間でした。
案内の行程をざっと振り返るとこんな感じ。
宿に荷物を置いたら車にのって、硫黄島を感じにでかけます。
まずは鬼界カルデラのど迫力の崖を!
ここから見えてる景色のすごさを知ってもらい、硫黄島に意識をチューニングしてゆきます。
続いて岬橋へ。硫黄岳パイセン今日はおとなしめですが、刻々と変わる火山の噴気や温泉が描き出す海の模様を眺めながら、「生きている地球」を現象として直感的に理解し印象づけます。
単純にここ、高くて怖くもあるんで、みんなテンションが上がってきます。笑
それから平家城へ。
最近はこっち側の噴気がすごいし(噴気の音も聞こえる)海の色が温泉で染められていて見たこともない風景なので、「地球のエネルギーすげえ!」が参加者の口から出始めます。嬉しい。笑
それにしても、「すごい景色!」って皆言うけど、なんでこういう景色を「すごい」と感じるんでしょうね。自分の中で何が起こってるんだろう?笑
誰が言い出したか、寝っ転がって体で大地を感じているところ。
実はけっこー芝がちくちくするのでみんなすぐ起きました。笑
とはいえ、温泉が染める海が美しい。
島に到着して2時間足らず。
みんな笑顔が弾けてきます!
そのまま東温泉へ。
この時間はちょうど干潮にあたり、普段は入れない場所へ行くことができました!ここは、温泉が降ってきて海と混ざりあうところ。上から降ってくる熱すぎる温泉と、冷たい海水の混ざるちょうど良いところを、波にもまれながらあちーとか冷てーとかわーきゃー言ってそれぞれキープします。しかも温泉はpH1.7なので、めっちゃ目にしみるんです。熱すぎたり冷たすぎたり目にしみたり波にもまれたりと、優しくない地球に触れて、身体の本音とつながる時間です。干潮 &波が穏やか、という2つの条件が揃わないと行けない場所なので、僕も5回めくらいかなー?
それにしても、こんな粋な計らいをしてくださるなんて...パイセン素敵(はーと)!
温泉から上がったあとは、うちの庭先でBBQ。
前日にとっておいた、今が旬の大名筍。高級食材ですがなんと食べほーだい!!
大名筍は丸焼きを自分で剥いて食べるのが、僕は一番すきだなー。旬のものをその土地で食べる。
昔はこれしかできなかったのに、今はそれが贅沢になってるって、不思議な矛盾ですよねー。
やかましいと周りに迷惑がかかるので適当な時間にうちにひきあげ、囲炉裏をかこんで二次会です。
うちに収容した最大人数かも。笑
みなさん、五右衛門風呂や囲炉裏をふつーに使ってる我が家の生活に驚いてました。
東京ではありえない話ですもんね...
不便ではあっても火が起きるまでじっくり待ったり、天気を気にしながら薪を拾ってきて乾かしたりと、ゆったりとした時間を過ごすことの豊かさを感じてくださったようでした。
釣り班がつってきたサバジャコやアジの子供も、丁寧に囲炉裏で焼いていただきました。
翌朝。
朝ごはんは宿で自炊です。
ご飯、みそしる、漬物、というシンプルな朝食ですが...
必殺の鰹節削り器!
我が家では毎日、枕崎産の鰹節を削ってご飯にかけたり出汁をとったりしてるのですが、これが大好評でした。削りたてはやっぱり香りが全然違うんです。みんな子供のように喜んで削りたがって、各自でおかかご飯を作り、おかわりしまくってました。嬉しい。
朝ごはんが終わったあとは、気候変動のレクチャーです。
これは参加者の方からオファーがあったもの。「温暖化のこと、懐疑論もあって本当なのかよくわからないし、どうしたらいいのか考えたいから教えてほしい」とのことで、僕の南極体験談から始まって地球の気候システムの解説、それから都市に住む自分たちに何ができるのか、というダイアログまで。多彩なメンバーのバックグラウンドを反映して、議論も深まるし広がります。地球に生きること、災害やレジリエンス、社会のシステムや経済との繋がり、関係資本を創ること、などなど、、、いつの間にか休憩なしで2時間半!僕も本当に勉強になるいい時間でした。
お昼ご飯を食べたあとは着替えてシーカヤックへ!
この日は天気もよくて風も穏やか、てーか暑いくらいで最高のカヤック日和です。
初日には眺めるだけだった崖に近づいてみたり、温泉のおかげでちょっと暖かい海水に触ったり、天然の洞窟に入ってみたりと、みんな大はしゃぎ!
さいごには海にドボンする人まで現れました。笑
陸に上がってお風呂に入り休憩したあとは、今回2度めのBBQ。
大町さんが7キロのスマガツオや鯛を釣って差し入れしてくださいました。
ありえへんでかさやー!!そして美味すぎるー!!!
夜のシメはやっぱりジャンベ。
みんなでリズムを合わせて叩いて踊って、ものすごい一体感!
あ・ぼーらのみなさま、今回もありがとうございました!!
このあとは、この日をふりかえりながら少しだけお酒を飲んでぐっすり眠りました。
最終日はゆっくりめに起きて、またご飯を作って鰹節を削ってたべて、掃除、片付けをしたあとは、車座になってチェックアウト。それぞれが感じたこと、印象に残ったことを、1人ずつ気が済むまでお話ししてもらいました。
ぐるっと一周して、僕の話がおわったところで時間切れ。
フェリーの時間になりました。
とまあ、本当に盛りだくさんの行程でしたが、今回の2泊3日を通して伝えたかった以上のことを島から受け取ってくれて、参加者の福島創太くんが文章にしてくれました。彼がfacebookに投稿してくれた感想を、そのまま引用させてもらいます。
===
硫黄島は、何千年、何万年という時間の流れを感じさせてくれる場所でした。
足早に過ぎ去っていく日常や、目の前で取り組んでいる問題について、一度足を止めて改めて考えるのには、これ以上ない空間でした。
ビジネスの世界で様々なチャレンジに取り組んでいると、目の前の問題や新たな打ち手をあまりにも短い時間軸で捉えすぎてはいないかと不安になるときがある。
そんなとき大学にいって、長い時間軸で問題を捉え直したり、長い歴史の中で紡ぎ出された叡智にふれることで冷静さを取り戻し、バランスをとっているようなところがある。
今回硫黄島で、地質学を極めた大岩根 尚さんから丁寧な説明を聴き、地形や地層に直に触れながら、何万年という時間軸で地球に起きてきたことを知り、そして体感するなかで
人間という存在が、自分が向き合っている「社会」というものが、とてつもなくちっぽけに思えて。
自分があまりにも無力に感じて。
先週末、5月なのに猛暑日となる地域があった。
昨年も、日本では大災害に見舞われる地域があった。
今年だって、もちろんそんなこと起きないにこしたことはないけれど、そう信じきるのは希望的観測が過ぎる気がする。そしてそのことが、地球温暖化と何の関係もないと考えることも、また同じくらい無理のあることに思える。
日本という国は地震の危機と隣り合わせ、そしてプレートの移動は火山の噴火を引き起こし、日本列島に1万年周期で訪れる大噴火まで、数百年、数千年と迫っているそうです。
こんな大きな大きな文脈の中で起きている気候変動。
そう考えると、人間とはいかにちっぽけなものか。
それにもかかわらず、人間は地球に温暖化を引き起こし、生物全体を脅かしている。
地球という文脈のなかで、いったい人間とはなんなのか。
地質学者として気候変動の調査のために南極にまでいったひさしさんはきっと、そんな視点でずっと地球を見てきて。
絶望することもたくさんあったんじゃないかと思っていて。
でも、あるいはだからこそ、硫黄島に移り住み、自然を感じながら生きて、そんな暮らしを世の中に届けようとしていて。
その姿がとてつもなくかっこよくて。
硫黄島から帰ってきて、そんなことをずっと考えている。
答えはもちろんでない。
なんだか堂々巡りで。
でもふと、硫黄島で感じたことはそれだけじゃなかったな、って。
それは、自分がいまとてつもなく生きてるってこと。
海を目の前に天然の温泉につかったり、大自然のなかでシーカヤックを漕いだり、雲ひとつない空の下で海に飛び込んだり、綺麗な海をぼーっと眺めながら釣りしたり、みんなで酒を飲みながら語らったり。
旬を迎えた大名筍や、カツオ、鯛など近海の恵みを堪能したり、ジャンベとアフリカンダンス体験で思いっきりはしゃいだり。
流れ星がいくつも流れる星空を時間を忘れて眺めたり、真っ赤な朝陽に涙したり、開聞岳に沈む夕陽に心から感動したり。
大自然の中で、時間さえも忘れて、いま目の前に起こることに没頭して。
とてつもないエネルギーを放つ海、山、空、大地と丸腰で向き合って。
そんな自然に照らされて、自分の深いところから湧き上がるエネルギーを感じて。
そんな中で感じたのは、生きてるなーってことだった。
それもまた、まぎれもない事実。
それを思い出して、なんだかとっても嬉しくなった。
なんか、「生きてるんだから仕方ないか」、と、開き直ってみた。
地球も生きてる。
おれも生きてる。
一緒に生きるためにはどうすればいいか。
人間が特別だとは思わない
あまたいる生き物の、ひとつ。
でもできることがある
目の前だけにとらわれず、
壮大すぎる時の流れに絶望することなく。
自分ができることはなにか、考えていこう。
今はとりあえず、ここまで。
===
彼の感想を読みながら泣いてしまいました。
写真や動画や雑誌や、、という誰かのフィルターを通してでなく、自分がその場に身を置いた時に感じるもの。僕がこれまでの人生で、南極や、硫黄島や、調査船の上や、海の中や、いろんなところに身をおいてみて知ることができたのは、人間のセンサーの多様さや素晴らしさ、なのかもしれない。こんなにも多様で繊細なセンサーを持っているのに、快適で便利な都会の生活ではそれは全く活かされません。暑かったり寒かったり、目にしみたり、足がすくんだり、遠くから響いてきたり、美味しかったりと、五感や身体の全てを使って地球そのものに反応することが、もともとそういう生活を送っていた人間にとっての生命の喜びを思い出させてくれるものではないだろうか。頭も体も心も使う体験を提供して、それを思い出してもらいたい。そんなことを、彼の感想を読みながら考えています。(便利さと引き換えにそれを失っているとしたら、僕たちは一体なにをやってるんだろう?僕たちの社会が本当に大切にすべきものは、何なんだろう?)
そして自分の生命の喜びを思い出させてくれるものが地球そのものであると理解してこそ、自分たちが生態系の一部としてしか生きられないことを理解してこそ、人は地球や生態系に思いを馳せ、大切にできるんじゃなかろうか。誰一人取り残さずに持続可能な社会をと叫ばれる今、自然と人間の橋渡しをする僕たちが担ってる役割はここにある。そんなことを再認識させてもらう時間でした。
「折に触れて帰ってくる場所にしたい」と言ってくださった方もいました。
この硫黄島だけでなくて、日本中、世界中の自然が残されている多くの場所が、そう感じてもらえる場所になっていけばいいなあ、とそんなことを思っています。ジオパークのとりくみもその一つとして、広がっていけばいいなあ。