遠地地震波形を使った暫定解析結果を7月18日に本ページ上で発表いたしました。
発表当初、波形の残差や暫定余震分布結果を基に震源断層の断層面傾斜を南東と報告いたしましたが、その後の余震分布・地殻変動・近地地震波の解析から、北西であった可能性が出てきました。
震源断層のジオメトリと震源破壊過程について現在見直し作業を進めています。ご了承ください。
2007年7月16日10時13分(JST)に新潟県中越沖で気象庁マグニチュード6.8(暫定値)の地震が発生しました(図1)。遠地実体波を用いた震源破壊過程の解析結果を報告致します。
[画像:Fig1]
図1 本震の発生位置(赤星印)。黄及び紫星印は、2004年新潟県中越地震・2007年能登半島地震、
1964年新潟地震の震央をそれぞれ示す。赤実線及び黒点線は、活断層とプレート境界をそれぞれ示す。
・データ
IRIS広帯域地震計で記録された波形データ(47観測点)を使いました。観測点分布を図2に示します。
[画像:Fig2]
図2 解析で使用した観測点(黄三角印)の分布。
・解析結果
地震モーメント: ×ばつ10**19 Nm
モーメントマグニチュード: 6.6
断層のサイズ:30 km ×ばつ 25 km
深さ:13 km
(走向,傾斜角,すべり角):(56, 38, 93)
破壊継続時間:11 s
最大すべり量:1.4 m
遠地実体波の解析では、2004年新潟県中越地震、2007年能登半島地震と同様に、逆断型のメカニズムとなりました(図3右下図)。断層面の走向は北東方向、傾斜は東落ちで、東側(陸側)の岩盤が西側(海側)の岩盤に対してせり上がる断層運動により、長年蓄積されたひずみが開放されたと思われます(図4)。断層面におけるすべり分布は、破壊開始点付近とその南西側で大きい値を示しており(図3上図)、破壊開始から約10秒の間に地震波エネルギーの多くが放出されたようです(図3上図、左下図)。理論波形と観測波形の比較を図5に示します。
この地域はいわゆる新潟-神戸ひずみ集中帯に位置し、東西方向からの圧縮により北東−南西に走向を持つ褶曲構造が発達しています。震源断層の延長線上には1964年の新潟地震など大規模な地震が過去に発生しています。一連の大地震との関連性も含め、地震発生の詳細なメカニズムを調べるためには、今後現地での観測や近地データの解析が必要です。
[画像:Fig3]
図3 断層面上のすべり分布(上図)、震源時間関数(左下図)、メカニズム解(右下図)。
すべり量のコンターは0.2m毎に表示。
[画像:Fig4]
図4 地震発生メカニズムの概念図。
Fig5
図5 観測波形(黒線)と理論波形(赤線)の比較。(拡大)
(上記結果はその後の解析で変更されることがあります)