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[画像:トピックス]
2021年9月30日
気水圏研究グループの田村岳史准教授が、日本気象学会の2021年度堀内賞の受賞者に決定しました。堀内賞は、主に気象学の境界領域・隣接分野あるいは未開拓分野における調査・研究・著述等により、気象学あるいは気象技術の発展・向上に大きな影響を与えているもので、本受賞で対象となった研究は「海氷生産量のグローバルマッピングによる地球気候の研究」です。
海洋や大気の循環は、熱や物質を輸送します。また、海氷は、その生成・融解の過程で熱や物質を海洋や大気と交換する役割を果たしており、この海氷の動態と生産量を理解することは、気候変動の研究において重要です。
第58次南極地域観測隊に参加し、海氷観測を行った田村准教授(2016〜2017)
田村准教授は、これまで情報を得ることが困難だった海氷の厚さを推定するアルゴリズムを、衛星データおよび現地観測により開発しました。また、このアルゴリズムから世界で初めて海氷生産量のマッピングを行い、ヘリコプター観測やバイオロギングなど現地観測により精度の確認を行いました。このマッピングは、IPCCの評価報告書にも引用され、海洋物理学の著名な教科書Descriptive Physical Oceanography(Talley et al. 2011)にも紹介されています。
さらに、田村准教授による南大洋の海氷生産量のマッピングから、海氷生産量が2番目に多い海域が南極の昭和基地から東方1200kmにあることが示され、そこが海氷生成に伴う冷たく塩分の高い水(南極底層水)の生成域であることが示唆され、南極地域観測隊による集中観測により、南極底層水生成域が新たに発見されました。
これらの結果をもとに、海氷の生成・融解を考慮した海氷域での海面熱塩フラックスのデータセットを作成して海氷生産量のデータと合わせWeb上で公開しています。今までになかったこれらのデータセットは、海洋循環の理解や気候モデルの精度向上に貢献し、大気・古気候・海洋生物など様々な研究分野、様々な研究者に基礎パラメータとして広く使われ、海氷生産量のデータは多くの数値モデル研究に検証データとして利用されています。
今回、田村准教授による「大気-雪氷-海洋の相互作用に関わる研究」が気象学の研究を発展させ、気候変動における海氷の役割を明確かつ定量的に解明することとして高く評価され、堀内賞の受賞者として決定される至りました。表彰式は12月にオンラインで行われる予定です。