東京都伊豆大島の南方の海底には、大室ダシと呼ばれる直径約20�qの海底の台地があります(図1)。水深約100〜150mに平坦な頂きがあり、中央に大室海穴とよばれるくぼ地を持っています。
大室ダシは、もう噴火しない古い火山だと考えられてきたのですが、2007年にJAMSTECが行った調査により、現在も活動的な海底火山である可能性が出てきました。本当に? それをたしかめようと谷 健一郎 博士らが行った調査について報告します!
2012年7月20日〜8月4日にかけて海洋調査船「なつしま」による研究航海を行い、無人探査機「ハイパードルフィン」で、海底の観察、試料のサンプリング、温度の測定などをしました(写真1)。
また、シングルチャンネル地震波構造探査とマルチナロービーム海底地形調査を行って、海底地形や地質などを調べました(図2)。
大室ダシの北側には、玄武岩と呼ばれる鉄やマグネシウムを多くふくむ黒っぽい火山岩が多くみられました。一方東側には、流紋岩やデイサイトと呼ばれるケイ素を多くふくんだ白っぽい火山岩が多くみられました(写真2右)。複数の種類の岩石があったことから、大室ダシはマグマ組成や活動時期のちがういくつかの火山が重なり合ってできたと考えられます。
大室海穴のあたりでは、流紋岩質の溶岩や軽石が積もっていました(写真3)。溶岩や軽石とは、高温のマグマが噴火の際に海底に出てきてすばやく冷えかたまりできる岩石です。大室海穴で今回発見された流紋岩質の溶岩や軽石は、白っぽく石英や斜長石を多くふくんでいました。
流紋岩質の溶岩も軽石もまだ新しかったことから、大室海穴を中心として比較的最近、噴火が起こり、流紋岩質のマグマが海底に噴出してこれらの溶岩や軽石ができたと考えられます。
大室海穴の底部では熱水噴出孔
を発見し(写真4)、試料を採ることに成功しました(写真5)。熱水噴出孔から湧き出ていた熱水の温度は、最高で194°Cもありました(水圧が高い深海では、水は100°Cでは沸騰しません)。大室海穴の熱量も2007年の調査の時と同じように非常に高く、大室ダシの深部に熱いマグマが存在する可能性を示しました。
大室海穴を中心とした直径約8�qのくぼ地を発見しました(図3)。これは火山活動でできたカルデラの可能性があります。
過去に大室ダシが海底カルデラ噴火を起こした可能性があります(図4)。
浅海にある海底火山は、万が一、噴火するとマグマが海水にふれて爆発的な噴火を起こす恐れがあります。こうした災害リスクの評価
に、やくだてるため、谷博士は岩石を
分析してマグマの成分を調べたり、過去に噴火した年代を決めたりすることで、大室ダシの過去の噴火履歴や火山の発達過程を解明していきます。
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