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知ろう!記者に発表した最新研究

2012年 8月16日発表
海底に生きるカイコウオオソコエビが、木くずを食べていた!
すばらしい新セルラーゼも大発見!

世界で最も深いマリアナ海溝(かいこう)チャレンジャー海淵( かいえん)の海底(深度約10,900m)は、水圧は1,000気圧(陸上の1,000倍!)、真っくらで水温は2度、食べ物も栄養もとぼしいので、生物がくらすには極めて過酷(かこく)環境(かんきょう)です(図1)。


[画像:マリアナ海溝チャレンジャー海淵]

図1:マリアナ海溝チャレンジャー海淵

けれど1998年、無人探査機「かいこう」が、ヨコエビの仲間であるカイコウオオソコエビを大量に発見!!! そんなところでどうやって生きているのでしょう? それを明らかにするため小林 英城(こばやしひでき)博士(はかせ)が研究した結果をお知らせします!

生物が生きていくためには、食べ物から栄養を吸収(きゅうしゅう)して、からだをつくることが必要です。そのために、体内で食べ物を分解(ぶんかい)して生物が吸収できる栄養にかえる(生産する)ものを、消化酵素(しょうかこうそ)といいます(図2)。消化酵素には様々な種類があり、それぞれが決まったものを分解します。たとえば、人間がごはんを食べたら、消化酵素「アミラーゼ」がでんぷんを分解してグルコースなどを生産するのです。消化酵素は分解が終わっても元のままでいるので、次々に他のものを分解・生産していきます。

[画像:消化酵素]

図2:消化酵素



言いかえると、生物がどんな消化酵素を持っているのかを知れば、何を消化できるのか、つまり何を食べるのかがわかるということ。

そこで小林博士は、カイコウオオソコエビがマリアナ海溝の過酷な海底でどうやって生きているのかを知るため、消化酵素について調べました。

フリーフォール式のカメラ付き採泥システムとは、海の中を水深11,000mまで調査するシステムです(図3)。自分の位置を調べる 音響装置(おんきょうそうち)、観察をする水中カメラ、海底のどろを()るコアサンプラー(通称アシュラ)、生物を採るベイトトラップがついています。

[画像:フリーフォール式のカメラ付き採泥システム]

図3:フリーフォール式のカメラ付き採泥システム



ベイトトラップの中にはエサとしてサバを入れますが、カイコウオオソコエビがサバをたくさん食べると、分析(ぶんせき)結果がサバの影響(えいきょう)を受けてしまいます。そこで小林博士が考えたのが、ボール型の茶こしの中にサバを入れて、においを(ただよ)わせておびきよせる方法。これならサバは食べられません。その名も「おあずけサンプラー」!!

2009年、このシステムによりマリアナ海溝チャレンジャー海淵の10,890mの海底から、計185匹のカイコウオオソコエビ(図4)と海底下のどろを採ってきました。

[画像:カイコウオオソコエビ 体長は3〜5�p]

図4:カイコウオオソコエビ 体長は3〜5�p


カイコウオオソコエビを分析した結果、4種類の消化酵素を発見しました。セルロースを分解する「セルラーゼ」、でんぷんを分解する「アミラーゼ」、植物のセルロース以外の多糖類(たとうるい)であるグルコマンナンを分解する「マンナナーゼ」、そしてキシランを分解する「キシラナーゼ」です(図5)。いずれも、樹木(じゅもく)や植物にふくまれる成分を分解する消化酵素です。

[画像:樹木や植物にふくまれる成分を分解するカイコウオオソコエビの消化酵素]

図5:樹木や植物にふくまれる成分を分解するカイコウオオソコエビの消化酵素



海底で暮らしているのに、なぜ樹木や植物中の成分を分解する消化酵素が? そのカギは、海底下から採ったどろにありました。木くずが()ざっていたのです(図6)。

[画像:海底下から採った泥の中に混ざっていた木くず]

図6:海底下から採った泥の中に混ざっていた木くず



長い時間をかけて表層(ひょうそう)から海底に落ちてきたものと思われます。小林博士は「カイコウオオソコエビは、表層から海底に落ちてきた流木やかれ葉、タネなどを食べるから、それらを分解する消化酵素を持っているのでしょう」と話します(図7)。

[画像:表層から海底に落ちてくる樹木や植物が栄養源!]

図7:表層から海底に落ちてくる樹木や植物が栄養源!



小林博士は、消化酵素をさらに分析しました。その結果、カイコウオオソコエビのセルラーゼはこれまでにない新しい種類だったのです!

セルラーゼがセルロースを分解すると、グルコースが生産されます。これまでのセルラーゼでは、セルロースを真ん中から分解するので、グルコースが生産されるまでに他の酵素が必要でしたし、時間もかかりました。

けれど、カイコウオオソコエビのセルラーゼは、セルロースを「はしっこ」から分解するので、グルコースを簡単に生産できるのです(図8)。

1種類の消化酵素でセルロースを分解してグルコースを生産するのは、世界初!!!

[画像:新セルラーゼは、それだけでグルコースを直接生産!]

図8:新セルラーゼは、それだけでグルコースを直接生産!



おがくずやコピー用紙からだってグルコースを生産できます(図9)。

[画像:コピー用紙からグルコースを生産]

図9:コピー用紙からグルコースを生産

カイコウオオソコエビがマリアナ海溝の海底で生きぬく方法が明らかになるとともに、高いグルコース生産性を持つカイコウオオソコエビの新セルラーゼを発見しました。

グルコースはエタノールの原料であり、環境にやさしいバイオエタノールの生産に役立ちます。バイオエタノールは、現在はサトウキビなどから様々な酵素を使って時間をかけて生産していますが、新セルラーゼを使えば、木材や古紙から直接(ちょくせつ)生産できるので、電力も水も必要なく、効率(こうりつ)良く大量に安く生産できるかもしれません(図10)。

[画像:次世代バイオエタノール]

図10:次世代バイオエタノール


小林博士は、「新セルラーゼを使って『次世代バイオエタノール』につなげていきたい。そして、みなさんの生活、そして社会に役立てていきたい」と話します。

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