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知ろう!記者に発表した最新研究

2009年8月17日発表
地球深部探査船「ちきゅう」の研究成果のお知らせ!
紀伊半島沖から四国沖で地震(じしん)を起こすところ・分岐(ぶんき)断層(だんそう)は、195万年も前から活動していた!

地球深部探査船「ちきゅう」は、2007年9月から2008年2月にかけて和歌山県紀伊半島沖で掘削(くっさく)航海(こうかい)(ステージ1)を行いました。今回は、この成果のお知らせです。

紀伊半島沖から四国沖の海域(かいいき)で起きる巨大(きょだい)地震は、南海地震や東南海地震と呼ばれます。これらの巨大地震を引き起こすところ(震源(しんげん))は、海底下数kmの深いところにある巨大な「活断層(かつだんそう)」というところです。この活断層の一部には、分岐(ぶんき)断層と呼ばれる部分があります。

今回、この分岐断層のなりたちの歴史が明らかになりました。これまでの研究では、なりたちについてわかっていたのは数千年前まででした。ところが今回の発見によって、ここが地震を引き起こす活動を始めたのが、なんと195万年も前からだったことがわかったのです。


図1:日本列島の周りの大陸プレートと海洋プレート

地球の表面はプレートと呼ばれる何枚ものかたい岩の板におおわれています。このプレートは2種類に分けられ、人々の住む大陸プレートと海の下の海洋プレートとがあります。日本列島の周りでも大陸プレートと海洋プレートが見られます。特に、和歌山県紀伊半島沖ではプレート同士がぶつかりあっています(図1)。


この和歌山県紀伊半島沖を横から見ると、ぶつかりあうプレートの(はじ)と端が重なっています(図2)。そして、これらのプレートの境目から上に向かってすじが入ったようにひび割れている状態も見られます。


図2:分岐断層


図3:地層がずれているところ=断層
(プレートの境目そのものも、断層にあたります。)

この部分は分岐断層と呼ばれます。分岐とは枝分かれのことです。断層とは地層に力が加わってこわれ、このこわれた面にそって地層がずれている状態のことです(図3)。

つまり分岐断層は、プレートの端にひびが入り、地層がぐにっとずれている状態のことを指します。


これまでの研究から、東南海地震などの巨大地震の震源は、分岐断層とプレートの境目の断層の両方であることがわかりました。これらの断層が100〜200年おきに急にずれることによって、巨大地震がくり返し発生するのです。このように断層がずれて地震を引き起こすことを「断層が活動する」と表現し、活動する断層を「活断層」と呼びます。

断層の活動が引き起こす巨大地震や津波は、人々の生活に大きな影響(えいきょう)を与えます。特に分岐断層は、津波(つなみ)の発生に大きく関係すると考えられています。災害から人々を守るために、分岐断層を直接観測して調べることは大切です。

研究者はこの分岐断層についてくわしく知るために、この部分がいつどのようにしてできたのかを調べました。先ほどお話したように、分岐断層では地層がずれています。これはある時にこの断層が活動した(地震を引き起こした)ことを意味します。つまり、「断層がずれているところの地層の年代」がわかれば、「断層が活動した時期」がわかります。そこで研究者は、「ちきゅう」が取り出したこのずれている断層のサンプルを調べました。この中にふくまれていた物の種類やプランクトンの化石を分析(ぶんせき)して、地層がいつのものなのかを特定したのです。結果、最も古い地層は195万年も前のものだったことがわかりました。そして、 断層は下の表のような歴史をたどってその姿を変えてきました()。

時代 断層の動き
195万年前 断層の活動が始まった
155万年前から 断層が活発に活動をくり返し、現在の形に近づいた
(地層が動く回数が多くなって割れたりずれることが増えた)
124万年前から 分岐断層ができて現在のような状態になった
現在 南海地震が起きた(1946年)
東南海地震が起きた(1944年)

表:断層の動きの歴史

この分岐断層の活動は現在も続いており、近い将来に巨大地震が発生すると予測されています。

これからも、分岐断層などの地震・津波を起こす断層をさらにくわしく研究していく予定です。巨大地震を引き起こした断層はどのようなものか、地震直後からどのようにして次の地震への準備がなされていくのか、などを明らかにします。研究が進めば、地震から人々の生活を守ることにつながるでしょう。それを目指して、研究者は今日も「ちきゅう」の船上で地層や断層を調べています。

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