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知ろう!記者に発表した最新研究

2009年6月2日発表
インドと中国では、夏にふる雨の量が減った!

アジアの気象に大きな影響(えいきょう)を与えるとして、古くから重要視されてきたアジアモンスーン。その動きや雨の量のうつり変わりを調べたところ、18世紀から19世紀を境に、インド亜大陸と中国東部の地域(ちいき)では夏の雨の量が減ったことがわかりました。理由は、この時期にたくさんの森を切り(ひら)いたために、アジアモンスーンのインド亜大陸の()きぬけ方が変わったからです。

人間の活動によって気候が変わり始めた時期は、これまでは工場やビルなどがたくさん建てられた19世紀ごろと考えられていました。ところが実は、それよりも100年も前である18世紀からだったことが明らかになったのです。


図1:夏のアジアモンスーンを作り出す空気の動き

風とは地球を取りまく空気の流れです。様々な種類の風がある中で、季節によって吹いてくる方向が変わる風を季節風(モンスーン)と言い、特にアジア地域で吹くものをアジアモンスーンと呼びます。この風は、日本付近では夏は南西から、冬は北東から吹きます。季節によって吹いてくる方向が変わる理由は、海と大陸の気温の差です。夏の間、大陸は海よりもあたたかくなります(図1)。



図2:夏のアジアモンスーンの吹きぬける方向

このあたたかい大陸によって大陸の上の空気はあたためられ、軽くなって空にのぼります。すると、この分をおぎなうために大陸に向かって海からしめった風が吹きこみます。これに地球の自転の力も加わって吹く方向が少し曲がり、アジアモンスーンは遠くはなれたアラビア海からインドやインドシナ半島を吹きぬけて、中国や日本までやって来るのです(図2)。反対に、冬の間は海が大陸よりもあたたかくなるので、夏とは逆の流れになります。


夏のアジアモンスーンは雨の量と強く関係します。海から大陸に向かって吹く時に海の水もいっしょに吹きこみ、この水分によって作られた雲が雨がふらせるからです。インドでは、一年間にふる雨の量の90%がこの夏にふるほど。ですから、アジアモンスーンの様子が変わると雨の量も変わり、気候は大きな影響を受けます。特にアジアは世界の人口のおよそ半分が住んでいるため、アジアモンスーンのうつり変わりをくわしく知ることはとても大切です。

一方、18世紀から19世紀にかけて畑などを作るために森が切り拓かれて、アジアでは土地の様子が大きく変わりました。これによってアジアモンスーンの動きと雨の量はどのように変わったのかを、研究者は調べました。


図3:森が減る前

その結果、インド亜大陸と中国東部では雨の量が10%から30%減ったことがわかりました。理由は、森が作っていた表面のデコボコが減ったためです。森が切り拓かれる前は、アジアモンスーンの速さは森のデコボコによって弱まっていました(図3)。

このためアジアモンスーンが海から運んでくる水は、森のあるインド亜大陸でとどまりやすく、また森の持つ水と一緒に蒸発(じょうはつ)して大きな雲を作り雨をたくさんふらせていました。



図4:森が減った後

ところが森が少なくなった後、インド亜大陸はなだらかになりアジアモスーンはそのまま速く通りすぎるようになったのです(図4)。


このため、海からの水もインド亜大陸を通りすぎ、森の持つ水も減った結果、雲の量が減って雨も少なくなりました。

地球の気候が変わっていく理由の1つに、私たち人間が()らしやすい世界を作ろうと森を切り拓いたことも大きいことがわかりました。将来地球がどうなっていくのか、私たちはこれからもさらにくわしく研究していきます。

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