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プレスリリース


ジュニア向け解説

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[画像:プレスリリース] [画像:プレスリリース]

2009年9月3日
独立行政法人海洋研究開発機構

統合国際深海掘削計画(IODP)
地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画
〜第319次研究航海(平成21年度第1次・第2次研究航海)の結果について〜

1.概要

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)の運用する地球深部探査船「ちきゅう」は、本年5月10日より、統合国際深海掘削計画(IODP)((注記)1)による「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(南海掘削:NanTroSEIZE)((注記)2)ステージ2を紀伊半島沖熊野灘にて実施していましたが、8月31日にIODP第319次研究航海(平成21年度第1次および第2次研究航海)を終了しましたので、その結果概要をご報告します。

2.実施内容

平成21年度第1次研究航海では、 5月10日から7月31日までの83日の間に、巨大地震発生帯直上域においてIODP初のライザー掘削((注記)3)を実施し、海底下約1,500m以深の岩石試料を採取すると共に、各種物理検層を実施しました。平成21年度第2次研究航海では、8月1日から31日までに、地震発生帯から延びる巨大分岐断層浅部をライザーレスによる掘削同時検層(LWD: Logging While Drilling)((注記)4)を実施しました。また、将来予定されている長期孔内計測装置設置のための準備を行いました。

本研究航海における共同首席研究者は、荒木 英一郎(海洋研究開発機構・技術研究主任)、Timothy Byrne (米国コネチカット大学・教授)、Lisa McNeill (英国サザンプトン大学・准教授)、Demian Saffer (米国ペンシルバニア州立大学・准教授)が務め、8カ国・計26名の科学者が交代で乗船し研究を実施しました。

3.結果概要

第319次研究航海では、南海トラフの巨大地震発生帯直上域(掘削地点C0009, NT2-11)と地震発生帯から延びる巨大分岐断層浅部(掘削地点C0010, NT2-01)、沈み込む前のトラフ底堆積層(掘削地点C0011, NT1-07)の3地点(図1参照)で掘削を実施し、掘削地点C0009において海底下1,510-1,593.9mの区間で、57.87mの柱状地質試料(コア)の採取に、また、他の2地点において掘削同時検層による孔内物性データの取得に成功しました。各掘削孔の実績概要は表1の通り。

本研究航海の主な成果は以下の通りです。

(1) 掘削地点C0009において、IODP初のライザー掘削により海底下1,603.7mまでの掘削を行うと共に、ライザー掘削機能を駆使し、地震発生帯研究のための新たな各種計測に挑戦しました。地震発生帯直上域の岩石層の掘削、コア採取、掘削孔壁の保護(ケーシング)を含む、計画していた科学的・技術的な目標を達成し、掘削孔直下のプレート境界断層付近の構造についても孔内地震波探査(VSP: Vertical Seismic Profiling)による詳細なデータを得ることができました。また、将来の長期孔内計測装置設置のための準備を行いました。
1. IODP初の作業として、ライザー掘削の特徴であるカッティングス(掘り屑)や、泥水に含まれるガスを船上においてリアルタイムで分析しました。
2. ワイヤーライン検層により、孔内の各種物性・孔壁画像を取得しました。また、孔内に降下した地震計群を用いて、地震を発生させる断層のより具体的なイメージを得ました。
3. 本航海では、掘削孔内で地殻応力および間隙水圧の測定に12回成功しました(写真1)。これらのデータは地震断層周辺の環境研究に重要な役割を果たすものであり、沈み込み帯の断層における地震に関する理解が一層深まる事が期待されます。
4. 「ちきゅう」と深海調査研究船「かいれい」二船を用いた孔内地震波探査(VSP)を実施し、「ちきゅう」から孔内に仮設置した地震観測センサーを用いて、孔井下に位置する地震発生断層を含む詳細なプレート境界の構造の推定を目指しました。「かいれい」からエアガンで地震波を発振し、断層域からの地震波を掘削孔内のセンサーではっきりと観測することができました。この孔内地震波探査から得られる知見により、掘削可能深度を超えた地震発生断層の研究が可能となります。
5. 本掘削孔の研究により、掘削された上部プレートでの圧縮応力の向きは、沈み込むプレートの方向と一致していることが明らかとなりました。ただし、分岐断層の直上では、狭い範囲でこの方向に変化が見られました。また、微化石やカッティングスから推定された地質年代から、巨大地震発生帯の形成史および活動史について新たな知見を得ることが期待できます(写真2)。
(2) 掘削地点C0010においては、津波発生に関する主要な断層であり、過去の巨大地震において地滑りを発生させてきたと考えられる巨大分岐断層を、海底下約400mで貫通しました。本掘削孔では、この場所から掘削同時検層(LWD)により岩石物性を計測し、地層に見られる応力に関する情報を取得しました。その後、掘削孔壁の保護(ケーシング)を行い、将来の長期孔内計測の実施に向けて、試験編成の降下試験や簡易測定器の孔内設置を行いました。

4.今後の行動予定

現在「ちきゅう」は四日市港で乗船研究者の交代および資機材の積み込みを行っています。9月4日に四日市港を出港し、IODP第322次研究航海(平成21年度第3次研究航海)として、引き続き10月10日頃まで掘削地点C0011においてライザーレス掘削を実施する予定です。共同首席研究者は、斎藤実篤 (海洋研究開発機構・南海掘削研究チームリーダー)およびMichael Underwood (米国ミズーリ大学・教授)で、9カ国・計27名の科学者が乗船し、研究を行います。本研究航海は、地震発生帯に運び込まれる物質の初期状態の解明を目的とし、全層の試料採取及び検層により堆積物の組成・構造・物理特性のデータを取得する予定です。

((注記))なお、上記の予定は海気象状況、地質状況等によって変更することもあります。

(注記)1 統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)

日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧州、中国、韓国、豪州、インド、NZの24ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行います。

(注記)2 南海トラフ地震発生帯掘削計画(南海掘削:NanTroSEIZE)

南海トラフは、日本列島の東海沖から四国沖にかけて位置するプレート沈み込み帯で、地球上で最も活発な巨大地震発生帯の一つ。南海トラフの一部にあたる紀伊半島沖熊野灘は、東南海地震等の巨大地震震源と想定される領域の深さが世界のプレート境界のなかでも非常に浅く、「ちきゅう」による掘削が可能な海底下6,000m程度であるという特徴を有しています。

南海掘削では、プレート境界断層および津波発生要因と考えられている巨大分岐断層を掘削し、地質試料(コア・サンプル)の採取や掘削孔内計測を実施することにより、プレート境界断層内における非地震性すべり面から地震性すべり面への推移及び南海トラフにおける地震・津波発生過程を明らかにすることを目的としています。

本計画は、全体として4段階(ステージ)に分けて掘削する計画で、紀伊半島沖熊野灘において南海トラフに直交する複数地点を掘削する予定。第1ステージは平成19年9月21日から平成20年2月5日まで実施しました。

(注記)3 ライザー掘削

「ちきゅう」と海底の掘削孔を連結したパイプ(ライザーパイプ)の中をドリルパイプが通る二重管構造での掘削方法。ライザーパイプとBOP(噴出防止装置)を用いて、海上での泥水循環掘削(泥水で孔壁を保護し、地層圧力とバランスを取りながら行う掘削)を行うことで、掘削孔の崩れを防ぎ、より深くまで安定して掘削することを可能とします。

(注記)4 掘削同時検層(LWD: Logging While Drilling)

ドリルパイプの先端近くに各種の物理計測センサーを搭載し、掘削作業と同時に現場での地層物性の計測を行う技術です。地質試料の採取はできませんが、掘削箇所の地層状況を"現場"で連続測定することにより、比較的短時間に地質情報を得ることができます。これらにより、科学情報と共にその後の試料採取掘削等に有用な掘削孔の安全監視及びリスク回避等の情報が得られるため、南海トラフのような複雑な地質構造での掘削には非常に有効です。今回取得したデータは、比抵抗、地層密度、孔隙率、音波速度、自然ガンマ線、流体圧、孔井傾斜など。

【表1 掘削実績】
掘削提案地点名
(*1)
NT2-11 NT2-01 NT1-07
掘削地点名
(*2)
C0009 C0010 C0011
掘削孔名 A A A
掘削の種類 ライザー掘削 ライザーレス掘削 ライザーレス掘削
経度
(北緯)
33° 27.5’ 33° 12.6’ 32° 49.7’
緯度
(東経)
136° 32.1’ 136° 41.2’ 136° 52.9’
日数 83.0 24.5 6.5
水深
(海面下 m)
2054.0 2523.7 4049.0
掘削深度
(海面下 m)
1603.7 555.0 952.2
掘削作業
  • 全長57.87mのコア採取:
    (海底下1509.7m〜1593.9mの区間)
  • ケーシング
  • 採掘同時検層(LWD)を利用した掘進
  • ケーシング
  • 採掘同時検層(LWD)を利用した掘進
計測作業
  • コア分析
  • カッティング分析
  • ガスモニタリング
  • ワイヤーライン検層
  • 孔内地殻応力
  • 間隙水圧計測
  • 孔内地震波探査(二船利用)
  • 採掘同時検層(LWD)
  • 長期孔内計測の準備:
    試験編成の降下試験
    簡易測定器の孔内設置
  • 採掘同時検層(LWD)

(*1)掘削提案地点名:事前に掘削を予定していた候補地点の名称
(*2)掘削地点名:実際の掘削後にIODP掘削孔として時系列に付けられた名称


【図1】調査海域図

【写真1】孔内地殻応力・間隙水圧計測ツールを降下する様子

【写真2】船上の研究ラボでコアから研究用サンプルを採取する乗船研究者

お問い合わせ先:

独立行政法人海洋研究開発機構
(本研究について)
地球深部探査センター 企画調整室長 山田 康夫 TEL: 045-778-5640
(報道担当)
経営企画室 報道室長 中村 亘 TEL: 046-867-9193

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