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プレスリリース


[画像:プレスリリース]

2008年06月25日
独立行政法人海洋研究開発機構

地球深部探査船「ちきゅう」のアジマススラスター・ギアの損傷の
対策と今後の予定について

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)の運用する地球深部探査船「ちきゅう」について、本年2月から4月にかけて佐世保重工業(株)佐世保造船所において実施した中間検査工事及び保守・点検・整備・改良工事の際、アジマススラスター(船位保持のための360°回転可能な推進機:図-1参照)の3基のギアの歯車の歯の一部に破損及び亀裂が発生していることが判明しました。

これを受け、当機構で、原因究明と対策について外部専門家も交えて検討を進めてきた結果、このたびの損傷は、ギアの設計・製造、ギアの素材ならびにギアのスラスターへの組立て・調整の工程における複数の要因によって発生したことが判明しました。この対策として、ギアの素材の品質の向上、安全性を高めた設計、それに基づく製造ならびに慎重な組立て・調整が必要と判断しました。このため、現在使用しているギア全て(6基)を新たに製作するギアに交換することとしました(別添)。修復は、来年1月までに終え、その後、「ちきゅう」は紀伊半島沖の熊野灘において試験掘削等を実施し、IODP((注記)統合国際深海掘削計画)によるライザー掘削を開始する予定です。

(注記):統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)

日・米を主導国とし、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧、中、韓の21ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行います。

別添

ギアの損傷原因と修復対策について

技術アドバイザーの助言を得ながらギアの損傷原因の解析を行い

  • ホイールの歯元に垂直シャフト側(ピニオン)の歯先が接触することなどによるギア表面からの亀裂発生
  • 浸炭焼入れ深さ不足等による内部せん断応力に対する強度不足あるいはギア内部に介在する不純物によるギア内部からの亀裂発生
に絞り込みました。

これに対し、可能性の残る要因を包括的にカバーするように

  • ピニオンの歯先の接触が生じないように歯形修整および歯の角を丸める
  • 歯当たりが適切なものになるような取り付け時の慎重な組立て・調整
  • ギア内部のせん断応力を下げ、内部強度を上げるような設計変更
  • 浸炭焼入れ深さを増すための製造法の改良
  • 不純物の介在を低下させるような素材の品質向上
の対策を施すこととし、現在使用しているギア全て(6基)については、設計変更して新たに製作するギアに交換することとしました。


アジマススラスターの一部損傷について(参考)

「ちきゅう」は、大水深海域の掘削をするために必要となる洋上の定点保持機能として、コンピューターによりスラスター推力の大きさと方向を制御する自動位置保持システム(DPS)を採用しています。これに用いるスラスターとしては、世界的に多くの実績にあるアジマススラスター(プロペラの直径3.8m)を採用し、船底の船首側に3基、船尾側に3基の計6基を配置しています。

図−1 アジマススラスター

図−1の赤枠の部分が、今回、損傷が発見されたベベルギア(回転方向を直角に曲げるときに使うギア)です。垂直シャフトの回転を、プロペラと連結する水平シャフトに伝えるためのもので、垂直シャフト側(ピ二オン)と水平シャフト側(ホイール)のギアで構成されています。


写真-1 ホイールギア

全6台のホイールギア(写真−1)のうち、3台のホイールギアの一部に異常が認められ、そのうち、1セットのべベルギアは予備品と交換しました。(写真−2)
なお、今回のアジマススラスターの開放点検は、完成引き渡し後(平成17年7月)、初めての検査でした。 「ちきゅう」のギアの材質は、ニッケルクロムモリブデン鋼鍛鋼材を、ギア表面の硬度を高めるために浸炭焼入れをしています。


写真-2 ホイールギアの歯こぼれ部拡大



お問い合わせ先:

独立行政法人海洋研究開発機構
(アジマススラスター・ギア損傷の原因・対策及び今後の予定について)
地球深部探査センター
企画調整室長 田中 武男 TEL:045-778-5640
(報道について)
経営企画室
報道室長 村田 範之 TEL:046-867-9193

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