このウェブサイトではJavaScriptおよびスタイルシートを使用しております。正常に表示させるためにはJavaScriptを有効にしてください。ご覧いただいているのは国立国会図書館が保存した過去のページです。このページに掲載されている情報は過去のものであり、最新のものとは異なる場合がありますのでご注意下さい。

ご覧いただいているのは国立国会図書館が保存した2021年10月16日時点のページです。このページに掲載されている情報は過去のものであり、最新のものとは異なる場合がありますのでご注意下さい。収集時のURLは http(s)://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20071101 ですが、このURLは既に存在しない場合や異なるサイトになっている場合があります。

(注記)このページの著作権について

ヘルプ


保存日:

ヘルプ


保存日:

ご覧いただいているのは国立国会図書館が保存した2021年10月16日時点のページです。このページに掲載されている情報は過去のものであり、最新のものとは異なる場合がありますのでご注意下さい。収集時のURLは http(s)://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20071101 ですが、このURLは既に存在しない場合や異なるサイトになっている場合があります。

(注記)このページの著作権について

プレスリリース


[画像:プレスリリース]

2007年11月1日
独立行政法人海洋研究開発機構

伊豆・小笠原海域における地殻生成に関する新しい発見
〜我が国の大陸棚延伸に関する科学的根拠〜

概要

海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)地球内部変動研究センターは、平成16年度及び平成17年度に実施した伊豆・小笠原海域における地殻構造探査((注記)1)の解析結果から、伊豆・小笠原弧((注記)2)はその大部分が海底下であるにもかかわらず、そこに存在する火山(海底火山を含む)が大陸的な地殻を生成していることを初めて解明しました。この成果は大陸棚延伸の申請において、重要な科学的根拠となることが期待されます。なお、この結果は、11月1日(日本時間)に米国科学誌Geologyに掲載されます。

背景

大陸的な地殻の存在や日本領土からの連続性などの地質学的知見は、大陸棚延伸を主張する上で重要な科学的根拠となりますが、日本周辺海域、特に南方海域では、これまで十分な地殻構造調査が行われておらず、大陸地殻((注記)3)の存在の有無やその分布範囲についての情報は得られていませんでした。

内容

(1)方法
調査期間:
平成16年7月8日〜7月28日及び、平成17年7月8日〜8月1日
調査場所:
相模湾から北硫黄島北方にいたる約1000 kmの測線(図1)
調査方法:
海洋調査船「かいよう」(写真1)を用いて、213点の観測点に海底地震計(写真2)を設置し、大容量エアガン(写真3)を用いて海面で音波を発振。地殻やマントルを通って海底地震計に記録されたデータを解析し、海底下の音波速度分布を通して、地殻やマントルの内部構造を調査。

図1.調査測線図。黒線及び青線に沿った地下構造探査を2004年、2005年に実施。

写真1:海洋調査船「かいよう」。両舷にそれぞれエアガンを4機ずつ備える。

写真2:海底に設置された海底地震計。


写真3:エアガン装置。左は、水中で音波を発振している様子。右は、エアガンを投入している作業風景。黒い長いものはフロート、フロートの下に吊られている2本の銀色の筒がエアガン装置。


(2)結果

相模湾から北硫黄島北方にかけての南北に直線状に存在する火山列直下の地下構造を深さ約35kmまで明らかにし(図2)、以下の新しい知見が得られました。

  1. 大陸的な地殻を構成する主要要素である、花崗岩質・安山岩質の地殻が火山列全体に沿って、日本列島から1,000km以上連続的に存在している。
  2. その厚さは火山列に沿って大きく変動しており、火山の直下で極大値を取る。すなわち、火山を中心に大陸的な地殻が生成されている(図2)。
  3. 相模湾から鳥島にかけての地殻は厚いが、鳥島から北硫黄島北方にかけての海底火山下の地殻は薄い。しかしながら、その地殻の構成は火山の規模に関わらず典型的な大陸地殻と類似している(図3)。
  4. 地殻とマントルとの境界には、大陸的な地殻の生成時に作られたと考えられる地殻・マントル混合層が存在する。従って、厳密な意味で典型的な大陸地殻と同一な構造とするためには、この地殻・マントル混合層はマントル内に戻る必要がある(図2,3)。

以上の結果から、伊豆・小笠原弧に存在する火山列はその規模の大小に関わらず大陸的な地殻を生成する場(工場)として存在していると結論付けました。

図2.相模湾から北硫黄島北方にかけての地下構造断面。A.地下構造探査によって得られた地震波伝播速度構造。B.地質学的解釈図。C.地下構造探査によって得られた構造から計算された大陸的な地殻の厚さ。火山の直下で最も厚くなっているのが分かる。

図3.典型的な大陸地殻と伊豆、小笠原弧の火山直下の構造の比較。青ヶ島(伊豆弧)と水曜海山(小笠原弧)の地殻構造要素は典型的大陸地殻と類似していることが分かる。青ヶ島の地殻が今後150%成長すると典型的な大陸地殻と類似した地殻になる。ただし、厳密な意味で典型的な大陸地殻と同一な構造とするためには、地殻とマントルの境界部に存在する「地殻・マントル混合層」はマントル内に戻る必要がある。


今後の展開と大陸棚延伸に対する意義

今後は、伊豆・小笠原弧横断方向への大陸的地殻の広がりを詳細に把握するため、複数の測線の結果を統合し大陸的地殻の3次元的分布を明らかにする予定です。また、地球深部探査船「ちきゅう」を用いるなどにより、火山周辺を含んだ複数の地点を掘削し地殻を構成する岩石を実際に手にすることができれば、その組成等の分析を通じて伊豆・小笠原弧での大陸地殻構造を検証できる可能性も考えられます。

本研究の成果は、伊豆・小笠原弧から延びる火山列を起点として大陸棚延長を主張する上で重要な地質学的根拠をもたらしました。また、伊豆・小笠原弧から分裂して形成された九州・パラオ海嶺も同様に大陸的な地殻が存在することを示唆し、九州・パラオ海嶺を起点とする大陸棚延長の地質学的根拠にも成り得るものです。これらの地質学的知見は、海底地形データと合わせ、四国海盆域および小笠原東方域への大陸棚延伸に関する有力な根拠となると考えられます。

注記説明

((注記)1)
「大陸棚調査に関する関係省庁連絡会議」(現在は「総合海洋政策本部幹事会」が継承)により平成15年8月に策定された「大陸棚画定に向けた今後の基本的な考え方」(平成16年8月以降は「大陸棚画定に向けた基本方針」)に基づき、平成16年度から「大陸棚画定調査に資する地殻構造探査」として実施。
((注記)2)
伊豆半島から南方に連なる全長1200kmの弧状の火山列。大島、利島、新島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、鳥島、孀婦岩までの伊豆諸島、小笠原群島、及び、西ノ島、北硫黄島、硫黄島、南硫黄島などの火山列島から構成される。地球科学的には太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込むことによって形成されたと考えられている。
((注記)3)
大陸地殻は、その内部に花崗岩や安山岩といわれる比較的軽い岩石を多量に含み、通常35 km 以上の厚い地殻である。一方、海洋地殻の内部は大陸地殻に見られる花崗岩や安山岩よりも重い玄武岩質の岩石で構成されており、通常6 km 程度の薄い地殻である。

お問い合わせ先

(研究内容について)
地球内部変動研究センター
プレート挙動解析研究プログラム グループリーダー 小平 秀一
TEL:045-778-5438
研究推進室長 柴田 桂
TEL:046-867-9590
(報道について)
経営企画室 報道室長 大嶋 真司
TEL:046-867-9193

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /