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2007年11月1日
独立行政法人海洋研究開発機構
海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)地球内部変動研究センターは、平成16年度及び平成17年度に実施した伊豆・小笠原海域における地殻構造探査(※(注記)1)の解析結果から、伊豆・小笠原弧(※(注記)2)はその大部分が海底下であるにもかかわらず、そこに存在する火山(海底火山を含む)が大陸的な地殻を生成していることを初めて解明しました。この成果は大陸棚延伸の申請において、重要な科学的根拠となることが期待されます。なお、この結果は、11月1日(日本時間)に米国科学誌Geologyに掲載されます。
大陸的な地殻の存在や日本領土からの連続性などの地質学的知見は、大陸棚延伸を主張する上で重要な科学的根拠となりますが、日本周辺海域、特に南方海域では、これまで十分な地殻構造調査が行われておらず、大陸地殻(※(注記)3)の存在の有無やその分布範囲についての情報は得られていませんでした。
図1.調査測線図。黒線及び青線に沿った地下構造探査を2004年、2005年に実施。
写真1:海洋調査船「かいよう」。両舷にそれぞれエアガンを4機ずつ備える。
写真2:海底に設置された海底地震計。
写真3:エアガン装置。左は、水中で音波を発振している様子。右は、エアガンを投入している作業風景。黒い長いものはフロート、フロートの下に吊られている2本の銀色の筒がエアガン装置。
相模湾から北硫黄島北方にかけての南北に直線状に存在する火山列直下の地下構造を深さ約35kmまで明らかにし(図2)、以下の新しい知見が得られました。
以上の結果から、伊豆・小笠原弧に存在する火山列はその規模の大小に関わらず大陸的な地殻を生成する場(工場)として存在していると結論付けました。
図2.相模湾から北硫黄島北方にかけての地下構造断面。A.地下構造探査によって得られた地震波伝播速度構造。B.地質学的解釈図。C.地下構造探査によって得られた構造から計算された大陸的な地殻の厚さ。火山の直下で最も厚くなっているのが分かる。
図3.典型的な大陸地殻と伊豆、小笠原弧の火山直下の構造の比較。青ヶ島(伊豆弧)と水曜海山(小笠原弧)の地殻構造要素は典型的大陸地殻と類似していることが分かる。青ヶ島の地殻が今後150%成長すると典型的な大陸地殻と類似した地殻になる。ただし、厳密な意味で典型的な大陸地殻と同一な構造とするためには、地殻とマントルの境界部に存在する「地殻・マントル混合層」はマントル内に戻る必要がある。
今後は、伊豆・小笠原弧横断方向への大陸的地殻の広がりを詳細に把握するため、複数の測線の結果を統合し大陸的地殻の3次元的分布を明らかにする予定です。また、地球深部探査船「ちきゅう」を用いるなどにより、火山周辺を含んだ複数の地点を掘削し地殻を構成する岩石を実際に手にすることができれば、その組成等の分析を通じて伊豆・小笠原弧での大陸地殻構造を検証できる可能性も考えられます。
本研究の成果は、伊豆・小笠原弧から延びる火山列を起点として大陸棚延長を主張する上で重要な地質学的根拠をもたらしました。また、伊豆・小笠原弧から分裂して形成された九州・パラオ海嶺も同様に大陸的な地殻が存在することを示唆し、九州・パラオ海嶺を起点とする大陸棚延長の地質学的根拠にも成り得るものです。これらの地質学的知見は、海底地形データと合わせ、四国海盆域および小笠原東方域への大陸棚延伸に関する有力な根拠となると考えられます。