プレスリリース
2007年06月29日
独立行政法人海洋研究開発機構
海洋研究開発機構とチリ コンセプシオン大学が共同研究協定を締結
海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)とチリ共和国のコンセプシオン大学※(注記)1は、国際共同研究に関する実施協定を下記の通り、本日締結しました。
本協定では、チリ沿岸海域における研究を主な対象としています。この海域は、フンボルト海流※(注記)2などにより生物生産性が高く生物地球化学的炭素循環において世界で最重要な海域であり、また、過去においては、パタゴニア氷床※(注記)3の融解といった陸域の変化が海洋環境変動に影響をおよぼした形跡のある海域です。この海域で採取される試料の古気候(こきこう)・古海洋(こかいよう)記録を解析することで、過去におきた地球規模の気候変動とその影響についての理解が可能となります。
本協定締結後は、南半球チリ沿岸海域の基礎研究により、すでに当機構で実施している北太平洋を中心とした古海洋研究との比較解析が可能となり、気候変動の周期性やそのメカニズムの理解、気候変動が生態系に及ぼす影響など、基礎科学研究の更なる発展が期待されます。
記
- 1.共同研究協定の名称:
- 「チリ沿岸域における古海洋・海洋物理に関する基礎的研究」
- 2.締結者:
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海洋研究開発機構 理事 今村 努
コンセプシオン大学 学長 Mr. Sergio Lavanchy Merino
(セルジオ ラバンチィ メリノ)
- 3.協定内容について:
以下の主要課題について研究協力を行う。
-
- (1)
- 高時間分解能によるチリ沿岸域における環境変動の復元
(海底堆積物を採取し、古環境を知る指標の測定を行い、水温や塩分、栄養塩環
境などの環境変動を詳細に復元)
- (2)
-
チリ沿岸域及び周辺大陸における現代気候/季節の年、十年変動に関する情報収集
- (3)
- 数十年から100年単位で変化する気候変動メカニズムの解析
(北半球全域で寒冷化と温暖化を繰り返す現象と南半球での現象との比較)
- (4)
- 南極オーバーターン※(注記)4による熱・物質輸送の評価とその長期変動の解明
- 4.協定期間:
- 平成19年6月29日から平成22年3月31日(約2年9ヶ月間)
(解説)
- ※(注記)1
- コンセプシオン大学:1919年に設立されたチリで最初の地方大学。人文科学の専門教育のみならず、国家の発展のため、科学、文学、哲学といった様々分野の情報発信拠点となることを目的として設立された大学。
- ※(注記)2
- フンボルト海流:南アメリカ大陸西岸に沿って南極海よりチリ沖を北上する寒流。栄養塩を多く含んでいるため、プランクトンの繁殖が盛んな環境にある。
- ※(注記)3
- パタゴニア氷床:最終氷期最寒冷期(約2万年前)にパタゴニアで発達した氷床。最終氷期後の地球規模で生じた融氷期(約1.5万年前)に同氷床も崩壊し、チリ南方沖に大量に淡水を供給することとなった。
- ※(注記)4
- 南極オーバーターン:海洋大循環が、南極周辺で冷却され沈み込み、南極中層水や深層水として太平洋・インド洋など、世界中の大洋に戻って行く水塊の輸送。