日本の石

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「ひすい」を我が国の「国石」として選定

2016年11月07日 update
一般社団法人日本鉱物科学会
会長 土`山 明
本件問合せ先⇒

日本鉱物科学会は社団法人化の記念事業の一環として,日本の石すなわち「国石」の選定事業を進めてきましたが,2016年9月24日の総会で「ひすい (ひすい輝石およびひすい輝石岩)」を国石として選定しました


日本で広く知られて,国内でも産する美しい石であり,鉱物科学のみならず様々な分野でも重要性を持つものを,「国石」として 選定することにより,私たち日本人が立っている大地を構成する石について,自然科学の観点のみならず社会科学や文化・芸術の観点からも その重要性を認識するとともに,その知識を広く共有したいと考えました。「岩石」と「鉱物」は学術的に明確に定義され区別されますが (注1) ,一般的に「石」と親しまれるこれら地質の基本となる物質についてあえて区別せず,日本人として分かりやすく呼びやすい 「国石」を定めることとしました。

このために,国石の条件として以下の項目を設定しました

(1)日本で広く知られている, 国産の美しい石であること。

(2)鉱物科学や地球科学の分野はもちろん,他の分野でも世界的な重要性を持つこと。また,必須ではないが,望ましい項目として,以下を設定しました。

(3)長い時間,広い範囲にわたって日本人の生活に関わり,利用されていること。

(4)その石の産出が現在まで継続し,野外で見学できること。

(5)野外での見学が,法律による保護などによって持続可能であること。

このような条件を最も満足する石を,2016年9月24日に金沢大学で開催された総会において,会員の投票により選びました。 事前に会員だけでなく一般の方からのコメントも参考にして選ばれた 5つの候補(写真1⇒ 写真2⇒ ),「花崗岩(花崗岩質岩およびそのぺグマタイト)」「輝安鉱」「自然金」「水晶(日本式双晶,瑪瑙,玉髄,碧玉を含む)」「ひすい(ひすい輝石およびひすい 輝石岩)」について投票をおこないました(注2) 。1回の投票では過半数に満たなかったので,上位2候補(「ひすい」と「水晶」)について決選投票をおこない,「ひすい」を国石として選びました(注3, 注4 )

「ひすい(ひすい輝石およびひすい輝石岩)」について

ひすい輝石やこの鉱物からなるひすい輝石岩は,日本列島のようなプレート収束域(沈み込み帯)の冷たい地温勾配の環境下でのみ形成されると考えられ 1) ,特に細粒でやや透明感をもったひすいは宝石として 高い価値を持ちます。ひすいの産出は約5.5億年前より若い時代の蛇紋岩分布地域に限られ,藍閃石片岩や超高圧変成岩と同様,地球の冷却を示す岩石の一つです。 ひすいを敲(たたき)石として使ったものが,糸魚川市の大角地(おがくち)遺跡から発見され,縄文時代前期前葉の利用例として知られています。縄文時代に国内で加工された大珠は人類初のひすい加工の証であり,以後奈良時代まで利用された勾玉と共に日本史で重要な石であります。その後,日本からのひすいの産出は忘れ 去られますが,1938年に新潟県でひすいが再発見され,翌年に学術論文として公表されます2) 。そして現在では,新潟県糸魚川市をはじめ兵庫県養父市,鳥取県若桜町,岡山県新見市,長崎県長崎市など日本各地において 野外で観察できるとともに,法律により保護されているところもあります。ひすいの名は一般の人にも広く知られており、まさしく日本のシンボルであり,国石 としてふさわしい石と認められます。

1) Harlow G.E., Tsujimori T., Sorensen S.S.(2015) Jadeitites and plate tectonics. Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 43, 105-138.

2) 河野義禮 (1939) 本邦に於おける翡翠の新産出及び其化學的性質,岩石礦物礦床學,22,219-225.

(注1) 鉱物は,地球や他の天体で地質作用を経て生成した天然の固体物質で,単体や化合物があり, 一般に結晶質です。鉱物種は鉱物の化学組成と結晶学的諸性質により定義され,それぞれ独自の鉱物名が与えられます。現在約5200の鉱物種が知られています。一方, 岩石は1種あるいはそれ以上の鉱物の集合体です。
これらの研究は,物質としての性質を理解するだけでなく,地球惑星物質の基礎科学を軸として,地球や太陽系を理解することに繋がっています。 また,材料科学・環境科学・生命科学等にも欠くことのできない研究成果や情報を提供し,災害科学・考古学や法科学などの分野とも連携し,学際的学問領域の発展にも寄与 しています。

(注2) 今回の選定については,学会に日本の石(国石)選定ワーキング(以下WGと呼ぶ)を立ち 上げました。WGにおいて国石の条件を決め,以下の11種類を国石の1次候補としました。(写真⇒)
・花崗岩(花崗岩質岩およびそのペグマタイト)
・輝安鉱
・玄武岩
・讃岐岩(サヌカイト)
・桜石(菫青石仮像)
・黒曜石(黒曜岩)
・自然金
・水晶(とくに日本式双晶をもつ水晶)
・トパーズ
・ひすい(ひすい輝石およびひすい輝石岩)
・無人岩

この結果を学会のホームページに掲載するとともに,会員だけでなく非会員である一般の皆さまにからも約1ヶ月半の間ご意見を求め,1次候補以外にも国石として ふさわしいものについてのご提案をお願いしました。30通のコメントをいただき,ご提案のあった以下の11候補を加えました。
・大谷石(溶結凝灰岩)
・硯石(黒色頁岩)
・結晶片岩(とくに紅簾石石英片岩)
・さざれ石
・安山岩
・黒鉱
・絹雲母
・かんらん岩
・琥珀
・石灰岩(古生代の化石入りおよび大理石と方解石結晶)
・赤間石
また,瑪瑙,玉髄,碧玉という提案も寄せられたので,水晶に含めて
・水晶(日本式双晶,瑪瑙,玉髄,碧玉を含む)

としました。
以上22候補について,WGで改めて意見交換を行い,会員による投票を行うための最終5候補に絞りました。
末筆になりましたが,コメントをいただいた方々に, 厚くお礼を申し上げます。
なお,WGのメンバーは以下の通りです。
委員長:土`山明(京大),副委員長:宮脇律郎(国立科学博物館),委員:宮島 宏(フォッサマグナミュージアム),下林典正(京大),坂野靖行(産総研), 長瀬敏郎(東北大),森 康(北九州市立自然史・歴史博物館),河上哲生(京大),鍵 裕之(東大),圦本尚義(北大),平賀岳彦(東大),宇都宮 聡(九大), 橘 省吾(北大),大谷栄治(東北大)

(注3) 第1回目の投票結果は,ひすい48票,水晶35票,輝安鉱23票,自然金10票,花崗岩8票と,どれも過半数には達しませんでした。投票前の申し合わせに従って, 上位2候補について決選投票をおこないました。その結果,ひすい71票,水晶52票となり,有効得票数の過半数となった「ひすい(ひすい輝石及びひすい輝石岩)」 が国石として選定されました。水晶とは僅差であり,「水晶(日本式双晶,瑪瑙,玉髄,碧玉を含む)」を準国石と呼んでいいのではないかとも思います。

(注4) 日本の県の石については,2016年5月10日に日本地質学会が選定しています⇒

Updated Nov. 07, 2016


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岩石鉱物科学

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