日本海の潮汐と船小屋
20棟の船小屋が整然とならび、その向こう側に山岳信仰の場所であった高田山を望む風景は静かな漁村のたたずまいを見せています。近くには松原が広がり、日本の白砂青松百選にも選定されています。隠岐では普通に見られるこうした風景ですが、実は日本海の特徴が生み出した風景なのです。
日本海側の海岸は、太平洋側とまったく異なっています。干潮時刻と満潮時刻が太平洋側とずれており、一日の水位差も太平洋側では2m以上もあるのに、日本海側では最大水位差が30cmくらいしかありません。
これは日本海と太平洋の間には小さな海峡しかないためです。日本海と太平洋の間を動く海水の量が制限されるために、潮の満ち引きの差が日本海側で小さくなるのです。
そして、干満の差が小さい日本海だからこそ、海から近い陸地に船を置いたままにすることができます。このような浜に面した船小屋のある風景は、日本海の小さな潮汐のたまものであるとも言えるでしょう。