死滅回遊魚
日本海の日本列島側は、対馬海峡からの黒潮の分流(対馬暖流)が流れています。この暖流は北海道の南北にある海峡から太平洋とベーリング海へ抜けていきます。そのため、太平洋側よりも温暖な海に生息する生物の分布が北に広がっています。
しかし、年中暖流の流れている日本海でも冬には温度が低下するため、海流に乗ってやってくる南方の海洋生物の一部は冬を越せなくて死んでしまいます。このような暖流に乗ってやってきて冬に死んでしまう亜熱帯や熱帯の魚を死滅回遊魚と呼びます。隠岐の沿岸ではハコフグやスズメダイなどの死滅回遊魚がよく見られます。
ですがこの死滅回遊は無駄ではありません。地球が温暖になって漂着先で冬が越せるようになれば、他の魚に先がけて新しいすみかを得ることができるのです。なぜこのような死滅回遊がおこなわれるのかまでは判りませんが、これもまた自然の異常ではなく、生き物の営みの一部と言えます。