健康工学研究部門 健康リスク削減技術研究グループ
体に有害なホウ素
水道水の水質基準は厚生労働省令で定められています。平成16年4月から施行された新しい水質基準は、規制項目が従来の46項目から50項目へ拡大された厳しいものとなっています。この中で新たに規制に加えられた項目としてホウ素があります。ホウ素は、自然界では海水中に比較的高濃度で存在します。高濃度のホウ素を含む水を摂取すると嘔吐、腹痛、下痢及び吐き気等が生ずるなど健康に悪影響を与えることがわかっています。
樹脂で吸着
四国センターでは、ホウ素を選択的に吸着できるキレート吸着剤を開発しました。開発した吸着剤は、1gあたり18mgのホウ素を吸着できる非常に優れたものです。キレート吸着剤は、身近な合成高分子を化学的に修飾して、様々なモノを捕まえる「手」を付けたものです。水中のホウ素は、ホウ酸という形で安定に存在しますが、砂糖のような化学構造をもった「手」とくっつき易いという性質を持っています。キレート吸着剤は、この性質を応用して、ホウ素を捕まえます。
樹脂で吸着の図
海水淡水化
現在、世界的に水不足が深刻な状況になっています。これに対応するため、全世界で海水から水を生産するための海水淡水化逆浸透膜プラントが稼動しています。その処理量は、1日あたり200万トンにもなります。しかし、逆浸透膜法のみでは、ホウ素を十分除去することが出来ません。今回開発した技術はこの分野にも貢献するものです。