健康工学研究部門 生体ナノ計測研究グループ
ナノテクノロジーでガン治療概要図
選択的治療
ガンの治療には正常組織への障害を最小限に抑え、ガン病巣のみを選択的に治療することが必要です。しかしこれまでの治療法は正常細胞に対しても何らかの副作用を与えるものがほとんどでした。
量子ドットに新たな可能性
量子ドットにタンパク質を融合させる新規技術によって、ガン細胞の表面にある糖鎖を認識するレクチンと量子ドットを融合した材料を開発することに成功しました。この材料をガン細胞に与えて、紫外線を照射すると、ガン細胞の表面や内部に量子ドットが結合して鮮やかな緑色の蛍光を発することで、簡便に正常細胞とガン細胞を識別することが可能です。
さらに、これらの細胞に紫外線を照射し続けると、60分で、がん細胞全体の10から15%が死んでしまうことが明らかとなりました。この場合に正常な細胞の影響は全くありませんでした。
活性酸素がガン細胞を殺す
ガン細胞表面に結合した量子ドットに、紫外線を照射することによって、量子ドットは紫外線のエネルギーを吸収します。そのエネルギーの一部が量子ドット付近に存在する酸素と反応して、活性酸素などの生体にとって有毒な酸素種を発生させ、ガン細胞を殺してしまうと考えられます。
今後、動物実験や臨床試験を積み重ねていくことによって、量子ドットのようなナノ材料を、がん治療にも応用していく技術の確立を目指します。