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高分子材料の大きな問題点の一つが、硬さと延びの両立です。高分子は一般に、硬くするともろくなります。高分子は紐状の分子なので、硬くするためには架橋(紐をつなぐこと)しますが、その不均一性が原因で応力が集中し、もろくなると言われてきました。これに対して私たちは、ネックレス状の超分子を用いることで、世界で初めて、架橋点が動く高分子材料を開発しました。これを用いると、しなやかでタフなポリマーを作ることが可能になります。
多数の環状分子に高分子が貫通したネックレス状の超分子ポリロタキサン中の環状分子を架橋すると、架橋点が自由に動く高分子材料(環動高分子)が合成できます。環動高分子では、架橋点の移動により内部応力が自然に分散する(滑車効果と呼ばれる)ため、伸長性や膨潤性、強靭性が従来の架橋高分子に比べ格段に向上します。
架橋点が自由に動く環動高分子は、液体を含んだジェル、ゴム、樹脂、フィラーを含んだ複合材料など、様々な材料に従来とは桁違いの強靭化をもたらします。一例として、東レ株式会社様で開発されたポリロタキサン入のポリアミド樹脂は高速落下試験でも壊れなくなりました。
最近、当研究室で環状分子と高分子を混合するだけで自己組織的にナノシートが形成されることを発見しました。付着型薬剤除法材料としての応用が期待されています。
しなやかなタフポリマーを利用してコンセプトカーを製作しました。ポリマーの使用率は体積比で90%、重量850kg、最高速度150km/hで走行可能です。鉄(Iron)からポリマー(Polymer)へという思いからItoPと名付けました。
東京大学 大学院新領域創成科学研究科物質系専攻
教授 伊藤 耕三
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