自然紹介 2020年07月25日

硫黄燃焼とネオワイズ彗星の夜


2020.7/22(水)夕方 一切経山の噴気

4連休が始まる前日7/22の午後、浄土平から間近に見える一切経山の噴気が、いつもと違う色になっていました。

大穴火口付近、右側の白い噴気(大部分は水蒸気)はいつもの色ですが、
左下から上っている青白い噴気は通常見られない色なので、浄土平のスタッフはちょっとこれはマズイのでは…と話していました。
過去に火山活動が活発化した際、このような現象があったためです。


気象庁監視カメラより

そして、その日の夜、気象庁から吾妻山の火山活動の状況に関する解説情報が出ました。
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監視カメラで大穴火口付近が明るく見える現象を確認。この現象は硫黄の燃焼によるものと考えられます。
この現象の前後で、火山性地震の増加や火山性微動は観測されず、地殻変動及び空振データには特段の変化はありませんでした。また、大穴火口からの噴気の状況にも変化はありません。
大穴火口でこの現象が観測されたのは、2011年11月以来です。
硫黄の燃焼にともない二酸化硫黄が放出される可能性がありますので、登山道や浄土平付近では二酸化硫黄に注意してください。
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2020.7/23(海の日) 一切経山の噴気

一夜明けた翌朝も青白い噴気が多く噴出していました。
気象庁の現地調査があり、大穴火口付近が明るく見える現象は、大穴火口内での硫黄の燃焼によるものと確認されました。

4連休ということで早朝から登山者がたいへん多く、浄土平ビジターセンターでは火山ガスに対する注意喚起を行い、危険を感じた場合や体調の変化があれば安全な場所へ避難するか、登山を取りやめるよう呼びかけました。


2020.7/23(海の日) 一切経山の噴気

風向きによって火山ガスが流れる方向は変化します。
この日は風下側に青白い噴気が滞留している様子がはっきり分かりました。

東日本大震災後の2011年〜2012年頃、火山ガス濃度が高くなってこのような現象が見られたことがありました。
地形的に、浄土平は周囲を山に囲まれてくぼ地になっているため、風向きによっては火山ガスが滞留することがあり、注意が必要です。


2020.7/23(海の日) 兎平駐車場から見た大穴火口の発光現象(硫黄の燃焼)

↑ たまたま、兎平駐車場にてネオワイズ彗星の撮影をされていた さいたま市の滝田様より画像提供いただきました。


↓そしてこの夜はビジターセンタースタッフも浄土平にて撮影していました。


2020.7/23 浄土平駐車場にて

9年ぶりに見られた硫黄燃焼と、肉眼で見られる尾を引いた彗星としては四半世紀ぶり?のネオワイズ彗星、そして貴重な晴れ間に、千載一遇のチャンス!!? と静かに興奮しながら浄土平の夜空を見上げました。

撮影技術とセンスがあれば、もっとよく撮れるはずと思いますが・・・


2020.7/23 吾妻小富士にて

浄土平駐車場からは手前の稜線に隠れて、硫黄の燃焼箇所を直接見ることができません。
吾妻小富士まで登ると見える位置です。

ネオワイズ彗星は、一切経山の方向なので午後10時ころ稜線に沈みましたが、頭が隠れても、尾の先だけしばらく見えていました。

数十台のお客様が星空を見にいらっしゃっていて、賑やかな夜でした。
適度に風があり、噴気の噴出音や臭いなどはとくに感じませんでした。


(参考)2011年9月27日撮影 前回の硫黄燃焼

大穴火口の硫黄燃焼については、7月24日(スポーツの日)の朝からほとんど通常と変わらない噴気となっています。
今回溜まっていた硫黄は大方燃え尽きたということでしょうか。

吾妻山(一切経山)の「噴火警戒レベル1」は変更なく、登山は可能です。
活火山であることに留意して、入山される際は最新の火山活動状況をご確認ください。

行動中も現地での音や臭いなど、状況の変化を五感で感じ取り、危険を察知することも大切かと思います。

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