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最後の夏もベンチ外だった元野球部芸人が「選手以外は無駄」に反論 シドニー石井さんの尊い3年間

8/22(金) 17:30

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最後の夏もベンチ外だった元野球部芸人が「選手以外は無駄」に反論 シドニー石井さんの尊い3年間
野球部時代のシドニー石井さん

甲子園の季節になると話題になる「3年間やってもベンチに入れなかったら意味がない」という言葉。選手でなければスポーツをする時間は本当に無駄なのでしょうか? 子どもから聞かれたら、親としてその意義をどう答えますか?

お笑い芸人で人気YouTubeチャンネル「僕らの別荘」のメンバーでもあるシドニー石井さんは高校時代、野球部で3年間全力で打ち込みながらも最後までベンチ入りを果たすことはありませんでした。それでも「意味ないわけないじゃん」と力強く語る石井さんに、その3年間の意味について伺いました。(取材・文/吉澤恵里)

水球での挫折から「一番きつい部活」への挑戦

甲子園の季節になると、毎年のように「3年間やってもベンチに入れなかったら意味がない」という言葉が話題になります。厳しい競争の中で結果を残せなければ無駄だ、という価値観がいまだ根強いのかもしれません。

しかし、そんな見方にきっぱりと異を唱える人がいます。芸人のシドニー石井さんです。石井さんは高校時代、野球部に所属しながらも最後までベンチ入りを果たすことはありませんでした。それでも3年間、全力で野球に打ち込みました。

「意味ないわけないじゃんと思いますね」

インタビューの第一声で、石井さんは力強くそう語ってくれました。では、その3年間にどんな意味を見出していたのでしょうか。

――小学生では野球、中学生では水球をしていた石井さんが、高校で再び野球を始めたきっかけは?

「まず、中学に入ったとき、僕の一学年上に小学校の野球チームの先輩がいて、その人が中学の野球部に入っていたんです。『練習見に来いよ』と言われて見学に行ったんです。そしたら、キャッチャーの防具がずらっと並んでいて、こんなに選手がいるなら試合に出るのは絶対無理だと思ったんですよ。僕は投げるのは得意でしたけど、それならまだみんな同じスタートラインの水球をやろうと考えたんです。

ところが、水球は想像以上に過酷でした。チームは強豪で、日本代表クラスの選手も在籍。水球って泳ぎ続ける力が必要で、水深2メートルのプールで足をつけずに立ち泳ぎをしながらプレーするんです。

僕は泳力が足りなくて全然ついていけませんでした。しかも肌が弱いので、水に入ったり上がったりを繰り返すうちに手が塩素でボロボロになってしまって。

結局、中学2年のときにドクターストップがかかり、水球を断念しました。部活を辞めて時間を持て余す日々の中で『高校では一番きつい部活に入りたい』と思ったんです。

高校に入学し、最初はハンドボール部を作ろうと考えて、顧問の先生を探したり部員を集めたりしたんですが、仲の良かった野球部のやつに『絶対無理だ』って言われて。『ハンドボール部ができなかったら野球部に入れ』という約束をさせられたんです。結局ハンドボール部は作れず、野球部に入ることになりました」

90人の部員の中で見つけた自分の役割

――入部当初は、どんなポジションを目指していましたか?

「僕の高校はそれなりに強くて、いわゆる『プロ注』、プロから注目されるレベルの選手が、僕が1年のときの3年生に2人もいたんです。さらに野球推薦で入ってくる生徒もいて、全体のレベルはかなり高かったんです。

もちろん、レギュラーで試合に出たい気持ちはありました。でも正直、そんなことを考える余裕はなかったですね」

――つらかったことは?

「硬式のボールが本当に危ないんです。中学のときに野球を続けてきた、いわゆるエリートのやつらは簡単にこなすんですけど、僕は練習中にボールが右手の小指に直撃してしまい、小指を骨折しました。

普通の練習でケガをするくらい、自分には厳しい環境でした。

ボールを使う練習ももちろん大変でしたけど、それ以上に基礎練習もハードでした。毎日の走り込みとか、徹底的に追い込むようなメニューがたくさんありました。本当にしんどかったです。

――その中で、モチベーションはどんなふうに保っていたのですか?

正直、レギュラーを取るのは難しいと早めに感じていたので、野球以外の部分で頑張ろうと思っていました。例えば長距離走では一番速く走ろうと意識していましたね。その頃から芸人を目指していたので、『どうせ3年間続けるなら芸人として良いエピソードトークができるだろう』と考えていました。だから辞めることは一度も考えませんでしたし、きつい練習も『経験』として楽しめていた部分がありました」

――部員数はどのくらいだったんですか?

「全体で80〜90人くらいだったと思います。僕の学年だけで30人以上いました。ベンチに入れるのは全部員のうち20人くらいなので、入れない人のほうが多いんです。だからベンチに入れなかった=特別にかわいそうな状況というわけではなく、それが普通の世界なんです」

――ベンチに入れなくても、卒業後も野球を続ける人もいたのでしょうか。

「います。僕の同級生の中にも、大学に進学してからサークルで野球を続けた人がいました。他校との練習試合で対戦した選手の中には、その後プロに進んだ人もいて、そういうレベルの相手と同じグラウンドに立てたのは大きな経験でした」

監督の言葉に納得できた理由

――そう聞くと、3年間やってベンチに入れなかったという言葉の印象が変わってきますね。

「そうですね。誰もがレギュラーを目指して頑張っているので、結果的にベンチに入れなかった人はたくさんいます。でも僕の学年で途中で辞めた人は一人だけでした。ほとんどの部員は最後までやり切ったんです。

――ベンチの控えに入れそうな時に1年生が抜擢された話をYouTubeでされてますが、ベンチ入りを逃した瞬間は、どんな悔しさや辛さがありましたか?その後、どうやって気持ちを立て直しましたか?

「もちろん、『もしかしたらベンチに入れるかもしれない』と思った時期はありました。けれど、実際には1年生が抜擢されて、そのチャンスは回ってきませんでした。落ち込みもしましたけど、人並みの落ち込みという程度で、『もうダメだ』とまで思うことはなかったです。正直、その1年生は実力がありましたし、納得できる部分も大きかったんです。

監督から個人的に、『もし同じ実力なら、来年以降のことを考えて下級生を起用するんだよ』と伝えていただき、そういう考え方はとても理解できますし、納得しました。

監督とはよくご飯に連れて行っていただくこともあり、関係性としても信頼していましたから、不満はなかったです」

――確かに、現実的な判断ですね。

「そう思います。スポーツの世界は『今この瞬間』だけじゃなく、次の世代につなげるという側面もある。仕事でも同じですよね。今年で卒業する選手より、来年以降も活躍できる選手を経験させる。そういう本気の場だからこそ納得できるんです。僕自身、自分をチームの中の小さなピースのひとつだと思っていたので、『なぜ自分じゃないんだ』という感情はありませんでした。

今でもそうですが、誰かを妬んだり恨んだりする気持ちは持ちたくないと思っています。本気でやっている場だからこそ、結果の受け止め方にも意味があるんだと感じますね」

レギュラーじゃなくても学べたこと

――選手以外の立場だからこそ気づけた人間関係の大切さはありますか?

「そうですね。選手として試合に出られなかったからこそ、チームワークの大切さや、人付き合い、先輩や先生との関係の築き方を学べたと思います。

90人もの部員の中で、自分の存在を見失おうと思えば簡単に見失えます。レギュラーじゃなければ代わりはいくらでもいるわけですから。でもだからこそ、盛り上げ役になろうとか、人とのコミュニケーションを大切にしようと考えるようになりました。

この人に何を言えば喜ぶだろうとか、嫌なことは言わないようにしようとか、そうした関わり方を意識するようになったんです。僕自身、野球部ではよく一発ギャグをやって笑いを取ったりしていましたね(笑)」

――すでに芸人の片鱗が出ていますね。

「そうかもしれませんね。ただ僕の場合は、野球部に入る前から芸人になりたいと思っていたので、つらいことも『これもエピソードになる』と考えていました。嫌な出来事も、振り返れば全部ネタになるし、むしろありがたいことなんです。今でも『どんなこともハッピーに変えられる』というのは自分のモットーになっています」

「自分を不幸にしない」というモットー

――同じように悩んでいる高校生や、部活動で結果が出ない学生に向けて、「3年間の意味」を込めたメッセージをお願いします

「僕は自分を不幸にしないというのをモットーにしています。先のことなんて誰にも分からないし、スポーツでも受験でも、何かにチャレンジすれば不安になるのは当然ですよね。でも、そもそも挑戦しようと自分で決めて歩んでいる時点で、本来は幸せなはずなんです。

僕は、成功するか失敗するかは分からなくても、その過程を楽しめるかどうかが大事だと思っています。

だから、どんな状況も落ち込んだりするのは、もったいないなと思うんです。本当は自分で決めて、自分で歩んでいるだけで幸せな状況のはずなのに、あたかも自分を不幸に追い込んでしまっている。逆に言えば、自分を奮い立たせるのは自分にしかできないことですよね。

いわゆる自己肯定感という言葉で表されるのかもしれませんが、そういうマインドを持ってほしいなと思っています。悩むことすら、見方を変えれば楽しい経験になるはずです!」




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