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2019年度
従業員の家族や協力会社も含めた積極的な情報提供により介護への心構えを促しています
仕事と育児の両立支援 仕事と介護の両立支援 再雇用制度
インタビュー
管理本部人事部部長 兼
人材いきいき推進室長 兼
計画室長
塩入 徹弥 さん(右)
管理本部人事部
人材いきいき推進室
主任
宮坂 知子 さん(左)
当社では、2006年に女性活躍推進の取組を開始しましたが、その取組の中で女性従業員へのヒアリングを行ったところ、介護に対する不安の声が多く聞かれ、介護が始まったら仕事をやめなければならないと考えている従業員がいることがわかりました。これは女性に限った問題ではなく、全社で取り組むべき課題であると考え、当時、介護離職をする従業員が、
多くいた訳ではなかったのですが、5年、10年後を見据え、2010年に仕事と介護の両立支援の取組を始めました。取組の基本方針として、従業員が介護に専念することを支援するのではなく、仕事と介護の「両立」を支援することとし、「事前の心構えができるよう情報を提供すること」、「介護は誰にでも訪れる可能性があるもので、お互い様の意識を醸成すること」に注力することにしました。
まずは情報提供を行うため、2010年から介護セミナーを開始しました。セミナーは希望者が参加できる形式とし、終業後の18時から2時間程度、本社及び各支店で定期的に開催し、家族の参加も可能としています。2012年からは全従業員のご家庭にDMを送付するなど、ご家族にもセミナーを直接ご案内しています。
また、仕事と介護の両立支援制度をよりよいものとするため、介護休暇を取得した従業員へのヒアリングを行うとともに、2016年には介護経験者の交流会を開催し、それぞれの体験談を共有してもらいました。これらの従業員の声から、介護休業の分割取得制度等、制度の見直しも行いました。
介護休業制度は通算180日まで、半日単位で取得可能であり、分割の回数に制限はありません。介護休暇制度は要介護者1名につき10日間(2名以上の場合は15日間)、半日単位、時間単位で取得可能で有給としています。勤務時間の短縮措置については、7・6・5・4時間の4パターンから選択可能で、勤務時間の繰上げ・繰下げとの併用も可能としており、措置開始から3年間何度でも利用可能です。要介護状態の家族の介護のために連続1週間以上もしくは月1回以上の定期的な休業が必要な場合、失効年休の積立てによるリバイバル休暇も利用可能です。勤続10年未満の場合は
最長40日、勤続10年以上の場合は最長80日まで利用可能で、半日単位での取得も可能です。そのほか、勤務地限定社員が介護や配偶者の転居に伴う同居等を理由に転勤を希望できる勤務地変更制度や、介護を理由に退職した者が雇用を希望した場合に再雇用するジョブ・リターン制度も導入しています。
また、情報提供として、既述の介護セミナーのほか、会社の両立支援制度や介護保険サービスの情報、社員の両立事例等を掲載した「介護のしおり」(小冊子)を作成し、40歳以上の全従業員に配布しています。同時に配布する「ケアマネジャーリーフレット」は介護が始まった時にケアマネジャー(介護支援専門員)に見せることで、仕事との両立を前提としたケアプランの作成に活用できる内容としています。さらに、社員証ケースに入れられる名刺サイズの介護情報携帯カードや、「介護のしおり」を入れたクリアファイルにも介護制度の情報を印刷するなど、さまざまな方法で情報の周知に努めています。また、介護相談会を隔月で開催し、従業員からの相談を受けています。介護相談会は従業員の家族も利用可能で、遠方の従業員のためにスカイプや、WEB会議での利用も可能としています。
2018年からは介護サポートプログラムとして、従業員の仕事と介護の両立に関する相談に対してアドバイスできるスタッフ(人事担当者)が、上司と担当者の面談に同席し、利用可能な制度の紹介を行ったり、業務引継ぎ等についてアドバイスをしたりする仕組みを導入しました。
建設会社の特徴として多くの従業員が現場にいるため、2018年からは現場の事務所に出向いてセミナーを開催しています。建設現場の作業員は年齢層が高めであり、協力会社の従業員の介護離職も防ぐため、現場でのセミナーでは、協力会社の責任者にも参加を呼びかけています。また、介護セミナーに参加できない従業員のためにセミナーの動画を配信しています。
これらの取組を通じて、情報格差をなくすようにしています。
また、管理職に対して毎年実施しているダイバーシティマネジメント研修の中で、仕事と介護の両立についても取り上げることで、部下のサポートに関する心構えを伝えるほか、本人に対しても介護に対する備えをしておくよう、働きかけています。
介護休暇制度については、2018年には男性従業員130人、女性従業員100人が利用しており、6年前と比較すると、女性はほぼ一定ですが男性は4倍近く増えており、制度への認知が高まってきたと感じています。また、2010年から開始した介護セミナーには延べ1,800名が参加し、近年では参加者の7割近くを男性従業員が占めるようになりました。介護を経験した従業員からは、 セミナーの情報が役に立ったとの声も聞かれ、セミナーの効果が少しずつ現れてきていると感じています。また、定期的に実施している介護アンケートからは、介護をする前は3割の従業員が両立できない、と考えている一方、実際に介護中の従業員の7割は継続就業できると回答しており、情報を知ることで、ある程度負担感を軽減することができると考えています。今後も引き続き、介護アンケート等を通じて検証を行っていきたいと考えています。
介護に直面していない従業員は、介護の情報収集を自分には無関係のこととして後回しにしてしまいがちですが、介護はある日突然訪れるため、事前の備えとして情報提供は重要です。このため、さまざまな方法により、情報提供に努めていますが、まだ十分ではないと感じています。情報提供については、あきらめずに続けることが重要であると考えており、2019年には飽きさせない工夫として、VRを活用した介護セミナーを開催しています。これからも、より多くの従業員に情報が行き届くよう、さまざまな工夫により取組を続けていきます。
事前の情報収集と介護サポートプログラムが
仕事と介護の両立の支えとなりました
M・Hさん
一人暮らしだった母が脳梗塞で倒れ、5か月の入院の後、自宅に同居することになり、夫と二人で介護をしています。入院中は、役所の手続きや母の転居手続き、家のリフォーム工事等のために介護休暇を時間単位、半日単位、一日単位で利用してきました。退院後には、通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせ、ショートステイ初日の付き添い等で入院中より休む頻度が高くなりました。介護サービスとしては、訪問介護、デイケア(通所リハビリテーション)等を利用してきましたが、
自宅での介護を続けるうちに、夫と二人での介護は体力的にきついことがわかってきたため、最近はショートステイ(短期入所生活介護)も利用しています。
母の介護が始まる前から、私の周囲には介護をしている知人が複数いたため、ある程度の情報は入手しており、また、会社の介護セミナーにも以前から参加して情報収集を行ってきたため、介護関連の制度や手続き等はある程度イメージできていました。特に、「介護のしおり」に介護の制度や両立の事例が掲載されており、とても参考になりました。
介護が始まって最初の1か月ほどは、慣れないことが多く、とにかく大変でした。介護自体も大変でしたし、いろいろな手続きも多く、時間の調整も試行錯誤の毎日でした。また、当初は急に休みをいただく都度、同僚に個別に業務を依頼しており、申し訳ない気持ちも感じていました。しばらくして会社の「介護サポートプログラム」により人事部、自部門の人事担当の上司との三者面談を設定してもらい、
働き方に関するアドバイスを頂きました。人事担当者から利用できる制度を説明してもらい、必要な対応を考えることができました。面談後は、担当上司に連絡すると、業務を部内で調整する仕組みを考えてくださり、急な休みでも個別に同僚に依頼しなくて済むようになり、気持ちも楽になりました。
また、以前、会社の介護セミナーで配布されたエンディングノートを何気なく母に渡していたのですが、母が元気なうちに必要事項を記入して準備してくれていました。自宅で母を介護するようになり、記入されていた内容が役に立っており、未然の準備の大切さを感じています。
(データの取材時点:2019年8月)