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2019年度
ヒューマンリソースセンターで従業員に関するすべてに細やかなフォローを実施
仕事と育児の両立支援 テレワーク 女性活躍推進 女性採用拡大 女性職域拡大
インタビュー
ヒューマンリソース
センター長
キャリアコンサルタント
齋藤 朋子 さん
当社では、以前から、経理部や総務部等の管理部門においては、役員や課長をはじめ多くの女性が活躍していましたが、建築現場では女性が働くことは難しいのではないかという固定観念から、設計・企画以外の女性技術職の採用はしていませんでした。しかし、社会的な女性活躍の機運の高まりとともに、他社の建築現場で女性監督の姿を目にする機会も増え、 2012年頃から当社でも女性を建築現場へ配属することが可能ではないかという議論が始まりました。2013年、建築技術を極めたいという強い意志を持った女性からの応募をきっかけに、新卒の女性技術職の採用を開始しました。採用を開始した当初は、社内に反対意見もありましたが、入社後の女性技術職の意欲的な仕事への姿勢が評価され、女性も男性と同様に建築現場で活躍できることが社内に浸透していきました。以降は、ほぼ毎年、新卒の女性技術職を採用しています。当社の場合、女性技術職の積極採用というよりは、性別にかかわらず優秀な人材を採用した結果、女性技術職の採用が続いていると考えています。
2013年に、人にかかわるすべてをワンストップで行うヒューマンリソースセンターを設置しました。女性の活躍推進、仕事と家庭の両立支援、採用や育成、従業員の健康管理等を一元的に行っています。女性技術職の配属や育成についても、ヒューマンリソースセンターがサポートしながら進めています。配属については、育成のスキルがあり、ダイバーシティへの理解が進んでいる上司のもとに配属するようにしています。
また、建築現場勤務の場合は、トイレや更衣室等の環境整備がされていること、当社の従業員が同じ現場に複数名いること等、安全面での配慮をした上で配属先を決定しています。
そのほか、メンタルケアの一環で、1〜3年目の全従業員を対象に、2か月に一度、独自のストレスチェックを実施しています。本音で回答できるよう、ヒューマンリソースセンターの担当者以外は閲覧できない仕組みにしています。サポートが必要だと判断した場合には、キャリアコンサルタントの国家資格を持った担当者が面談を行い、状況や悩みを共有しています。この取組を開始してから、早期離職やメンタルヘルスを害する従業員が格段に減少しました。また、業務経験や習得度、資格等を個人ごとにまとめた「個人カルテ」をもとに、年2回の賞与面談でキャリアプランを話し合います。業務面だけでなく、育児や介護等プライベートなことも可能な範囲で共有します。この面談での意見が、在宅勤務制度やGLTD(団体長期障害所得補償保険)の導入のきっかけとなりました。女性技術職だけでなく、全従業員が十分に能力を発揮できる環境を整えるために、従業員の意見を聞くことを大切にしています。
女性技術職の活躍により、感じているメリットはたくさんあります。まず、人材確保が厳しい状況が続く中、優秀な人材が採用できていることです。企業説明会等で当社の女性技術職が説明を担当すると、性別にかかわらず多くの学生が耳を傾けてくれます。彼女たちに憧れて入社した者もおり、女性技術職のロールモデルになってくれています。また、当社では7名の女性現場監督(2020年には5名の女性現場監督が入社予定)が活躍していますが、女性がいる現場は近隣の方から安心感を持っていただけるというメリットがあること
もわかりました。さらに、昨今増加傾向にある協力業者の女性職人の方々への細やかな配慮ができることは、当社に新たな強みをもたらしています。
そのほか、社内の意識にも変化が表れ始めました。2018年に実施した従業員満足度調査では、約7割の従業員が「当社で働くことに満足している」と回答し、約8割の従業員が、「社内のコミュニケーションや社会貢献に満足している」と回答しました。これは、建設業の水準と比較すると高い数値だそうです。女性技術職の育成を一つのきっかけとして、社内のコミュニケーションが円滑になり、性別や年齢にかかわらず相手を尊重する雰囲気が根付いてきた成果だと考えています。
女性技術職が入社した当初は、どのような配慮をすればよいか分からないといった上司側の戸惑いがありました。女性技術職の本音が分からなかったことで、過度な心配や配慮をした場面もあったかもしれません。そこで、ヒューマンリソースセンターの担当者が上司と女性技術職の双方から本音をヒアリングし、 仲を取り持つことでお互いの不安を一つずつ解消していきました。その結果、少しずつ「女性だから特別」という無意識のバイアスが解消されたと考えています。2019年に実施した女性現場監督とその上司へのアンケートでは、「女性部下の育成には特別な知識が必要かと思っていたが、男性部下と同様の、上司と部下の信頼関係を築くことで問題はなかった」という上司からの意見がありました。女性技術職だけではなく、受け入れる上司や周囲の従業員へのサポートも大切だと考えています。
今後の課題は、女性技術職が出産や育児等のライフイベントを経て、安心してキャリアを継続していける仕組みを作ることだと考えています。設計や営業企画、管理部門では仕事と家庭の両立経験者はいるのですが、現場勤務と家庭の両立をどのように支援していくかを検討していきたいと思っています。当社は仕事と治療の両立支援にも注力していますが、そのノウハウを活かし、従業員それぞれに合わせた柔軟な対応をしていきたいと考えています。
建設業でも、女性であることを特別に意識しない職場づくりに感謝しています
東京本社 設備部
齊藤 千智さん
大学で専攻していた建築の知識を活かしたいと思い、2013年に当社に入社しました。入社後は希望通り設備部に配属され、電気や空調、給排水等の設備全般の施工管理を行っています。複数の現場の管理は大変なこともありますが、お客様のニーズを建築物に活かすことができた時にやりがいを感じます。当社への入社を決めたのは、建設業でも「女性だから」と特別視しない社風に魅かれたからです。 入社後もその印象は変わりませんが、男性が多い建築現場で女性が働きやすい環境づくりへの配慮に感謝することは度々あります。例えば、来客への給茶を上司から頼まれた際、「女性だからではなく、この部署で一番年下だからお茶出しを頼んでいる」と言われたことがありました。私はあまり気にしていなかったのですが、上司が配慮してくださったのだと思います。それからは過度な心配をかけないよう、進んでコミュニケーションをとるよう心掛けました。また、ヒューマンリソースセンターをはじめ、困った時には相談しやすい環境があることも心強いです。
力仕事などでは男女の差を感じることはありますが、地下など狭い場所での確認作業は小柄であることが強みになる等、女性が力を発揮できる場面がたくさんあります。社内では女性技術職の後輩が入社し、建築現場では女性の職人さんや警備の方が多くなりました。今後は、私が成長することで、彼女たちの身近なロールモデルになれると良いと思っています。将来はまだわかりませんが、社内には仕事と育児を両立している先輩もいるので、出産をしても育児と両立しながら働き続けていきたいと思っています。
(データの取材時点:2019年9月)