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2023年度
従業員のライフステージの変化に寄り添った両立支援制度の導入を推進
仕事と介護の両立支援
インタビュー
人事部長 兼
健康管理室長
小山 美佳さん(左)
人事部
人材開発課 担当課長
滝口 沙都子さん(右)
当社は健康経営の一環として、社員個人のライフステージにおける課題となる「育児と仕事」「介護と仕事」の両立がいずれも大事なものであると考え、取組を強化してきました。
当社の社員の平均年齢がまだ30代ということもあり、介護と仕事の両立に関する相談が少なかったため、社員本人の傷病と仕事に関する支援制度の導入や、女性活躍推進に取り組むなかでの「育児と仕事」の両立支援制度の拡充が先行しました。一方で、今後、介護に向き合う社員は必ず増えていくため、3年ほど前から「介護と仕事」の両立支援策の強化も行ってきました。
当社の介護と仕事の両立支援に関する制度は、介護休暇を有給で付与するといった法定以上の内容を特長としています。また、介護休業については、当社はもともと、商材でもある団体長期障害所得補償保険(GLTD)を社内にも提供していましたが、2020年に傷病に限らず介護休業補償も提供できるアドバンテッジLTD(※(注記))を導入しました。
※(注記)介護により休業等をした場合に、免責期間なしで、「最大3か月間」・「月額給与(×ばつ15か月の1/12)の最大60%まで」が補償される団体総合生活保険。公的な給付(介護休業給付金)を受け取っている場合は、その金額を控除したうえで補償額を算出する(尚、上限を200万円とする)当社では、ご家族の介護に関する相談窓口を設け、社内イントラネットに情報を掲示しています。また、介護マニュアルを作成し、社内に開示しました。その他、介護を必要とする社員に限らず全社員に向けた柔軟な働き方を実現する制度として、テレワーク、時差出勤、プレミアムワンアワー(17時まで勤務すれば、18時前に退勤しても、18時まで働いたとみなす制度)を導入しています。
当社には従来から育児に対してサポーティブな土壌があり、「お互い様」の感覚で育児休業や看護休暇などを取得しています。こうした土壌があるため、介護についても同様に受け入れられています。さらにテレワークや時差出勤といった多様な働き方を拡充したことで、育児・介護がしやすくなったという声が私たちに届いています。制度の充実化と社内での情報の浸透もあり、必要な人が利用しやすい環境になってきているものと考えます。
さまざまな事情を抱える社員が両立支援制度を利用し、仕事との両立を実現できていることは、社員の働くうえでの安心感や会社へのエンゲージメントにつながっていると思います。実際に、社員からは、制度を利用して創出できた時間を育児や介護に利用できることに加え、睡眠時間を確保したり、通勤負担軽減により体調維持がしやすくなったりしたという声をよく聞きます。これは、ストレスチェックにおける高ストレス者の減少やエンゲージメントスコアの上昇といった数値にも現れており、社員のウェルビーイングの向上につながっていると思います。
当社は、ライフステージにおける課題への取組を健康経営の一環として行ってきた土壌があるので、新しい取組への抵抗は特になく、制度の導入などにおいて役員の理解も得られやすい環境にあります。例えば、GLTDに介護特約をつける際には役員とも議論しましたが、「今後は、育児に加えて介護も社員が向き合う課題なので、会社として支援するのは当たり前」ということで、すんなりと受け入れられました。
また、制度の利用に関しては、以前は介護休業・介護休暇の利用者が少なかったのですが、マニュアルを作成し周知したところ利用者が増え、現在は年間数名が利用しています。社員数が少ないので、相談件数がもともと少ないのですが、それまで利用者がほとんどいなかったのは、そもそも制度の存在を知らなかったことも原因だということが分かりました。
一番有効であると感じている施策は、多様な働き方の選択肢を増やしたことです。例えば、テレワーク制度自体は以前からありましたが、限られた人が利用しており、全体に浸透していませんでした。コロナ禍でテレワークを強く推奨した結果、利用が広まり、コロナ禍後も制度として継続することを宣言しました。時差出勤制度については、コロナ禍で満員電車を避けるための時差出勤を目的とした利用に限っていたものを、業務に支障がないことが確認できたので、コロナ後も継続し、在宅勤務においても利用可能に変更しました。当然のことながら、社員が生産性高く働くことができているからこそ、会社が社員を信頼し、制度が継続できています。もちろん、制度の利用の際は業務に支障がないことが前提ですし、上司の承認が必要です。
介護休業は、産前産後休業や育児休業に比べると対象者は多くありません。他の施策を先行してきたこともあり、私たち人事部自体が介護や社会保障の制度の知識が十分でないと自覚しています。もっと専門知識を身に付けて、社員の相談に乗り、支援ができるようにしたいと考えています。
今後は、介護を理由に退職を検討する社員が出てくる可能性もあると思います。介護に直面した社員が退職するという選択をせずに、本人に無理のない形で就業を続けてもらえるよう、週休3日制度の導入や、完全テレワークの対象者を増やすといった、柔軟な雇用の在り方を模索していきたいと思います。
介護休暇と短時間勤務制度の組み合わせで
家族との時間を確保
2016年に当社に入社し、カウンセリングサービスを提供する部署に所属しています。前職は精神科病院に勤務し、臨床心理士としてカウンセリングや心理検査を実施していました。
2019年と2020年に2回、父が病で倒れました。当初、父は単身で暮らしていたのですが、とても一人で暮らせる状態ではなくなり、急遽施設を探して入所しました。このときに、初めて年5日間の介護休暇を取得しました。また、父が入所している施設では通院の付き添いや役所の手続きは家族が行う必要があるのですが、こちらも介護休暇で対応できました。
介護休暇を使って病院付き添いをしてみると、病気の高齢者は体調が不安定で早い行動が難しく、半休などでは対応が難しいことがよくわかりました。全休であれば余裕を持って対応できるのでとてもありがたいです。年間5日間では足りないという事実はありますが、それらは有休で補えば十分だと思います。
2023年10月からは、介護休暇とは別に短時間勤務制度を利用しています。これはもともとシフト勤務で週の半分は深夜の帰宅であったのですが、夫の傷病休職と娘の中学受験準備が重なったため家族のフォローが必要となり、上司に相談したうえで制度を利用することにしました。今は早番、かつ1時間短縮した9-17時にて就業しています。
シフトの遅い勤務は娘が保育園時代からではありましたが、短時間勤務制度の利用により、夕食作りや塾の送迎など、今までならできなかったことができたり、娘との対話や料理が一緒にできたりして、とてもよかったです。
制度は使う人が出て、初めて活きるものだと思います。使った人・制度を紹介する人がいることで次に使おうと思う人が出てくる。そんな風に多様な生き方の中で働き方を変えていけると、組織と人のより良い相互作用が生まれると思います。
(データの取材時点:2023年11月)