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2020年度
女性活躍推進のみならず全社員が働きやすい職場を目指します
仕事と育児の両立支援 仕事と介護の両立支援 妊娠中の労働者支援 短時間正社員制度 女性活躍推進
インタビュー
エームサービス株式会社
人財本部人事総務部部長
福永 昌江さん(右)
人事戦略室室長
高柳 絢一さん(左)
(ほか 左から)
直井 博子さん
樋口 のぞみさん
秋本 彩佳さん
三井グループと米国アラマーク社の合弁による給食事業会社として1976年にエームサービス株式会社を設立して以来、企業や病院・高齢者施設、学校、スポーツ施設などへ事業領域を広げ、現在はグループ全体で全国約1,500カ所の事業所において「食」を通じたサービスを提供しています。
事業の特性上、もともと女性社員が多く、仕事の責任範囲や評価基準において男女差はなく、産休や育休後も活躍し続ける女性社員はいましたが、会社の成長に伴う社員数の大幅な増加や事業所拠点の広がりにより、各事業所の責任者から「部下の産休・育休時の対応方法が分からない」といった声が聞かれるようになりました。
ちょうど2005年当時、国内では次世代育成支援対策推進法に基づいた「くるみん認定」が始まったことをきっかけに、多くの女性社員に、復職後も長く働き続けてもらえる社内体制づくりを目指し、改善に着手しました。
当社では、まず利用者の要望に合った制度を再構築し、次に全国の各事業所に必要な情報が行き届くよう周知に努めました。その上で、産休・育休中のフォローや復職後のキャリア支援などのサポート体制を強化しています。
・充実した制度の構築
法律では3歳に満たない子を養育する労働者に対して、短時間勤務や所定外労働を免除する措置を義務づけており、当時、当社でも法律と同様の制度を設けていました。しかし、世間でも「小1の壁」といわれるように、子どもが小学校に入学すると保育園の時以上に子どもへのサポートが必要になります。そのタイミングで離職を考える社員は少なくないと考え、2008年に6時間以上30分単位で申請できる短時間勤務制度の利用期間を小学校3年生まで延長しました。
また、少しでも早く仕事と子育ての両立に慣れてもらえるよう、復職後3カ月間は4時間以上30分単位で申請できる特例の短時間勤務制度も設けました。その他にも、社員のフレキシブルな働き方を促し、モチベーションや業務効率、生産性の向上につながるよう、2017年に「時差出勤制度」を導入しました。
・周知方法の見直し
制度を整えてもその存在を知らなければ利用されません。全国各地で働く社員に制度の内容や必要な手続きについて知ってもらうため、「妊娠・出産・育児と仕事の両立ハンドブック」を提供しています。さらに、部下が制度を利用する際に、責任者が制度内容をしっかりと理解した上で対応できるよう、社内のイントラネットにも情報を公開しています。周知徹底に向けて今後も努力を重ね、妊娠・出産する女性社員への理解向上や安心して復職できるサポート体制づくりにつなげていきます。
・産休・育休中の支援
産休・育休中でも女性社員が会社とのつながりを感じられるよう社内報を郵送。また、育児や復職についての不安を解消できるように、人事担当者や先輩ママと連絡が取れる両立支援ツール(アプリ)を導入しています。その他、復職間近の社員が実際に働いている先輩ママと直接情報交換ができる場として、復職支援セミナーも開催しています。
・女性活躍推進
当社における女性管理職の比率は2017年頃から少しずつ増えていますが、現状7.2%と決して高くはありません。女性社員が高いモチベーションを持ち、キャリアビジョンを描き将来活躍の場が広がるよう、階層別/目的別に研修機会を設け、産業平均である9.8%に近づけていきます。
また、女性社員が産休・育休取得後、個々の希望に沿ったキャリアを継続できる体制づくりが必要と考え、キャリア・働き方についてのヒアリング面談を行い、ここで得たニーズを反映させた施策の実現に向けて動き始めています。
制度の拡充や周知方法の見直し、支援体制を強化したことで産休・育休の取得数が6年前より261%増、短時間勤務制度の利用数も221%増となっています。産休・育休中の社員からは、「会社からの情報提供は助かっている」という声も聞かれるようになりました。産休・育休取得経験者が年々増加し、女性社員主導のプロジェクトが発足。妊娠中でも現場で作業がしやすい「マタニティ用パンツ」が考案され、2020年より使用開始となるなど、好循環も生まれています。
当社は全国に約1,500カ所の事業所があり、事業所でイントラネットの情報を閲覧できる環境が限られるため、周知という点で苦労しました。ハンドブックの作成・イントラネット上の情報整備はもとより、必ず目を通す社内申請書に重要な情報を盛り込むなど、必要な情報が必要な人に確実に届くように工夫しました。
男性の育休取得者を増やすために、イントラネット上に男性社員向けの情報共有ページの作成にも着手しています。保有する「長期勤続積立有給休暇」を育児のために使えることなど、休暇取得を促す情報を積極的に発信することで、直近では5%の男性育休取得率を上げていきたいです。
今後は介護との両立も大きな課題になるでしょう。育児・介護に直面する社員を含め、全社員が働きやすい職場をつくり、ワーク・ライフ・バランスを実現できる会社を目指していきます。
周囲の理解と支援で仕事を継続
次世代にバトンをつなぎたい
エームサービス株式会社
HSS西東京事業部 ニュートリションチーフ
田村 麻由さん
2001年に新卒入社。管理栄養士として東京都23区内の病院で患者食の献立の確認や、栄養指導などを担当しています。2013年から2015年まで1回目の産休・育休を取得、2017年から2018年まで2回目の産休・育休を取得し、現在は、短時間勤務制度を利用して働いています。
妊娠が分かったときは、制度や手続きの内容などが分からず不安でしたが、ハンドブックに情報がまとめられていたので大変助かりました。また、育休中は定期的に会社から社内報が送られてきたので、「会社とつながっているんだ」と安心でき、うれしかったです。復職前には、復職支援セミナーに参加し、先輩ママから家事の工夫や時間の使い方などを聞けたことで、復職後の生活イメージがわき、仕事への意欲も高まりました。
復職した当時は、職場環境(早番・遅番、土日出勤)や子育てとの両立などの観点で不安でしたが、同じ職場に先輩がいたので、安心して復職できました。制度を利用する際は、周囲に与える影響を考えると不安もありましたが、皆さまに理解していただき大変助かっています。私自身、環境に甘えることなく、周囲の理解を得られるよう、限られた時間の中でも自分にできることに精いっぱい取り組むことを常に意識しています。
復職後は勤務時間が限られているため、「To Doリスト」で業務に優先順位をつけ、慣れていきました。その成果もあり、今では時間管理ができ、効率よく業務を行えるようになりました。今後、業務効率化によりできた時間を自己学習にあて、より患者さんに寄り添った栄養指導ができるように管理栄養士として知識の幅を広げていきたいと思います。
私が継続して働けているのは若手栄養士の支えのおかげでもあります。若手栄養士が子育てをする際に、安心して制度を利用して両立できるように、私自身の経験を伝えサポートしていきたいと思いますし、また、同じように後輩に受け継いでいってほしいです。そうすることで、経験や知恵が継承され、「お互い様」の風土が根付き、復職後長く働く女性が増えていくと信じています。
(データの取材時点:2020年12月)