◆だいやまーく大相撲九州場所14日目・琴桜(上手投げ)大の里(24日、福岡国際センター)
右差しを許して押し込まれて右足を徳俵にかけた琴桜が、どよめきの中で一気に逆襲に転じた。がっちり引いた左上手からの投げの勢いで、大の里を土俵下まで吹き飛ばし、自己最多タイの13勝目。先輩大関の意地を見せて悲願の初優勝に王手をかけ、初の年間最多勝も確定させた。
オンとオフの切り替えはばっちり。支度部屋では「落ち着いて取れたと思います」と落ち着いた口調で、逆転の投げにも「反応してくれたので」と淡々。千秋楽は結びで豊昇龍戦が組まれた。「変わらずしっかり準備して、やるだけなんで」と相星決戦を見据えた。
年間の勝利数で首位タイだった大の里との直接対決を制し、今年65勝目を挙げてタイトルを手中にした。年間最多勝は佐渡ケ嶽部屋からは初。祖父の先代佐渡ケ嶽親方(元横綱琴桜)も縁がなかった。
「それは後からついてくるもの」と素っ気なかったが、祖父からしこ名を受け継ぎ、父の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)を師匠とする相撲一家の27歳が、部屋の歴史に新たな1ページを刻んだ。
14勝で賜杯を手にすれば、昨年夏場所の照ノ富士以来。大関では場所後に横綱昇進を果たした2017年初場所の稀勢の里以来となり、横綱への強力な足掛かりとなる。八角理事長(元横綱北勝海)は「理想に近い。近い将来、(照ノ富士に加え)3横綱にならないかな。来場所、2人でね」。年明けの初場所でのダブル綱とりにも期待を示した。
悲願の初優勝へ、あと一番。琴桜は「意識しようがしまいが変わらない。しっかり集中してやれば、結果はついてきますし、やれることをやるだけ」と自信をにじませた。敬愛する祖父が1968年名古屋場所で初優勝したのは、今の琴桜と同じ大関5場所目だった。千秋楽の2日後の26日は、その先代の誕生日。最高のプレゼントを届ける舞台が整った。 (志村拓)
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