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開幕から1カ月たったバレーボールの新しい「Vリーグ」女子で、カノアラウレアーズ福岡(福岡県福智町)が新戦力の活躍もあり、上位戦線で奮闘している。「SVリーグ」の下部に相当するリーグで7勝1敗の2位。次節23、24日は浜松市のサーラグリーンアリーナで、4勝無敗の首位ブレス浜松との直接対決に臨む。

昨季のカノアは旧Vリーグ3部のV3で8勝7敗。4チーム中3位に終わった。エースアタッカーでキャプテンを務めるなどチームの「顔」だった熊本比奈さん(28)が現役を退き、ゼネラルマネジャー(GM)に就任。森田亜貴斗監督(42)に加え、コーチ兼任の熊本GM、新たに加わった向野修一郎コーチ(23)の「トロイカ体制」が確立したことで、役割分担も含めて選手への指導、試合中の指示が行き届くようになった。

カノアラウレアーズ福岡を率いる森田亜貴斗監督

「発展途上で未熟なチームです。荒くて、完成していない分、伸びしろもたっぷりあって、楽しみでしかありません。例えば...」。森田監督の口から飛び出したのはミドルブロッカーの宮地佳乃(23)だった。

高校バレー界の強豪、下北沢成徳高(東京)では1学年上の石川真佑(ノバラ)をはじめ、仁井田桃子(埼玉上尾メディックス)や大﨑琴未(デンソーエアリービーズ)ら強力メンバーに交じってコートに立った。昨季はPFUブルーキャッツ(現PFUブルーキャッツ石川かほく)でプレーするなどV1での経験もある。新天地でのカノアではブロード攻撃を含めて持ち味の機動力を生かしたオフェンスでの貢献を誓う一方で、自分の仕事を完璧に果たそうとするあまり、優先順位の見極め方や心の持ち方の部分で苦労していた。

「これをしなきゃ、あれもしなきゃということで頭がいっぱいになって、視野が狭くなっていました」

ターニングポイントになったのは、16、17日の倉敷アブレイズ戦だった。「チームが勝つために今、何をするべきかという考えにフォーカスするようになってから...何と言いますか、試合が楽しくなりました」。昨季同じカテゴリーのV3を制した強敵を相手に、17日は2セットダウンから逆転勝ちした。オケケアル・メソマチ(22)と横田希歩(23)の両レフトやオポジットの湊ひかり(26)と山本輝(25)に打数が集まる分、意識を置いていたというブロックで7得点の大暴れ。「サーブで攻めてくれるおかげで、的が絞りやすく思い切って跳べます」。サーバーとの共同作業で躍動する姿に、森田監督も「ミドルっぽくなってきましたね」と眼鏡の奥の目を細めた。

宮地の愛称「カノ」は、自身の名前「かの」とチーム名が似ていることもあり、自然な流れで決まった。「試合が楽しいという思いがあるからこそ、自分のパフォーマンスも良くなった気がします。ここから安定させていきたい」。福々しい顔で宮地は笑った。シンプルイズベストの思考で開けた道。ブロックポイントは今季8試合(22セット)で12得点となり、1セット当たり「0・55」のブロック決定本数はリーグ7位。絶賛躍動中の宮地をはじめ、きっかけ一つで能力を発揮する選手が多いのもカノアの特色だ。

カノアラウレアーズ福岡を引っ張る新加入の宮地佳乃(右)とオケケアル・メソマチ

「(11チームで争うVリーグの中でも)ブレスさんは間違いなく強いです。各ポジションに能力が高い選手がそろっていますし、うちとしてはスタートが大事になってきます」。森田監督がアウェーでの2連戦をにらむ。上位4チームによる来春のプレーオフ進出を目指すカノアにとって試金石になる。(西口憲一)

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西口 憲一

西口 憲一

編集委員

立命館大学でアメリカンフットボールに打ち込み、「人の心を動かし、心に残るような記事を書きたい」とスポーツ記者を志しました。 1993年西日本新聞社入社。 運動部からスタートし、以来、福岡→大分→福岡→東京→福岡→東京→福岡。 主にプロ野球(ダイエー、ソフトバンク、西武)やソフトボールを取材。1999年ダイエー初優勝、2008年北京と2021年東京の両五輪でのソフトボール金メダル獲得に心が震えました。 現在はバレーボールSVリーグ女子のSAGA久光スプリングスの記事も書いています。福岡市出身。

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