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バレーボールの大同生命SVリーグ女子で、現在6勝2敗の3位につける埼玉上尾メディックスは今季のスローガンに「先導」を掲げる。Vリーグ時代の2022〜23年シーズンは年間4位で、昨季23〜24年シーズンは同3位。新リーグの先頭に立ち、悲願の初優勝を目指すチームで存在感を発揮しているのが新加入のミドルブロッカー、濵松明日香(25)だ。古巣への「恩返し」の思いを込めてプレーした9日のSAGA久光スプリングス戦(神戸総合運動公園体育館)では、フルセットの末に撃破する原動力になった。

色白の肌がぽっと赤みを差した。予想にたがわぬフルセット、2時間55分の激闘を制した埼玉上尾の選手たちの快哉(かいさい)が神戸のアリーナに響き渡った。濵松にとっては誠英高(山口)を17年に卒業してから昨季まで7年在籍した古巣スプリングスとの初対戦。プレーで「恩返し」を示す必要があった。

「この神戸大会で(SAGA久光の)みんなに会えるというのもありましたし、敵としてライバルとしてやれることがすごく楽しみでした」

高ぶる気持ちを感じながらも、頭は冷静だった。濵松の強みは移動攻撃を含めたパワフルなスパイク。勝手知ったる元チームメートのマークは当然のように厳しかったという。そこでムキになって強引になることなく「勝つために」と冷静に自分と向き合った。高校の同期でもあるスタメンセッターの鎌田咲希(25)には「今日はスパイクじゃなくて、ブロック(に比重を置いたプレースタイル)でいくからね」と伝えた。

結果的にアタックの打数は「16」にとどまっても、計7得点で43・8%の決定率をマーク。15点マッチの最終第5セットは13―11から速攻を決めて、勝利を力強く引き寄せた。ブロックでの3得点と合わせて光った存在感。「ミドルブロッカーでエースという選手はこれまであまりいないと思うんですが、本当に頼もしい。ここぞというところで『最後の1点』を取ってくれるミドルは貴重ですし、メディックスにとって欠かせない存在です」。ライト側からの攻撃を担い、リーグトップのサーブレシーブ成功率を記録するなど守りでの貢献度も高い仁井田桃子(24)のコメントが濵松の「現在地」を明確に表している。

今年5月。SAGA久光(当時久光)のファン感謝イベントの席で、濵松は退団のあいさつとともに「夢」を語った。「これから何年バレーをするのか分かりませんが、自分らしくやりきったと思える自分でありたいんです。明るく、熱があって、パワーがあって...それが私の良さであり強み。バレーが終わる最後の最後までそこだけは消さずにやりきりたい」。あれから半年の月日がたち、新境地を切り開きつつある。

「私的には『切り替え』といいますか、バレーを楽しめるようになったのが一番大きい。私が(埼玉上尾に)入ったときに、温かく迎えてくれたのもありますし、思い切りやれる環境をつくってくれるので」

22年には女子日本代表の登録メンバーに選出されたキャリアの持ち主。テーマの一つに挙げるブロックも含めて、スケールアップする可能性を秘めている。名前の「明日香(あすか)」には「元気で、頑張り屋で、明るく前向きな子に育ってほしい」との両親が願いが込められている。「ブロックの上達はちょっと遅いけれど、SVリーグが終わったときには少しでもチームの力になれるような技術を持ちたい」。目指すべき道、そして自分の「明日」は定まった。(西口憲一)

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西口 憲一

西口 憲一

編集委員

立命館大学でアメリカンフットボールに打ち込み、「人の心を動かし、心に残るような記事を書きたい」とスポーツ記者を志しました。 1993年西日本新聞社入社。 運動部からスタートし、以来、福岡→大分→福岡→東京→福岡→東京→福岡。 主にプロ野球(ダイエー、ソフトバンク、西武)やソフトボールを取材。1999年ダイエー初優勝、2008年北京と2021年東京の両五輪でのソフトボール金メダル獲得に心が震えました。 現在はバレーボールSVリーグ女子のSAGA久光スプリングスの記事も書いています。福岡市出身。

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