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バレーボールの大同生命SVリーグ女子で初代女王の座を狙うSAGA久光スプリングスは9、10日に神戸市の神戸総合運動公園体育館で埼玉上尾メディックスと対戦し、セットカウント2―3(25―17、33―35、25―23、23―25、11―15)と同3―0(25―22、25―23、25―17)で星を分け合った。SAGA久光は通算5勝5敗で14チーム中7位。次節16、17日は佐賀市のSAGAアリーナで岡山シーガルズと対戦する。

2時間55分のフルセットの末に敗れた9日の試合後、会見場に姿を見せた酒井新悟監督(55)と副キャプテンでリベロの西村弥菜美(24)が声をそろえた。「2点差を取り切れていないのが今シーズンの課題です」。埼玉上尾のフロアディフェンスに苦しみ、粘り負けした9日も含めて今季開幕からの失セット「21」のうち2点差で落としたセットは「10」に上る。そこで浮き彫りになったのが、20点以降の戦い方にもつながる「チームとしての決めきる力」だ。

随所でラリーが続いた9日の試合中、酒井監督は「誰が最後決めるんや!」と選手たちに問うたという。

その言葉はスパイカー陣だけに向けられたものではない。「オフェンスのところの『決め手』ですね。スパイカーの責任もあるんですが、そこに至るまでの展開の中で1本目のパスの質や2本目のつなぎの精度をもう少し丁寧に大事にしていかないと、全員で点数が取れません。ハイボールを上げて外国人選手に打たせるという状況では、なかなか厳しいものがあります。そこを詰めて、ボールコントロールを含めてやっていかなければいけません」。酒井監督が現状でのテーマを明かした。

チームが「2点差の壁」に直面する一方で、攻めの姿勢で打破しようと奮闘しているのが深澤めぐみ(21)と北窓絢音(20)の両レフトだ。

2日のNECレッドロケッツ川崎戦の途中から対角を組み、攻撃をけん引している。決定力が魅力の深澤と守備力も備えたバランス型の北窓。スタメンでそれぞれ持ち味を発揮しつつ、ストロングポイントの部分でエラーを犯した場合でも下を向かずに取り返そうとの「心の力」が伝わってくる。

「最後の1点を託してもらえるポジションにいることがありがたいことですし、託されるからこそもっと決めていきたい」。深澤が力強く言い切れば、北窓も明快な声で続いた。「試合を通して自分の中で自信がついたところはレセプション(サーブレシーブ)です。ミスもしてしまったんですが、積極的に返せたところは自信にしてもいいと思います」

開幕戦以来のストレート勝ちとなった10日は深澤が16得点(アタック14、サーブ2)で、北窓も15得点(アタック11、ブロック2、サーブ2)の活躍。第2セットはセットポイントを握ってから、深澤のサービスエースで「2点差の壁」を突破した。

昨季から倍増の44試合となる今季、長丁場のレギュラーシーズンを制するためにも選手のコンディションの見極めが特に重要になってくる。開幕当初、レフト対角を組んだグレタ・ザックマリー(32)と中島咲愛(25)に代えて深澤と北窓を起用していることについて、酒井監督は「現状で2人のパフォーマンスが良く、いい形でチームに入っているので」と説明した。もちろん、ハンガリー代表として多くの国際大会に出場したザックマリーの経験値の高さは折り紙付きで信頼は揺るがない。中島に関しても「入団3シーズン目を迎え、トレーニングなどの成果がスパイクやサーブのパワーや切れに反映されている。今年注目してほしい一人」と、開幕前から期待を寄せてきた。チーム内競争とともに、アウトサイドヒッターの層は確実に厚くなっている。

もう一人、忘れてはいけないのが3シーズン前の優勝の立役者でもある中川美柚(24)だ。今季出場機会に恵まれていなくても、来たるべき日を信じて試合では仲間のサポートに徹している。蓄えているに違いない「心の力」を首脳陣がいつ、どう生かすのか―。ここにも、過酷なシーズンを勝ち抜くための鍵は隠れている。(西口憲一)

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西口 憲一

西口 憲一

編集委員

立命館大学でアメリカンフットボールに打ち込み、「人の心を動かし、心に残るような記事を書きたい」とスポーツ記者を志しました。 1993年西日本新聞社入社。 運動部からスタートし、以来、福岡→大分→福岡→東京→福岡→東京→福岡。 主にプロ野球(ダイエー、ソフトバンク、西武)やソフトボールを取材。1999年ダイエー初優勝、2008年北京と2021年東京の両五輪でのソフトボール金メダル獲得に心が震えました。 現在はバレーボールSVリーグ女子のSAGA久光スプリングスの記事も書いています。福岡市出身。

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