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西武の新ヘッドコーチに鳥越裕介氏(53)が就任しました。選手に寄り添い、今宮健太らを主力に育て上げるなど常勝ホークスの礎を築いた思考とは―。ライオンズ復活の鍵を握るキーマンがソフトバンク2軍監督を務めた2009、10年の記事を復刻しました。(西口憲一)

【2009年6月24日西日本スポーツ 若鷹発つ日まで―鳥越2軍監督の奮闘中】

豪快野球が花開いた。史上初の100打点カルテットが誕生し、パ・リーグを制した2003年のホークスは、阪神を日本シリーズで倒して一気に頂点へと駆け上がった。

8村松有人
5川崎宗則
4井口資仁
3松中信彦
2城島健司
7バルデス
指大道典嘉
9柴原 洋
6鳥越裕介

成熟期を迎えた当時の基本オーダーだ。対戦した、あるチームの監督はため息交じりでこう漏らした。「正直言って、ピッチャーが気を抜ける〝オアシス〟は、9番打者のところだけだよ」。115試合に出場した03年は打率.212の1本塁打。だからといって、鳥越がベンチウオーマーだったわけではない。監督として最強軍団を率いた王貞治(現会長)は、正確なスローイングを含めた堅実な守備を買った一方で、二つの「気」を高く評価していた。

堅実な守備で王監督の評価が高かった現役時代の鳥越

「彼は陽気で、何ごとも根気よく受け入れられる。常に全力疾走で一塁を駆け抜けていたし、難しい場面でバントを決めるとか、犠牲的なものも乗り越えてきたから」。強力打線の中で脇を固める立場ながら、求められた役割を遂行した。ある意味、プロとして求められているものをグラウンドで表現できた。

ファームにとって選手の育成は大きなテーマだ。3年後、あるいは5年後の1軍戦力を育て上げていく過程で、技術レベルに差があり、心身ともに未完成な選手と徹底して向き合わなければいけない。鳥越の特徴でもある「陽気」と「根気」は、ファームの指導者として不可欠な要素だった。王は言い切る。「2軍の指導者として白羽の矢が立つだけのものを示していた」

現在のドラフト制度では自由に選手を獲得できない。外国人枠も存在する。チームづくりに制約がある半面、導入された育成ドラフトによって可能性を秘めた選手を2軍で預かるケースが年々増えている。6日のウエスタン・中日戦。1点を追う8回無死一塁の場面で、育成ルーキーの猪本健太郎が打席に立った。公式戦では2打席目。結果は遊ゴロ併殺打だった。「勝ちにいくなら送りバント。でも、めったに打席に立つことがない選手だし、どういう打席になるか見たかった。僕は人を見てサインを決めている」。思い切りバットを振り、全力疾走で一塁を目指す猪本の姿に、鳥越はうなずいた。

同じ年の小久保は今季から主将としてチームを引っ張っている。「光が当たる度合いは1軍の方が多いけど、野球界にとっては鳥越2軍監督がやっている仕事の方が大事なんですよ」。王が笑った。常勝期から再建期に移行し、ホークスはファームの土壌にも新しい種をまこうとしている。王がはぐくんだ「ホークス魂」を体感した若き指導者は、今伝承者として情熱の汗をグラウンドに滴らせている。=敬称略

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西口 憲一

西口 憲一

編集委員

立命館大学でアメリカンフットボールに打ち込み、「人の心を動かし、心に残るような記事を書きたい」とスポーツ記者を志しました。 1993年西日本新聞社入社。 運動部からスタートし、以来、福岡→大分→福岡→東京→福岡→東京→福岡。 主にプロ野球(ダイエー、ソフトバンク、西武)やソフトボールを取材。1999年ダイエー初優勝、2008年北京と2021年東京の両五輪でのソフトボール金メダル獲得に心が震えました。 現在はバレーボールSVリーグ女子のSAGA久光スプリングスの記事も書いています。福岡市出身。

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