◆だいやまーくYBCルヴァンカップ1次リーグ第1節・福岡1―0新潟(3月8日、ベスト電器スタジアム)

もっとインパクトのある得点(できればリーグ戦の勝ちゲーム)で書きたいと思っていたが、今になって考えればクラブ初タイトルにつながるファーストゴールはインパクト十分だった。福岡大から加入したルーキーの鶴野が先発デビューを果たし、後半14分にプロ初ゴールも挙げた。

私事で恐縮だが、私はアビスパ福岡の担当記者をしながら、西日本新聞社のデスクとして福岡大で非常勤講師をしている。9月から翌年1月の週1回、「スポーツメディア」とはなんぞやを、えらそーに話すのだが、一昨年の授業で松葉づえをついた一人の学生がリポートを提出しにきた。

「どうした?」。そう聞きながらレポートの名前を見ると「鶴野怜樹」。当時は福岡から内定獲得済。授業にいることは知っていて、毎回リポートは見る。顔写真も見ていていたはずなのに、いつもどこに座っているのか分からなかった。

授業中にアビスパの話をしていたこともあり、恥ずかしくなって「いるなら言ってよ」と話したところ、ただ、苦笑いだけしていた。サポーターからしてみたら信じられないだろうが、第一印象は「陰キャ」だった。

あの当時、鶴野は苦しんでいた。大学3年だったその年の夏に右膝のけがから復帰して9月にはもう福岡が内定を出した。ところが、今度は右太ももを肉離れ。けがを繰り返していた。寝ていても「太ももがぶちっと切れて起きる」悪夢が続いて眠れない日もあったという。

焦る鶴野を大学とクラブは協力して支えた。正式加入となるまで状態の情報共有を欠かさず、病院の検査には担当の林田スカウトがついていった。プロデビューの試合で挙げたゴールは支えてくれた大学、クラブの人たちに捧げる「恩返し」。試合後の取材エリアでけがのことを問われ、鶴野は少しだけ涙ぐんだ。

このゴールを皮切りにルヴァン・カップは3ゴール。準決勝第1戦の決勝ヘッドなどMVP級の活躍だった。

ちなみに「(授業は)ホークスの話ばかりでした」と私をイジる「陽キャ」の鶴野選手。教えが良かったのか? 取材には屈託なく話してくれる。そしてこれも教えが良かったのか? どのメディアにも平等に。(向吉三郎)

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向吉 三郎

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