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日本シリーズ初戦はベンチ外だった33歳の〝小さなベテラン〟西野真弘が第2戦で先制打 中嶋オリックスの真骨頂【記者コラム】
2023年10月30日 14:34(Updated:2023年10月30日 16:42)
◆だいやまーくSMBC日本シリーズ2023(第2戦)オリックス8―0阪神(29日・京セラドーム大阪)
日本シリーズ開幕戦は、チーム全体で2安打しか打てず、0―8で完敗。迎えた第2戦、オリックス・中嶋聡監督は、打順を大幅に変えた。前日と同じだったのは、5番DHの頓宮裕真だけ。中川圭太は3番から1番に、森友哉は4番から3番に、宗佑磨が2番から6番へ、紅林弘太郎が6番から7番へ、野口智哉が9番から8番へ。さらには初戦でスタメンに名を連ねていなかった3人が、新たに組み込まれていた。
2番・二塁 西野真弘
4番・一塁 レアンドロ・セデーニョ
9番・左翼 広岡大志
〝ナカジマジック〟が生んだチーム初得点
3人とも、初戦は出場機会なし。西野にいたってはベンチ外だった。しかし、これこそ〝ナカジマジック〟なのだろう。3回の先制劇は広岡のチーム初安打が口火となり、西野の右中間突破となる三塁打が生まれることで、今シリーズのチーム初得点につながった。終わってみれば12安打8得点、投げても6回無失点の先発・宮城大弥から宇田川優希、山崎颯一郎、小木田敦也とつないでの完封リレー。初戦のスコアをくしくも〝ひっくり返した〟スコアとなる8―0と、見事なまでの完勝ぶりだった。
「きのう(初戦のこと)、ああいう負け方をして、まあ、でもきょうは切り替えて、みんなが『やってやるぞ』という気持ちだったんで、なんとか先制点を取れてよかったです」
快勝の立役者となった西野は、この世界では「小兵」と呼ばれる身長167センチ。国際武道大からJR東日本を経てのプロ入りで、9年目の今季は33歳になった。その〝小さなベテラン〟は今季の開幕戦に「3番・二塁」でスタメン出場。1安打もマークし、ベテランらしい渋い存在感を放ったが、その後は1軍と2軍を行ったり来たり。今シーズンを通して6度の登録、5度の抹消を繰り返している。
自ら舞洲の2軍練習へ
その時の〝旬〟の選手を見極め、実績や実力、キャリアも踏まえ、その好調ぶりが続く期間を、それこそパッチワークのように組み合わせ、選手を活用していいくのが、中嶋流の選手起用法でもある。ただ、それをファームからの推薦やデータだけで判断するのではない。本拠地・京セラドーム大阪での試合前には、時間が許す限り大阪・舞洲のファーム施設に足を運び、自らの目で練習や試合を確認。ファームに降格させる選手に対しては、監督室に呼んで意図も説明する。リーグ3連覇を決めた後、最初の全体練習を行った9月22日、中嶋監督はその1軍練習を水本勝己ヘッドコーチに任せ、自らは舞洲の2軍練習の方に足を運んだのは、きたるべき秋の戦いに向けての〝使える選手〟を見定めるためだった。
そうした指揮官の意図は、もはや言われなくても西野には分かっている。だから、初戦ベンチ外、2戦目はスタメンという、めまぐるしい起用法にも「難しさはもちろんありますけど、自分の持っている力を、その試合に出せるように、という準備を日頃からしていますから」とさらりと言ってのける。
「だからもう、ベンチ外だったらベンチ外で、次の日に備える。次の日、出るってなったら、そこでスイッチを入れて、というのを自分なりにはやっています。もう、僕の立場で言ったら、やるしかないんで」
ただ、この日のスタメンを知ったのは「結構ギリギリでしたね。何と言うんだろ...。練習が終わってもまだ、分かっていない状態でした」と明かし、しかもベンチ入りかどうかも「練習中は、まだ分かっていなかったですね」というのだからビックリだ。
「でも、みんなが『自分が出るんだ』と思って練習していると思うし、僕もそういう感じでやっているんで、ベンチ外と言われたらしょうがないですし、出るってなったら、よしやってやろう、という感じですから...。まあ、難しいっちゃ、難しいんですけど、シーズン中からも結構、そういうのがあったんで、何となく自分の中では、リズムじゃないですけど、そういう作り方はしています」
金網越しに見つめた初戦の戦いぶり
京セラドーム大阪の一塁側ベンチ横、選手や審判、関係者らが出入りする扉は、一部分が金網で覆われており、そこから試合の状況が見られるようになっている。西野はベンチ外だった初戦の戦いぶりを「一応、雰囲気を味わいたいなと思って」とその金網越しに見つめていたという。第2戦は、自分が試合に出るのかも分からない状況で試合前の練習をこなし、突然のようにスタメンを知りながら、1回の第1打席は四球で出塁。3回、日本シリーズ初出場の9番広岡が1死から左前打で出塁すると、阪神先発の西勇輝のけん制悪送球が絡んだ2死二塁での第2打席。オリックスでともにプレーした時期もある1990年生まれの同学年右腕・西勇の140キロを右中間へ運ぶタイムリー三塁打は、今シリーズのチーム12イニング目での初打点。「(初戦で)負けている分、最初の点がほんとに欲しいですし、それでどんどん動いていくというのもあるんで、西野のヒットは大きかったと思います」と中嶋監督も、ベテランの存在感を存分に見せつけたその一打を絶賛した。
(次ページに続く)「戸惑いとか言ってられないんで」
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